前代未聞の放送事故にワクワクが止まらない!70年代の生放送バラエティを模した極上のモキュメンタリーホラー「悪魔と夜ふかし」現在上映中【ホラー映画を毎日観るナレーター】(669日目)
「悪魔と夜ふかし」(2023)
キャメロン•ケアンズ監督
コリン•ケアンズ監督
◆あらすじ
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1977年、ハロウィンの夜。テレビ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャック・デルロイは生放送でのオカルト・ライブショーで人気低迷を挽回しようとしていた。霊視、ポルターガイスト、悪魔祓い……怪しげな超常現象が次々とスタジオで披露され、視聴率は過去最高を記録。しかし番組がクライマックスを迎えたとき、思いもよらぬ惨劇が巻き起こる―。(公式サイトより引用)
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公式サイト↓
『70年代に実際に放送されていた生放送の深夜バラエティ番組で起きた惨劇をご覧いただきます』という体を取ったファウンド・フッテージ(フェイクドキュメンタリー)のホラー映画です。
この手の作品って基本的には「差出人不明のビデオテープが届きました」とか「行方不明となった撮影者の荷物だけが発見され、その中からとある映像データが見つかった」みたいなスタイルが一般的なので、「実際に放送されたテレビ番組を見ていただきます」というのは非常に斬新でした。
やっぱり毎日ホラー映画を見ていると、作品のテイストによっては展開やオチが読めるようになってしまうので、こういった一切先が読めない作品というのは個人的には相当好きですし、面白かったです。
映像や音楽にも相当こだわっていて、放送中の番組映像の時だけブラウン管テレビっぽい画質になっており、生放送ゆえに観覧席のお客さんの声や咳、車のクラクションや救急車のサイレンの音も拾ってしまっているあたりが非常にリアルで芸が細かいなと感動しました。
また当時のバラエティ番組っぽい世界観を忠実に再現しており、ジャズバンドの生演奏や視聴者参加型の企画があったりと、見ていて退屈しない工夫が施される上に、いつ何が起こるか分からない変な緊張感が終始漂っているので目が離せなくなります。
少々不謹慎かもしれませんが、放送事故って見ているこちら側からするとちょっとワクワクしてしまう部分もあると思います。もちろん出演者やスタッフの方々からしたらたまったもんじゃないでしょうけど…
例えば、ワイドショーでやくみつるさんと亀田史郎さんが舌戦を繰り広げたり、オールスター感謝祭で島田紳助さんが某芸人さんの胸ぐらを掴んだシーンなどはついつい見返したくなります。余談ですが、島田紳助さんが胸ぐらを掴んで恫喝しているのを目撃した島崎和歌子さんはスタジオにいた西川きよし師匠を連れて行き事態の収拾を図ったそうです。その場で島田紳助さんを止めることができるのは紳助さんのさらに先輩の芸人しかいないと瞬時に判断するあたりが本当に凄いですよね。
たぶんなんですけど、こういう生放送ゆえのアクシデントやハプニングって出演者やスタッフさんの緊張感とか焦り具合がダイレクトに伝わってくるので普段味わうことのできない経験の一種と言いますか、希少性みたいなものがあるのかもしれません。
そして!
そんな今作では『生放送中に悪魔に取り憑かれている少女が大暴走する』というトップクラスに前代未聞の放送事故を体験できるので、ヒヤヒヤしたい人だったり、なんか最近面白いことねぇなと思っている人なんかにも大いにオススメできると思います。
監督•脚本を担当しているのはオーストラリア出身のキャメロン&コリンのケアンズ兄弟です。これまでに「モーガン・ブラザーズ」(’12)、「スケア・キャンペーン」(’16)でも兄弟でタッグを組んでおり、『もう一捻り欲しいところで来てくれる』秀逸な脚本が特に素晴らしく、両作ともに非常に楽しめると思います。
幼少期に「ザ・ドン・レーン・ショー」という深夜の生放送バラエティを見ていた際、野暮な出演者がユリ・ゲラーのスプーン曲げのトリックをバラした時に司会者のドンは興を削がれたからか、大激怒してセットを破壊。さらにはそのまま番組を放棄してしまったそうです。その時の放送が痛烈に記憶に残っており、それが今作の構想に繋がったそうです。
現在「スケア・キャンペーン」の方はアマゾンプライム、U-NEXT、huluで視聴可能なのでこちらもオススメです。
もちろんめちゃくちゃ面白かったんですけど、ファウンド・フッテージホラーとしては少々中途半端に感じてしまいました。
仕方がないとは思うんですけど、本編の冒頭で
というかなりの量の説明や前置きをナレーションベースだったり、ファウンド・フッテージではない普通の映像で見せてしまっているので、その時点でフェイクドキュメンタリーとしては破綻しているようにも感じました。
ファウンド・フッテージと謳っている以上は、冒頭で「これは1977年に実際に放送されたテレビ番組です」という字幕を表示するぐらいに留めて、そのままいきなりなんの説明もなく番組の映像を流すくらいの気概を見せて欲しいような気もしました。
放送中に何かハプニングが起きた時はその都度「一旦お知らせを挟みます」と言ってCMに入ります。そのCM中の番組の裏側、いわゆる出演者たちの素の状態やスタッフさんたちのバタバタを見せる時だけ、放送中の映像と差別化を図るためかモノクロにしているのもあまり効果的とは思いませんでした。
物語の鍵を握るのは悪魔崇拝者サンダー•ディアボ率いるカルト教団「アブラクサス第1教会」が集団自決をした際に生き残った少女リリーです。彼女には混乱を招く悪魔が取り憑いており、ジューン博士と対話をすることでその悪魔を呼び出すことができます。
そんなジューン博士は超心理学者で、ベストセラー「悪魔との対話」の著者です。FBIからの依頼で保護されたリリーと関わり続けて現在に至ります。
そんな二人が悪魔を呼び出し、あきらかにリリーとは異なる人格や声、醜悪な容姿を披露。さらにはイスに拘束されたまま宙に浮くなど、説明がつかない事象を次々と展開していきます。
しかし野暮な超常現象懐疑論者カーマイケル(日本で言うところの大槻教授)が「こんなものは集団催眠に過ぎない!それを今から証明してやる!」と余計なことをし始めて事態は急変。リリーの悪魔が大暴走し、スタジオは阿鼻叫喚の地獄絵図と化します。
終盤の数十分はかなり抽象的というか、それぞれのご想像にお任せしますという感じのまま終わってしまいますので、見た人によっては「なにこれ?急に終わったんだけど!?オチは?」となるかもしれません。
ここからはオチに対する私個人の考えを述べますが、例によって見当違いである可能性大なので違ったら本当にすいません。
おそらくなんですけどもジャックはアブラクサス第1教会に入信し悪魔崇拝者になっていたんだと思います。それがどのタイミングなのかは定かではありません。番組の視聴率が頭打ちとなり、その現状を打開するために最愛の妻の命と引き換えに番組の視聴率回復を選んだのかもしれませんし、妻の死後に消息を経った際に入信したのかもしれません。
いずれにせよジャックが思い描いていたほどの成果は得られず、生放送中の惨劇という最悪の結果を招いてしまったのではないでしょうか。リリーに憑いている悪魔がジャックのことを知っている旨の発言をしたり、ラストシーンでの妻とジャックのやりとりを見る限りそういう感じなのではと思いました。
冒頭でも触れましたが、あくまでも今作は『生放送のバラエティ番組で起きた悲劇を見ていただきます』というスタンスなので、“ジャックに何があったのか”、“リリーに憑いていた悪魔の目的”、“その後番組はどうなったのか”などは最後まで明らかになりません。しかも最後に「ことは成された」と、これまたモヤモヤする謎の文言が表示されるため何かとスッキリしません。
なもんでそういう「視聴者のご想像におまかせします」みたいな作品が苦手な人はアレかもですが、個人的には結構ハマりましたし、サブスクで見られるようになったらあえて深夜にダラダラと見て臨場感を味わいたいと思います。
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓