大豪邸で行われるは狂気の殺人依存症克服パーティー!?定番の巻き込まれ系スラッシャーホラー「モンスター•パーティ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(768日目)
「モンスター•パーティ」(2018)
クリス•ボン•ホフマン監督
◆あらすじ
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空き巣稼業で日銭を稼ぐ若者3人組の一人キャスパーは父親の膨大な借金を肩代わりするはめになり、大きな山を狙わなければと彼らは豪邸で行われるパーティに給仕係として潜入する。しかし金庫の解除に失敗し、さらには仲間の一人がパーティーの参加者に突如惨殺されてしまう。なんとこのパーティーは参加者たちの殺人依存症の克服を祝うためのものだった。歯止めが利かなくなった彼らは次から次へと殺戮を繰り返し、豪邸は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
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『若者たちが大金目当てに盗みに入った大豪邸では殺人依存症の克服パーティーが行われていた。参加者の一人が衝動を抑えきれずに殺人を犯してしまったことで殺戮のスパイラルが始まってしまう!』
という、定番のB級パニックスラッシャー映画です。
全体を通してそこまで派手さはないものの、俳優陣の演技もレベルが高いですし、なにより“殺人依存症”という架空の依存症をテーマにしているのが中々に面白かったです。
作中では主人公の父親がギャンブル依存症として描かれており、その他にも薬物依存症やアルコール依存症、タイガー・ウッズ氏の一件で有名になった性依存症なんてものまでありましたね。
今作ではそういった依存症の中でも『人を殺してしまう衝動を押さえきれない“殺人依存症”』というオリジナルの依存症を抱えた人々、そして彼らの更生を目指す支援団体が登場するなどの設定が非常に斬新で、これだけでも大分評価は上がるのではないでしょうか。
そんな彼らが「1年間殺人を我慢したぞ!」という労いと祝いのために設けためでたい席に、そうとは知らずに潜入してしまった主人公たち。参加者の一人がつい衝動を抑えきれずに主人公の仲間を殺害したことで他の参加者も殺人衝動に駆られていく…
という流れもめちゃくちゃ面白いです。
「やっちゃいけないけど…駄目だ!やっちゃう!」みたいな葛藤が表情に表れているのもすごく良かったですし、この殺人依存症の人々が必ずしも一枚岩ではないというのが作品に厚みを増しているように感じました。
パーティーの会場にもなっている大豪邸に暮らすドーソン一家も家長のパトリックや長男のエリオット、エリオットの友人たちなんかは非常に好戦的でパトリックがファースト・キルをかました後は「もう今日は殺してもよくね?」みたいな軽いノリで次々に殺人衝動に駆られていきます。
その一方でドーソン家の母•ロクサーヌや長女のアレクシスは穏健派で、周りが暴走するのを諫めたり、アレクシスに至っては家族と縁を切り、ここから出て行きたいとすら思っています。そして更生支援団体の代表であるマイロも必死にエリオットたちの暴走を止め、主人公たちにも口止めをしようとするなど必死に事態の収拾に奔走します。
「しばらく止められたんだから、1回くらいやっちゃっても大丈夫だろう」みたいな依存症特有の思考や、「いやいや、今やってしまったら今までの我慢が無駄になってしまう!」という鋼の意志を貫く姿勢など、様々な依存あるあるが見られるのも今作の魅力の一つかと思います。
個人的にはかなり面白い作品だなと思いましたが、惜しむらくは作品としてのテンポの悪さとカット割りやカメラワークの単調さが足を引っ張っているように感じました。
特に前半が非常に長ったらしくて、本題(殺人が行われる)に入るまでに40分以上掛けているのは流石にしんどかったです。90分弱(エンディングを除くと約84分)の作品で半分近くをフリというか導入に割くのはあまり効果的とは思えないですし、かといって登場人物の掘り下げがあるわけでもないので、ともすれば倍速視聴されてしまったり、本題に入る前に視聴を止めてしまう人もいると思います。
これだけ導入に時間を割くのであれば、殺人依存症のドーソン一家やそのパーティー参加者にもう少しスポットを当てて欲しかったです。言うなれば加害者側である彼らの掘り下げやバックボーンがほとんど無いため、あまり作品に入り込めない方からすると「殺人依存症という設定の人たちが暴れてるなぁ」と冷めた目で見てしまう可能性もあります。
そのため地下で監禁されていたドーソン家のミッキーが一体なんだったのかも我々視聴者が想像で補う他ありません。おそらくは一家の次男で、その凶暴性や奇形による見た目から忌み嫌われて地下に幽閉されていたと推測できますが、やっと登場しても一分くらいで倒されてしまうなど出代が無さすぎます。
導入でダラダラと時間を使うならば、テーマにもなっている殺人依存症の人たちやドーソン一家、そしてミッキーのことももう少し描いて欲しかったなと思いました。おそらくなんですけどそのあたりをあまり製作陣が考えていないからなのか、見ていてもいまいちそれが伝わってきません。それが脚本の薄っぺらさや平坦さに繋がっているのかもしれません。
作中で描かなくても、設定として共有しておくことがいかに大切なのかを再認識しました。
そんな今作の監督•脚本を務めたクリス•ボン•ホフマン氏はおそらくこの作品で長編映画監督デビューを果たしております。以降はアメリカ国内のみでの上映作ばかりのようですが、最新作となる「Devil’s Workshop」(’22)では実力派のラダ・ミッチェル氏を主演に迎えており、今後日本でも配信される可能性大です。楽しみですね!
今作は現在Amazonプライム、U-NEXTにて配信中です。色々考えるのはめんどいけど、さくっとグロい映画を見たい方にはもってこいの一作です。
◇空き巣稼業で生計を立てている若者3人組•キャスパー、アイリス、ドッジ。そんなある日、キャスパーの父親にギャンブルによる多額の借金が発覚。金を貸しているギャングからは父親の命と引き換えに1万ドルの支払いを命じられる。ギャンブル依存症のダメ親父を救うべく、デカい山を狙おうと画策するキャスパー。そしてアイリスがハウスキーパーのアルバイトをしている大豪邸のドーソン宅に盗みに入ることに。その日行われるパーティーの給仕係としてキャスパーもドッジも無事に潜入。タイミングを見計らい電力を切り、電子金庫を開けようとする。しかしそのタイミングでドーソン家の長男•エリオットが突然ドッジを惨殺。電力を切ることが出来ず、金庫のロックの解除に失敗。防犯シャッターが作動し、豪邸からの脱出も叶わない。しかしなぜかパーティーの参加者たちはドッジの惨たらしい遺体を見ても動じない。なんと彼らは殺人依存症患者たちで、このパーティーは彼らの克服1周年を祝うためのものだった。エリオットの暴走により堰を切ったかのように始まる殺人の連鎖。キャスパーたちは無事に豪邸から脱出することが出来るのか!?
というのが今作の細かめのあらすじです。
エリオットがドッジを殺害する中盤からの怒涛の展開はかなり盛り上がりますし、殺戮描写はどれも凝っています。欲を言えばもっと給仕係やパーティー参加者を増やして、“至るところで殺しが始まって収拾がつかなくなる”みたいな画があると事態の深刻さが伝わってくるように思いました。
そんな騒動の最中、アレクシスの助力もあり、なんとか生き延びたキャスパーとアイリス。しかし逃げ込んだ先の地下室は何やら異様な雰囲気。すると父親のパトリックが急にスピーカーで屋敷中にオルゴールの音を流し始めます。
何かを察したのか必死に止めるよう呼びかけるアレクシス。しかし地下室に幽閉されていたミッキーはそのオルゴールの音で覚醒し、暴走。ドアをぶち破り、アイリスの顔面を食い千切って殺してしまいます。
その後すぐキャスパーに秒殺されたミッキーは一体何者だったのか…
そしてあのオルゴールはなんだったのか…
謎は深まるばかりですが、キャスパーとアレクシスは外へと逃げ出します。ここでチェーンソーを持った作中屈指のバカエリオットの友人が襲いかかるも普通に反撃を受け、チェーンソーが腹に刺さって死亡します。
しかし背後からエリオットの急襲を受けて捕らえられたキャスパーとアレクシスは拘束され、プールに沈められて危機一髪。しかしここで、必死に衝動を抑え続け、めでたく1周年を迎えたにも関わらず、その全てを台無しにした我が子に静かにブチギレていた母•ロクサーヌがエリオットを殺害。キャスパーたちを救出します。
ここの何が辛いかって、殺人を我慢し続けたロクサーヌも結果的には殺人に手を染め、さらにはその相手が我が子という点です。あっさり描かれてましたが、これはかなり胸に来るものがありました。
その後、口止め料として10万ドルと高級車を受け取ったキャスパーはその足で父親が監禁されているクラブへと向かいます。
ここでいけ好かないギャングに借金全額1万ドルを叩きつけて、親父を連れて帰って終わりかなと思いきや、キャスパーは屋敷から持って来た剣でギャングであろうとなかろうと、誰彼構わず皆殺しにしていきます。そして言葉を発する時間も与えることなくギャングのボスも叩き切り、親父を救出したところで物語は幕を閉じます。
このラストは良い意味で予想を大きく裏切ってくれて良かったですね。絶対に無関係そうな女の子とかも殺されてるのは流石に可哀想なので、そこは普通に悪い奴らだけを殺って欲しいところではありましたが、爽快感があって面白かったです。
特に大きなメッセージ性も無いですし、そこまでインパクトのあるグロ描写もないですが、隠れた名作とまではいかないまでもそこそこ楽しめるB級映画として見たらかなりの良作だと思います。
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