文明栄えぬ地下墓地に燃え盛る車?極上の地下探索型POVホラー「地下に潜む怪人」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(639日目)
「地下に潜む怪人」(2014)
ジョン・エリック・ドゥードル監督
◆あらすじ
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考古学者だった亡き父の遺志を受け継ぎ、“賢者の石”の謎を解き明かそうと研究を続けるスカーレット。手がかりを求めて中東の博物館に侵入した彼女は、古代文字に詳しい元仲間ジョージの協力を得て、パリ地下に広がる巨大墓地カタコンベに“賢者の石”の秘密があると突き止める。早速スカーレットはジョージら仲間を集め、カタコンベの洞窟を探索していくが、道を進むごとに次々と不気味な超常現象に遭遇していく。(thecinema.jpより引用)
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『パリの地下に眠る巨大墓地カタコンベを舞台に繰り広げられる賢者の石の謎と怪現象の数々』
という大筋だけでもうすでにロマンが溢れております。
個人的にPOV形式の作品はカメラの手ブレが酷かったり、リアルを追求するあまり薄暗いシーンでは画面が暗すぎて何が起きているのか分からなかったり、そもそもPOVを意識し過ぎるがあまり肝心の内容がペラペラだったりとあまり良い印象がありませんでした。
なもんで今作も「かなり面白い」と前々からその評判は聞いてはいたんですけども、POVだしちょっとなぁと敬遠して後回しにしておりました。
しかし!
この「地下に潜む怪人」はそもそも作品としてのレベルが非常に高く、計算し尽くされた構成と脚本、レベルの高い役者、暗所のシーンが大半を占めるものの程よく画面が見やすく、ラストのあっと驚かされるオチと、どれを取っても一級品です。そしてスカーレットたちは『明確な理由があって地下墓地を探索する』のでカメラを回すという流れも非常に自然ですし、広大な地下墓地や狭い空間はPOV形式の作品と相性が抜群でした。
10年前の作品とは思えないクオリティです。これはもっと早くに見ておくべきでした。
今作を手掛けたのはジョン・エリック&ドリュー・ドゥードル兄弟で、脚本は二人の共作で、監督は兄のエリックが務めています。今作以外にも同じ陣容で「The Poughkeepsie Tapes」(’07)や「REC:レック/ザ・クアランティン」(’08)といったホラー映画を手掛けています。
現在Netflixで配信中のほか、アマゾンプライムにて407円でレンタルが可能です。
タイトルだけ見ると『地下で怪人に襲われるB級パニックホラー』かと思いますが
◇考古学者だった亡き父の遺志を継ぎ、賢者の石の謎を解き明かそうと日夜研究に没頭するスカーレット。彼女は賢者の石を生み出したニコラス・フラメルの残した暗号を中東の博物館の石碑の裏から発見し、解読を依頼。そこからヒントを得た彼女は仲間たちに協力を仰ぎ、賢者の石の秘密を突き止めるべく、パリの地下に眠る巨大墓地カタコンベを探索する。しかし、そこで彼女たちは不可解な現象の数々に見舞われることになる。
というあらすじを読んでいただけると分かるように『謎解きパニックアドベンチャー』として見たほうが良いのかもしれません。ですが、ホラー映画を得意としているドゥードル兄弟の作品だけあって、ホラー演出のクオリティも相当高いです。
全編通して歴史や錬金術、神話、宗教に関するワードが飛び交います。これが作品の雰囲気にも合っていてすごく良いんですけど、知識が無いと少々取っ付きにくいです。私は大半分からなかったです。
さらに今作はダンテの叙事詩「神曲」をテーマにしています。なもんで取っ付きにくさにより拍車をかけており、気を抜いて見ていると『何でこうなったのか』という大事な部分が一切分からなくなり、なぜあの登場人物は死んだのかなどが何も分からないまま見終わるかもしれません。なので個人的にはネタバレ考察を読んでから見たほうが楽しめるような気がします。
または、分からないところを無理に理解しようとせずに『賢者の石の謎を解き明かしたい一行が地下墓地で酷い目に遭う』という部分だけを楽しんで、「なぜ地下に電話や燃え盛る車があるの?」とか「あの子供は誰?」とか「途中で出てきたあの男の人は何なの?」みたいな部分は、ありのまま視覚からの情報だけで受け入れてしまうのが良いかもしれません。
☆ちなみに神曲(しんきょく)とは
13〜14世紀頃のイタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの代表作であり、イタリア文学最大の古典とされています。
『地獄篇』、『煉獄篇』、『天獄篇』の3部構成となっており、全14233行の韻文による長編の叙事詩です。聖なる数である『3』を基調としており、その均整のとれた構成からゴシック様式の大聖堂に例えられているそうです。
小難しくてよく分からないですね。
◇カタコンベの奥底へと進んでいくスカーレット一行は不可解な現象の数々に見舞われるも、次々と暗号を解読し、ついに賢者の石を手に入れる。しかしその直後、天井が崩落して引き返すことが出来なくなる。仕方なく先に進むと、壁には『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』と書いており、その先で彼女たちはさらに恐ろしい目に遭う。次々と死んでいく仲間たち、そして先程手に入れた賢者の石が本物ではないことに気がついたスカーレット。本物の賢者の石を手に入れ、そしてカタコンベから生きて戻るには自身の罪の懺悔が必要だった。スカーレット、ジョージ、ゼッドの3人は罪を告白し、カタコンベの最下層へとダイブ。すると蓋のようなものがあり、それを開けると目の前にはエッフェル塔が鎮座していた。
というのが今作の後半からラストにかけての展開です。
先述したように『神曲』がテーマの作品であるため、『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』と書いてあった入口は神曲で言うところの“地獄の門”だったり、エッフェル塔を逆さにしたような今作のジャケ写はボッティチェリの地獄図を現していたりと、中々に小難しいです。私は解説を読みましたがそれでもなんとなくしか分かりませんでした。
ダンテの思い描いた地獄の世界を忠実に再現したもので、下に行けば行くほど先細っていきます。
それぞれの犯した罪が今作における重要なポイントになっており、
例えば主人公のスカーレットなら『精神を病んでいた父親(後に自殺)からの最後の電話に出なかったこと』
スカーレットの元恋人で翻訳や解読で彼女をサポートするジョージなら『幼い頃に洞窟で弟が溺れた時、助けを呼びに行こうとしたが迷子になってしまい、結果的に弟を死なせてしまったこと』
地下墓地の案内役を務めるパピヨンなら『自身の過失から車が炎上し、友人を死なせてしまったこと』
そういった各々の罪がカタコンベ内で霊や恐怖現象という形で襲ってくるわけです。
クライマックスで『スカーレットたちが罪を告白することで助かる』というのも神曲の一部分の内容を表しているようです。しかし何度も言うように小難しいのでこのあたりは『知ってたらより面白くなるプラスアルファ』と思っておいて良いと思います。
何が起こっているのかいまいち分からないところもありましたが、展開が豊富かつ驚かし方も上手いので最後まで楽しく見ることができました。オススメです!
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