これが元祖“間違ったターン”!こういうのでいい、いやこれがいい!の典型例なシンプル極上ホラー「クライモリ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(750日目)
「クライモリ」(2003)
ロブ•シュミット監督
◆あらすじ
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医学生クリスの車が、キャンプに来たジェシーら5人の車と衝突し、山道で立ち往生してしまう。彼らは助けを呼ぶため歩き出すが、弓矢を操る謎の一味に襲撃され、ひとりまたひとりと命を落とすはめに。(https://moviewalker.jp/mv33966/より引用)
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『山道で立ち往生してしまった若い男女6人。彼らは助けを呼ぶために散策するも、運悪く辺り一帯を根城にする食人族のターゲットにされてしまう…』という極限まで無駄を削ぎ落としたシンプルかつ王道のホラーです。
特別なことなんて一切していないし、目新しい要素や衝撃のどんでん返しもありません。『演出の妙や緩急の効いた脚本、俳優陣の演技力など現有戦力を底上げすれば面白いものは作れる』ということを証明している一作と言いますか、これは本当に凄いですね。文句の付けようがないと思います。
まさに“塩のみの味付けで素材そのものをお楽しみください”を体現しているかのような映画なので、クドい料理にマヨネーズとタルタルソースをぶっかけているようなおバカホラーを好んで見ている私からしたらもう雷に打たれたぐらいの衝撃でした。言わずもがな爆裂オススメです!
今作は2003年に公開されるやいなや世界中で大ヒット。“ホラーの帝王”スティーヴン・キング氏は米book誌のインタビューにて今作を年間ベストワン映画に挙げております。その後は当然の如くシリーズ化し、回を重ねるごとに評判は尻すぼみになっていったものの、第6作目まで作られました。
また日本では一切今シリーズとは関係の無い作品を
•「バタフライエフェクト•イン•クライモリ」(’08)
(原題:Acolytes)
•「クライモリ 禁猟区」(’09)
(原題:Splintered)
•「新クライモリ デッド•フィーバー」(’13)
(原題:In Fear)
等など、あたかも同じシリーズですよ感を出した邦題を付けるなどその人気は計り知れないものとなっています。「バタフライエフェクト•イン•クライモリ」に関しては「バタフライ•エフェクト」側からも怒られそうですね。
余談ですが上記の画像を見ていただければお分かりの通り、2021年頃から配信が始まったアマゾンプライムでは現在でも原題の「Wrong Turn」を思いっきり直訳した「間違ったターン」のまま配信されています。なもんで“クライモリ”で検索しても表示されませんのでお気をつけください。全然関係ないですが、よく見るとあらすじが雑な和訳のままでめちゃくちゃ気持ち悪いです。
同じく2021年には今作をベースとしたリブート版も発表しており、私はそちらを先に視聴しておりました。このリブート版も相当面白いんですけども、どちらかというとオリジナル版よりも少々エンタメ寄りで商業を意識している感じがしました。
オリジナルとリブートの主な違いとしては
•オリジナル版ではシンプルに山に迷い込んだ若者たちが食人集団に追われるというストーリーだったが、リブート版では主人公の父親が娘を探すパートがあったり、入植者の集落から脱走した後の話も描いている
•オリジナル版で登場した食人集団がリブート版には登場せず、その代わりに入植者の末裔を登場させることで敵側にもドラマ性やバックボーンを持たせている
という上記の2点が主な違いだと思います。なもんでシンプルにホラー映画を楽しみたいならオリジナル版、ストーリーやエンタメ性等も重視するならリブート版という感じでしょうか。
個人的にはオリジナル版の方がすっきりしていて好みですが、リブート版もバチボコに面白いです。どちらも本当にオススメです。ちなみに脚本はどちらも同じアラン•B•マッケルロイ氏が担当しております。
なお今作で監督を務めたロブ•シュミット氏は2008年に「アルファベット•キラー」を発表した後、基本的には商業映画というよりかは国内のみで公開される映画を手掛けつつ、大学教授として後進の育成に取り組んでいらっしゃるようです。
現在アマゾンプライム(吹替版のみ)、U-NEXTで配信中です。吹替版は小山力也さんや松本梨香さんなど錚々たる声優陣が集結しているのでなんだったら吹替版の方がオススメです。
ちなみにリブート版はアマゾンプライム、U-NEXT、hulu、DMMTVにて配信しております。年末年始に合わせてどうぞ!
◇渋滞に捕まってしまい、大事な面接に遅れそうだった医学生のクリスは携帯電話も圏外となり、近くの商店で電話を借りようとするも故障しており繋がらない。仕方なく、舗装されていない山道を走っていたものの、余所見が原因で道のど真ん中に止められていた車と衝突。幸い怪我人はおらず、相手方の若者たち5人組も有刺鉄線のようなもので車をパンクさせられており、立ち往生していたという。助けを呼ぶために民家や公衆電話を探す一行だったが、一人また一人と何者かに襲われていく。なんとその辺り一帯は観光客を襲い、その肉を喰らう恐ろしい食人集団のテリトリーだった…
というのが今作の細かめのあらすじです。こう書いてみても本当にシンプルですし、ともすれば地味にも見えてしまいますが、開始早々「これは絶対面白いやつだ」という匂いと言いますか、直感的にそれを確信すると思います。そしてそれを最後まで裏切らない最高の仕上がりになっていますのでご安心ください。
『この山に巣食う食人一族は何者なのか』というのが気になるところではありますが、彼らはマウンテンマン(山男)と呼ばれており、近親婚やそれに伴う遺伝子変異などで特異的な容姿となり、暴力的な性格、独自の言語、異常なまでのタフさと筋力の発達などが特徴的です。
山で暮らし、辺り一帯を訪れた観光客を襲って金品を奪い、またその肉を食料としています。その昔、一度は精神病院に収容されるも脱走したという経緯があるそうです。
武器として刃物や弓矢を用いる他、有刺鉄線の罠や建物に火を放って炙り出すなど狩りという名の殺戮に対しては相当知恵が回る他、楽しんでいることが伺えます。
そんなヤバい奴らの巣に知らずに飛び込んでしまったクリスやジェシーなんですけども、彼ら6人が全員上手いこと機能しており、無駄がありません。中にはエロいことをしていて殺される要員(エヴァンとフランシーン)もいるんですけども、その殺され方がエグくて、個人的には出番以上のインパクトがありました。中でも背後から鎖でフランシーンの口を引き裂くシーンは最高でした。
ストーリー自体は先述した通り、非常にシンプルなので山を捜索する中で食人一家のアジトに知らずに入ってしまったり、それに気づいて出ようとしたタイミングで奴らが帰ってきたり、息を潜めて脱出したけど見つかっちゃうとか、かなりベタなんですけど緊張感を煽るカメラワークや演出も相まってめちゃくちゃ怖いです。
「たぶんこの後こうなるんだろうな」と予想できてしまうのにこれだけ面白いってもはや無敵じゃないですかね。吉本新喜劇の同じくだりで毎回笑っちゃうのと同じです。
シーン展開が多く、かつ緩急が効いているので一切飽きが来ません。また、フラれて傷心気味だったジェシーを励ますための旅行でこのような凄惨な事件が起きて、自分のせいだと気に病む彼女の気持も分かりますし、吊り橋効果も相まって頼もしいクリスと惹かれ合うのも非常に自然な流れでした。
B級ホラーにありがちな『お前らいつ好き同士になったの?』という雑な恋愛要素などは当然ありません。
クライマックスへの持っていき方も完璧で、好きになったジェシーをクリスが命懸けで助けに行くのも当然の道理ですし、小屋に車ごと突っ込んだり、火を放ったりとまぁ豪快です。これまでのお返しとばかりに大暴れするクリスとそれを援護するジェシーに食人一家も防戦一方。なんですけども、この食人たちがえらいタフなんですよ。
車で撥ねられようが、火達磨にされようが、心臓を刺されようが、後頭部を矢で射抜かれようが何度でも立ち上がります。この驚異的な生命力が一番恐ろしいところではありますが、痛がる素振りや仲間がやられたことに怒ったりと人間らしいところもあり、完全な化け物ではないことも伺えます。
定番の爆発エンドも大好きですし、このクライマックスの一連のシーンが本当に良すぎて、「もっと見たい!」と視聴者に思わせるくらいの尺なのが本当に分かってらっしゃいますね。
そしてエンドロールが流れても消せないでください。その後にお楽しみがあります。お前らどんだけタフなんだよ!と叫びたくなるほどに最高のシーンが待ち構えてますのでどうか最後まで見てみてください。オススメです!
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