もしかしてこれが元祖ミニオン?地獄の門を閉じるため、勇気を出して悪魔たちに立ち向かう!少年少女の極上ジュブナイルホラー「ザ・ゲート」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(758日目)
「ザ・ゲート」(1987)
ティボー・タカクス監督
◆あらすじ
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少年グレンとその悪友アルは、裏庭の端に開いた穴の中から不思議な石を掘り出した。水晶のようなその石は近くにあったスケッチボードに、不可思議な文字列を描き出す。奇妙に思いながらも、その文字を読み上げてみるグレン。実は庭先に開いた穴は、冥界へとつながる“門(ゲート)”であり、その不思議な石が描き出したのは、そのゲートを開く呪文だったのだ!生贄を求めて彷徨い出た悪魔たちと少年たちの死闘が始まる。(https://www.tc-ent.co.jp/products/detail/TCED-3634?prev=recentlyより引用)
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『突如裏庭に出現した穴はなんと地獄の門だった!誤ってその門を開いてしまった主人公は姉や親友を取り戻すべく、恐ろしい悪魔たちに勇気を出して立ち向かう!』という王道のど真ん中をひた走る、私の大好きな80年代のジュブナイルホラーです。
ストーリーはシンプルかつ怖さがマイルドで非常に見やすく、主人公たちに襲いかかる悪魔たちは恐ろしいんですけどどこか滑稽です。グロテスクな描写もほとんど無いのでご家族揃って見ていただいても楽しめる作品となっております。
メインの子供たちが一生懸命で可愛らしく、応援したくなるところにも好感が持てますし、何より特筆すべきはハイクオリティな特殊効果による悪魔たちのビジュアルや動きです。ストップモーション、スーツアクター、コマ撮り、ミニチュア等など、制作陣が「この作品は特殊効果の百科事典だ」と自画自賛するほどの出色の仕上がりです。
実際に本編を見ていただければ一発で分かると思うんですが、この上記の画像のキモ悪魔•ミニオン(大体40センチくらい)がわらわらと何十体も登場するんですけども、その1体1体が本当に生きていると言いますか、1体たりとも動きが被ってないんです。これがもう本当に凄すぎて、感動すら覚えるレベルです。
おそらくミニオンの登場シーンは撮影に要する時間も相当なものだと思われますが、彼らは作中で何度も登場します。これでもかと出てきます。一番自信があるけどその分労力を要するシーンをもったいぶったり、減らしたりしない所にこの作品の本気度が感じられます。
また、クライマックスに登場する悪魔の親玉、両親や親友に化けた亡霊の顔の溶け方、主人公の掌に出現する目、壁から登場する作業員ゾンビ、胎動する家等など、その全てに一切の妥協がなく、そのどれもが印象に残りました。
ちなみに先ほどの地獄よりの使者•ミニオンなんですけども、一般的に我々がミニオンと聞いて真っ先に思い出すのはイルミネーション製作のアニメ映画「怪盗グルー」シリーズでお馴染みのミニオンズではないでしょうか。
2010年の「怪盗グルーの月泥棒」に始まり、「怪盗グルーのミニオン危機一発」(’13)、「怪盗グルーのミニオン大脱走」(’17)、「怪盗グルーのミニオン超変身」(’24)の3作の続編。さらにはミニオンズが主役のスピンオフとして「ミニオンズ」(’15)、「ミニオンズ フィーバー」(’22)が発表されており、言うまでもなく世界中で愛されるシリーズ、キャラクターです。
そんなミニオンたちの正体は、その見た目や大好物がバナナというところからバナナの妖精説、ナチスの人体実験の犠牲になった子供たち説という都市伝説まがいのものなど様々な意見が飛び交っておりますが、実際のところは『人類よりも遥か昔から地球に存在しており、世界一凶悪なボスの仲間になることが目的の生物』だそうです。地球が誕生した40億年前にすでにいたというのがまた可愛らしいですね。
なもんで、今作に登場するキモ悪魔もミニオンという名前であることに多少違和感を覚えますが、こちらは15世紀頃にヨーロッパの画家が生み出した悪魔の一種だそうで、地獄よりの使者や小間使いとして多くの作品に登場しています。
『小さい個体がたくさんいる、強い者に従う、みんなで行動する』等など類似点が多く、もしかしたらですけどアニメのミニオンもこの悪魔のミニオンから着想を得ているのかもしれません。
そんな今作の監督を務めたティボー・タカクス氏はハンガリー出身で幼少期より様々な物語の触れ合う機会が多かったそうです。この作品で長編映画監督デビューを果たした後は続編にあたる「ゲート2/デモンボーイズ」(’89)なども手掛けますが、中々ヒット作には恵まれず、以降はいかにもなB級映画ばかりを生み出しております。
このタイトル最高ですね!原題は「Spiders」なので日本の配給会社が例によってやってますが、いつか見たいです。
ちなみに今作で脚本を担当したマイケル•ナンキン氏は執筆に打ち込みすぎて、午前3時45分に起きる日が5日続いたそうです。その5日目にどこからともなく「見る覚悟はあるか?」という声が聞こえてきたらしく、その問いにイエスと答えたら、“暗くて闇に生きるもの”を見たと本人が証言していました。やはり働き過ぎは体に毒ですね。
余談ですが、今作の主人公グレンを演じた少年は後に多くの映画で渋い活躍を見せる人気俳優のスティーヴン・ドーフ氏で、偶然にも私が昨日視聴した「ツイてない男」(’07)でも主人公を務めていました。
男前のドーフ氏が見られる作品はこちらから↓
現在U-NEXTでのみ配信中ですが、私は西荻窪のTSUTAYAを利用させていただきました。特殊効果のクオリティが非常に高く、実写との境界線が分からなくなる様は圧巻の一言です。そこまで有名な作品ではないかもですが個人的には爆裂にオススメです!
◇グレンはある日、自分の家の裏庭にあるツリーハウスに雷が落ちる夢を見る。目が覚めて裏庭を見ると夢と同じように本当に雷が落ちており、木が倒れていた。撤去作業を眺めていたグレンはたまたまキレイに光る石を発見。親友のテリーとともにもっと大きな石はないかと探していると穴は大きくなり、中から不気味な声が聞こえてくる。なんと裏庭の大きな穴は地獄の門であり、その後彼らは偶然にもそのゲートを開いてしまい、そこから続々と悪魔が現れる。姉やテリーが連れ去られてしまったグレンは勇気を振り絞り、一人で悪魔に立ち向かうのだった。
というのが今作の細かめのあらすじです。
ストーリー自体は非常にシンプルですし、小難しい伏線やらもないので、なんとなく面白い映画が見たい方やホラーが苦手な方にもオススメできます。
前半は割とのんびりした導入でそのまましばらく日常パートが続くため、あまり怖いシーンはないんですけども登場人物たちも魅力的ですし、演出や構成の妙もあってかずっと見ていられます。
穴から見つけた謎のキレイな石がボードに書き写した文字が地獄の門を開く呪文で、それを知らないグレンたちは当然それを読んでしまいゲートが開かれます。さらにはデスメタル好きの親友のテリーが「このバンドの歌詞は悪魔に効果があるやつだから」と何の根拠もないのにその歌詞を読み上げた結果、状況がめちゃくちゃ悪化してしまうのもくだらないですけど面白かったです。
タカクス監督曰く今作のテーマは『罪悪感』で、親の留守中に夜更かしをしたり、友人を呼んでパーティーをしたりと、子供ならではの“親の言いつけを破ってしまったことへの罪悪感”によって生じた心の隙間に悪魔はつけ込んできたのかもしれません。
また、親に怒られることに対する恐怖、虫などの苦手なものへの恐怖、怖い話(家を建てた時に作業員の一人が壁の中に生きたまま埋められたというテリーの作り話)への恐怖、そして各々のトラウマや心の傷が悪魔に読まれてしまうと、その姿となって現れるのだと思われます。
なもんで壁から現れる作業員のゾンビやグレンの両親の偽物などはそのどれもがミニオンの集合体で、ダメージを受けると数十体のミニオンがわらわらとその姿を現します。
ちなみにこのミニオンたちを含む悪魔の造形や様々な作中の特殊効果を担当したのは後に「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでアカデミー賞の視覚効果賞を受賞することになるランダル•ウィリアム•コック氏です。
終盤は生贄として姉のアルと親友のテリーを攫われたグレンがたった一人で悪魔たちに立ち向かうんですけども、テリーの作り話や小さな虫にもビビっていた甘えん坊の少年が勇気を振り絞って必死に立ち向かう姿には心が震えました。
一人で飛ばすことが出来なかった玩具のロケットで悪魔の親玉をやっつけるラストも最高でしたし、その後にアルやテリーそしてペットの老犬も無事にしっかり戻ってきての大団円はこれぞジュブナイル!という感じでもう堪りませんでした。
全体通してももちろん面白いんですけど、印象的なシーンがすごく多いので「あのシーンだけもう一回見たい!」と思わせてくれる作品です。映画においてこれって最強だと思います。世界の北野武監督も『良い映画は絵画と同じで断片的に見ても、どこを切り取っても面白い』といった感じのことを仰っていますし、この作品もまさにそれです。
トラブルメーカーのテリーが穴に落ちてミニオンに囲まれてしまうシーンやクライマックスでグレンが一人で玩具のロケットを飛ばして悪魔の親玉をやっつけるシーンなど各々のお気に入りのシーンがきっと見つかるはずです。
個人的にはめちゃくちゃ好きな作品だったのでDVDで購入を検討しています。配信ではU-NEXTのみですが、すごく暖かい気持ちになるジュブナイルホラーなのでもし視聴できる方は是非ご覧になってみてください!オススメです。
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