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ここはどこ?私は誰?手首の紋章なんのこっちゃ!荒廃した近未来で記憶喪失男は己の罪と向き合っていく…「マッドレイジZ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(793日目)
「マッドレイジZ」(2018)
ダニエル•デ•ラ•ベガ監督
パブロ•パレス監督
◆あらすじ
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2101年、アルゼンチンのブエノスアイレス州。死体の山から目を覚ました男は全ての記憶を失っていた。ドライ•ピープルと呼ばれるゾンビに襲われているところをならず者に救われ、廃屋へと連れて行かれるも、感染しているという理由で理不尽な拷問を受け、監禁されてしまう。しかしその廃屋にいる無口な少女の手引きによって脱走した男は少しずつ自身の記憶を取り戻す。自分は誰なのか、手首の紋章は一体何なのか、あの少女は何者なのか。今、全ての謎が明らかになる!
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『戦争や飢餓、そしてゾンビによって崩壊した近未来。ウイルスに感染したその記憶喪失の男は一誰なのか、そしてそんな主人公を時には助け、時には傷つける少女は一体何者なのか!?』
という、ゾンビ諸々で荒廃した近未来を舞台に、記憶喪失の男が騒動を経て自身の記憶を取り戻すゾンビパニック映画です。
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今作の原題は「I Am Toxic」(私は有毒)で、邦題の「マッドレイジZ」は正直なところ、まったく本編の内容と掛かっていません笑
またその邦題や上記の日本版のジャケ写を見ていただければお分かりの通り、「マッドマックス」シリーズに寄せているのは明らかです。これまでにもいわゆる有名作品に寄せた邦題やジャケ写の作品はたくさん見てきましたが、実際問題、寄せたところでどれくらいの引きがあるのでしょうか。こういう部分を経済的観点から調べてみるのも面白そうですね。
実際の本編の内容は世紀末を舞台としているため、マッドマックスちゃあマッドマックスなんですけど、上記のジャケ写のような様々な種類の車は登場しませんし、爆発もありません。そもそも二丁拳銃の女の子は主役でもないです。
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今作は『ウイルス感染によって記憶を失った男(主人公)が事件に巻き込まれる中で徐々に記憶を取り戻し、己の過ちを思い出してしまう』というかなり真面目で硬派なストーリーで、派手さもなく、またゾンビや戦闘シーンのクオリティもそこそこですが、個人的には『徐々に謎が明らかになる』という展開が好みだったのでしっかり楽しめました。
なんですけども、一番最初に登場したゾンビ(今作ではサンド•ピープルという名前)はめちゃめちゃアグレッシブで動きもほぼ人間のそれなのに、以降に登場するゾンビは非常に動きも遅く、ほぼほぼ棒立ちのようになっているのが少々気になりました。どっちかに統一して欲しかったです。
もしかしたら「ウォーキング•デッド」みたいに『ゾンビになってからの時間がながければ長いほど、動きが遅くなる』という設定を入れたかったのかもですが、80数分の作品でそれをやるのはあまり効果的とは思えなかったですし、分かりづらいです。
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Amazonの紹介文などでも
『“マッドマックス 怒りのデス•ロード”と“ウォーキング•デッド”が融合した強烈な世界観!』
と謳っており、実際の内容よりも“とにかく一人でも多くの人が手に取りそうな煽り文句”を入れている印象です。
ちなみにAmazonのあらすじ等では盛大にネタバレしているため、視聴を検討中の方はお気をつけください!
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そして、今作で監督を務めたダニエル•デ•ラ•ベガ氏は“アルゼンチンの鬼才”として知られ、短編映画に定評があります。これまで手掛けた短編は毎回のように様々な映画祭で賞を獲得しており、主に人間ドラマやバイオレンスな内容を描いています。
今作も様々な映画祭に出品されたことを大々的に謳ってはいるものの、全て出品されただけで特に何か賞を取ったりしたわけではないっぽいです。もちろん出品されること自体が凄いことではありますが。
現在Amazonプライム、U-NEXT、ABEMATV、hulu、Leminoにて配信中です。
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◇2101年、北半球では細菌兵器を用いた戦争が激化。その一方で南半球では飢餓により多くの人々が命を落としていた。そしてアルゼンチンのブエノスアイレス州のどこか。北半球の大量の感染者の遺体は飛行機に詰め込まれ、この地に捨てられていた。そして飢餓に苦しむ人々がその遺体を食べたことでドライ•ピープルと呼ばれるゾンビが多く誕生した。
そんな折、死体の山で目を覚ました男は記憶を失っており、自分が誰なのか、手首の紋章は何なのか、なぜここにいるのか、その全てを思い出せない。偶然居合わせた男によってアジトに連れて行かれたその男は感染者の兆候が見られるということから理不尽な拷問を受け続ける。しかしそのアジトにいた口の聞けない少女の手引きによって逃走を図る。
徐々に蘇る記憶。自分は誰なのか、そしてあの少女は一体何者なのか。今、全ての謎が明らかになる!
というのが今作の細かめのあらすじです。
※以降は例によってネタバレも含みますのでお気をつけください。
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北半球から運ばれてきた死体が投棄された場所で目を覚ましたその男(主人公)は自分が何者なのかも思い出せず、意味深な手首の紋章も何のこっちゃで困惑状態。空腹&喉もカラカラでとりあえず助けを求めて大声を出したところ、ドライ•ピープル(乾いた者)と呼ばれる乾燥ゾンビに追い回されます。
そこを通りがかりの悪人面のロン毛おじさんに救われ、さらには腕の紋章にも見覚えがあるようで、親切にも自分たちのアジトまで連れて行ってくれて、手厚くもてなしてくれます。しかしホッとしたのも束の間、感染の兆候が見られる主人公に周囲の態度も一変。身ぐるみ剥がされボッコボコ。監禁され、犬として飼われることになります。
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檻に入れられ途方に暮れている主人公。するとリーダーのロン毛おじさんがいないタイミングを見計らって、そのアジトにいた無口な少女がなぜか主人公を脱走させてくれます。
男たち(髭男とぽっちゃり)に見つかってしまうも、どうにかこうにか近くの廃村に逃げ込んだ主人公。そこで自分の手首にある紋章と同じマークが描かれた建物を発見。中には人がいた形跡、そして首を吊った女性の遺体があった。
ここで主人公は自分が身体が不自由な妻に食事を取らせている光景を思い出します。どういった経緯かは定かではありませんが、手首に自分と同じ紋章があることから、この目の前の首吊り死体が自分の妻であることは確かなようです。
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そこへ自分を追ってきた髭男、ぽっちゃり、そして無口少女が建物の前に到着。主人公との壮絶な揉み合いの末、無口少女が今度はならず者たちに味方したことで、主人公が窮地に立たされ、またもボコボコにされてしまいます。
しかしそこへ大量のドライ•ピープルが押し寄せたことで男たちは一時撤退。主人公だけが首を括られた状態で置き去りにされるも、無口少女が今度は縄を切ってくれる情を見せてくれます。ここで偶然落ちていた拳銃を拾うと今度は妻が拳銃自殺を図ろうとしていたのを止める光景を思い出します。
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しかし置き去りにはされているので当然大勢のドライ•ピープルに囲まれてしまう主人公。しかしなぜかドライ•ピープルは一向に襲ってきません。主人公も大分感染が進行していたため、同族認定されていたわけです。
それを察した主人公は「人間に報いを」とつぶやき、大勢のドライ•ピープルを引き連れてアジトを襲撃します。頼めばついてきてくれるんですね。
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そして繰り広げられる壮絶な死闘。男たちも必死に応戦するも、ぽっちゃりも髭男もやられ、ついにはリーダーのロン毛おじさんと主人公の一騎打ち。
と、ここで主人公はロン毛おじさんからずっと謎の存在だった無口少女の素性を明かされます。
彼女はイリスという名で、なんと手首には主人公と同じ紋章。そうなんです。彼女は主人公の娘だったのです。
数年前、飢餓に苦しみながら当てのない旅を続けていた主人公一家。そして訪れた廃村のとある建物。この終わりの見えない現状、そして身体の自由が利かない妻の世話に限界を感じ、精神的に追い込まれた主人公は妻の首に自ら縄をかけて殺害。そして気が触れてしまったのか、それとも最後の理性を振り絞ったのか、一人娘のイリスを銃で脅して、追い出してしまったわけです。
もしかしたら原題の「I Am Toxic」(私は有毒)は、妻を手に掛け、娘に理不尽な思いをさせた主人公である父親の内面のことを指しているのかもしれません。
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その後、当てもなく彷徨っていた主人公は空腹に耐えかね、あの場所で感染者の遺体を口にしたことで自身も感染。目を覚ましたところをロン毛おじさんに拾われました。
一方イリスは主人公に強引に追い出された後、ロン毛おじさんたちのグループに拾われるも、甚振られ、ついには舌も抜かれて喋れなくなってしまいました。それでもここを逃げ出したらまた一人ぼっちになってしまうため、仕方なく留まっていたということでした。
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ロン毛おじさんは主人公の手首の紋章に気づき、イリスの父親であると確信。連れて帰り、イリス自身に復讐させようと思っていたとのこと。
そして主人公に銃口を向けるイリス。全てを思い出した彼は自身の過ちを認め、自我があるうちに彼女に殺害されることを望みます。しかしイリスはロン毛おじさんを銃で殴り倒し、自我を失った主人公とロン毛おじさんを鎖で繋ぎ、外に放置します。
「置いていくな、飢え死にする」と情けない命乞いをするロン毛おじさんと最早ドライ•ピープルと化した父親。イリスはどちらに対しても怒りを抱いてはいても、自らの手で殺すことは出来なかったのでしょう。そして2人を荒野に置き去りにして車で立ち去るイリス。車を走らせる彼女は全てから解放されたからなのか、笑みを浮かべるのだった。
というところで物語は幕を閉じます。
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ゾンビパニックものではありますが、あくまでも主人公と娘の話に焦点を当てているため、いまいち規模感とか被害状況が伝わって来ず、小さくまとまってしまったなという印象は否めませんでした。登場人物も少ないですし、ところどころで間延びしており、それで85分(エンディングを除く)という尺は少し長いように思います。
世紀末な世界観やゾンビパニックに至る経緯は非常に面白かったので、いっそ30〜40分くらいの短編や中編映画にしたほうが内容的には相性が良いような気がしました。
あと結局のところ、手首の紋章は何だったのでしょうか。日本でいうところの家紋みたいな感じなんですかね。あの紋章を手首や廃村の建物の壁に記すことの意味みたいなのが分かればもっと楽しめるのかもしれません。
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