メイクさんが脚本を担当!?あの名作とオチが酷似しているけど真相は…「悪魔の受胎」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(587日目)
「悪魔の受胎」(1979)
ノーマン•J•ウォーレン監督
◆あらすじ
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とある惑星で古代文明の調査活動をしていたゼノ•プロジェクトの隊員たち。しかし彼らは突如としてエイリアンから襲撃を受け、拉致されたサンディはエイリアンの胎児を身ごもってしまう。お腹の中にいる胎児に操られるかのように凶暴化したサンディは基地内で次々と仲間を虐殺。狭い基地内で隊員たちはサンディと攻防を続けながら救助を待つことになる。
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通好みのマニアックな内容のSFホラーで、個人的には相当面白かったです。
脚本に所々粗があり、あらすじや解説を読んで初めて「そうだったのか!」となることが多々ありました。すごく表現が難しいんですけど、視聴者を置いてけぼりにしたまま話を進めている感覚と言いますか、その辺りが少し気になってしまいました。
でもそういう粗さもひっくるめて、その時代のおおらかさなどが感じられて良かったです。
監督を務めたノーマン•J•ウォーレン氏は「ザ・ショッカー/女子学生を襲った呪いの超常現象」(’76)、「ギロチノイド」(’79)、「人喰いエイリアン」(’84)など70〜80年代にかけてマニア向けのホラー作品をいくつか手掛けており、その中でも一番知名度があるのがおそらく今作でしょう。
脚本を担当したのは「スター・ウォーズ」(’77)や「スーパーマン」(’78)でメイクを務めたニックとグロリアのメイレイ夫妻で、彼らが脚本を務めたのは今作のみです。
ある作品の監督を務める予定だったノーマン氏でしたが、脚本が予定通りに完成せずに企画自体が頓挫。その後、メイクや特殊効果の分野で活動していたメイレイ夫妻が企画として提出した草案がノーマン氏の目に留まり、製作に取り掛かったそうです。
基本的にキャストはイギリス人俳優で固められており、女性陣は特に仲が良かったそうです。しかしスポンサーや制作会社の都合でロビン・クラークとジェニファー・アシュリーの2名はノーマン氏の預かり知らないところで勝手にアメリカでキャスティングされていた上、クラークは非常にプライドが高く、自分勝手でノーマン氏とは犬猿の仲。アシュリーは人柄は良いものの典型的な大根役者で手を焼いたそうです。
後年、ノーマン氏は
「クラークは自分自身を非常に高く評価していたので、一緒に仕事をするのは本当に悪夢でした。彼は良くなかったが、ジェニファー・アシュリーはもっと悪かった。彼女は優しかったが演技ができなかった。アシュリーは次のセリフを待っているだけでした。2人のアメリカ人俳優は、金融業者に押し付けられたキャストで最悪だった」(悪魔の受胎Wikipediaより引用)
とコメントを残しています。
現在DMMTVとU-NEXTで配信中の他、アマゾンプライムでは550円でレンタルが可能です。
◇極寒の惑星で古代文明を調査していた隊員たち。知的生命体がいたであろう廃都市を探索中にエイリアンに襲われ、隊員の1人がエイリアンの胎児を身籠ってしまう。
という大筋だけを見るとかなりワクワクする内容ですし、実際とても面白かったです。
ですが物語序盤で
◇調査中に起きた爆発で瀕死の重傷を追ったリッキーが爆発直前に握りしめていた結晶体のせいで異常性を帯び、次々と隊員たちに襲いかかる
というくだりが、中盤以降の『身籠ったエイリアンの胎児に操られるかのように隊員たちを襲うサンディ』とほぼほぼ同じで、わざわざやる必要があったのかと些か疑問に感じました。
一応、リッキーが射殺された後に「おそらく原因はあの結晶体だからサンプルを採取しよう」という流れになり、爆発が起きた洞窟に赴いたところでエイリアンに襲われて、サンディが“拉致&エイリアン胎児身籠り”という中盤以降に繋がるため不要ではないと思いますが、同じ展開の繰り返し感がありました。
ですがこの中盤以降はサンディ役のジュディ・ギーソン氏の狂気じみた演技で異常なまでの盛り上がりを見せてくれます。
まず、拉致されたサンディは全裸の状態で拘束され、陰部に筒状のパイプのようなものを挿入され、エイリアンの体液を注がれます。このシーンのこれから何が起こるのかまったく想像もつかない感じ、猟奇性、狂気性は非常に恐ろしく、土偶のような見た目で無感情なエイリアンのビジュアルも相まって相当怖いです。
仲間に発見されたサンディは医師から避妊薬を投与されていたはずなのに妊娠二ヶ月の状態と診断され、徐々に様子がおかしくなり、バーバラをハサミで嬲り殺し、ディーンの遺体の内臓を貪り食い、基地の通信システムなどを次々と破壊。さらには止めようとしたゲイリーの内臓を生きたまま食べるなど暴走は止まりません。
そして今作最大の見せ場でもある出産シーンへと続きます。このシーンは獣のような絶叫を繰り返しながら異形なエイリアンの双子を産む壮絶な描写となっており、ジュディ・ギーソン氏の俳優魂を全身で感じられる凄まじいインパクトを誇っています。
おそらくですがエイリアンは個体数を増やすのが目的で、そのためサンディに託卵のような形で胎児を預け、その胎児たちの本能で「栄養価の高い食料(人間の内臓など)の確保」、「自分たちが生き残る確率を上げるために、救助を呼ばれないように通信機器の破壊」等の目的でサンディを操っていたのではないでしょうか。
出産したあとのサンディはエイリアンたちからするともう用済みなので、マークがサンディを絞殺したところで痛くも痒くもなかったと思います。実際その頃には双子のエイリアン胎児自ら人間を襲っており、捜索隊が救助に駆けつけた時には隊は全滅。さらには捜索隊が諦めて母船に帰還する際にはエイリアンの胎児たちが船内に乗り込んでいた。
というところで物語が終わりますが、私はこのラストに何だか既視感を覚えました。
そうです。
リドリー・スコット監督が手掛けた不朽の名作「エイリアン」(’79)のオチ部分です。
これに関して調べてみたところ、「エイリアン」公開よりも前に今作の脚本は完成していたそうです。一応、ノーマン監督が20世紀フォックスにも脚本を送り確認をしてもらい、「模倣ではない」とお墨付きをいただいています。
主人公らしい主人公がいないうえに登場人物一人一人にあまりキャラがないため話にまとまりがなく、特に後半はサンディがただ暴れ回っているだけに見えてしまう感も否めませんが、これはこれでありだと思います。面白かったです!
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