ヒッチハイクなんてするもんじゃないよ…2ちゃんねる発の怪談がまたまた映像化!川崎麻世さんがかっこいいのなんの!「ヒッチハイク」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(698日目)
「ヒッチハイク」(2023)
山田雅史監督
◆あらすじ
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ハイキングの帰りに山道で迷ってしまった大学生の涼子と茜は、やっとのことでバス停にたどり着くが、バスが来る気配がまったくない。涼子は足を怪我しており、茜の彼氏も迎えに来られないという状況の中、2人はヒッチハイクを試みる。山奥でのヒッチハイクは無謀にも思えたが、運良く通りすがった1台のキャンピングカーが、2人を快く受け入れてくれた。しかし、カウボーイの格好をしたジョージと名乗る男が運転するその車は、車内に彼の家族も同乗しているものの、どこか異様な雰囲気が漂っていた。(映画.comより引用)
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公式サイト↓
『ヒッチハイクを快く受け入れてくれた家族が激ヤバだった』という、王道の人怖系ホラーと見せかけておいて、終盤から山の怪異を絡めてくる展開が非常に秀逸なジャパニーズホラーです。
元ネタは2009年に「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」(洒落怖)という2ちゃんねるのオカルト板のスレに投稿された体験談です。
この掲示板に投稿された怪談や体験談を題材とした映画はここ数年でかなり増えており、リゾートバイト、きさらぎ駅、コトリバコ、くねくね、エレベーターで異世界へ行く方法など枚挙にいとまがありません。
「ヒッチハイク」含め、こちらのサイトから読めます↓
どの話も投稿者の文才も相まって、これは本当にあったことなんじゃないかと見紛うほどに臨場感がありゾッとする話ばかりで非常に魅力的です。
そのため映画にする際も、“元々下地が出来上がってる”、“現実世界の話なので低予算で作りやすい”、“若者たちがメインとなる話が多いので若手俳優をキャスティングしやすい”等など、昨今の日本映画事情を鑑みるともっとも好ましいコンテンツなのかもしれません。
先程名前を挙げた話が題材になっている映画は全て視聴させてもらっておりますが、元々ベースとなっている話が面白いうえに、各監督や脚本家のオリジナル要素みたいなものがハマることが多くて、個人的には結構当たりの印象があります。
特に「リゾートバイト」(’23)は物語の後半に別の怪談(八尺様)を足すことでバチボコにカオスなぶっ飛び展開を繰り広げておきながら最後はキレイに着地するという奇跡を目撃できる神作品だと思っています笑
こちらにまとめてあります↓
そして今作の元ネタになっている「ヒッチハイク」なんですけども、この体験談自体も2006年に公開された「レストストップ デッドアヘッド」という映画を元ネタにしていると言われております。
こちらのあらすじを簡単にまとめると
みたいな感じで、私も視聴したわけではないので何ともいえませんが、その後の展開(トイレで会話をした女性がもう何年も前に亡くなっていた)なども含め、投稿された体験談に類似する点が多いです。2ちゃんねるにこの話が投稿されたのは2009年で映画(2006)よりも後なので、おそらくはこの映画をベースにしたと思われます。(「レストストップ デッドアヘッド」も近い内に視聴したいと思います)
『映画を元ネタにしたであろう体験談を元ネタにした映画』
という何ともややこしい流れになっている今作ですが、どうかご安心ください!
「トイレの花子さん 新劇場版」(’13)や「コープスパーティー」(’15)など若手俳優を起用したホラー映画に定評がある山田雅史監督と、「きさらぎ駅」(’22)や実写版「鋼の錬金術師」シリーズ等で脚本を担当した宮本武史氏によって、ベースの話はしっかりと抑えつつ、その中で登場人物の性別変更や、時系列を変えることで恐怖を増幅させたりとオリジナル要素を足してストーリーに厚みを持たせております。
今月に入ってからアマゾンプライムでも配信が始まった他、U-NEXTでも配信中です。
という、シンプルながら不安や恐怖心を煽る良い始まり方でした。
兎にも角にも、このキャンピングカーにのっている一家の雰囲気がべらぼうに不気味で、カウボーイ風の格好に加え、彫りの深い顔立ちのジョージ。ジョージの妻であるジョセフィーヌはドレスの様な白いワンピースを纏う厚化粧の中年女性。娘のアカは顔に赤痣のある金髪の少女で、会話も支離滅裂なうえに、硬い飴をボリボリと食べており、そしてどうやら車には太郎という赤ん坊も乗っているとのこと。
突然スイス民謡の「おおブレネリ」を歌い出すなど、終始言動がおかしいことから、「ここで降ろして欲しい」と懇願する涼子たちでしたが、ここでいきなりシーンが切り替わります。
という風に、彼らもまた先程の涼子たちとほとんど同じことを体験します。
この山奥のキャンプ場で健たちはジョージの弟という無口な大男や一家にもてなされますが、健だけは料理の味やその場の雰囲気に馴染めずに縮こまっており、そのままジョージの弟に無理やり謎の液体を飲まされて眠らされてしまいます。
という感じで後半に突入します。
若者たち(涼子、茜、健、和也)はなぜあんなひどい目に遭ったのか、ジョージ一家は結局のところなんだったのか、あのグロテスクな赤ん坊(太郎)の存在、双子がそれぞれ硬いものと柔らかいものを好む理由など、作中で明かされていない謎や気になる部分がかなり多く、少々説明不足な感も否めませんでした。
例えば涼子たちが何かしらの封印を解いちゃったとか、禁忌を犯したとか、それ相応の罰を受ける理由があればいいんですけども、ただ『ハイキングしてて、迷って、ヒッチハイクしたらヤバい一家の車だった』だと流石に理不尽過ぎます。
『ジョージたちが実はカニバリズムのシリアルキラー一家で、ただただヒッチハイクしてきた若者を拉致して快楽のために殺害する』という、「ホステル」(’05)のような展開だったら、「罪のない若者たちが理不尽に惨殺されて…」となるのでそれもありかもですが、今作だとどうやらジョージ一家の存在自体が霊というか、山の怪異的なものなので、それならばやはり何かしら若者たちが巻き込まれる理由はあったほうがいいと思います。
元ネタとの相違というか、キャラの違いで言うと
ジョージとジョセフィーヌに関してはほぼほぼ同じ設定ですが、双子に関しては「レストストップ デッドアヘッド」ではハンサムな青年で、2ちゃんねるの体験談ではハゲデブの中年オヤジ、そして今作だと可愛らしい女の子という風に大分異なります。
どれが良いとかどれが駄目とかは無く、それぞれの良さがあると思いますが、個人的には体験談に登場するハゲデブ中年双子オヤジが圧倒的にパンチが強くて好みです。これを例えばザ・たっちのお二人がやったら相当面白いと思うんですけどどうなんでしょうか。流石に作中のおじさん率が高くなってバランスが悪くなっちゃうんですかね。
あと、主人公の健の成長も作中の見所の一つだと思います。
割と序盤から過保護な母親から頻繁に連絡が来て少々鬱陶しがってはいるものの、結局は親離れ出来ておらず、あまり自分の主義主張がない健。物語中盤で涼子と逃走した際も、涼子が足を負傷して走れないと分かるやいなや、あっさり見捨てて自分だけ逃げるなど情けない人物として描かれています。
その後、ドライブインの店長に救われ、自分だけ助かることもできましたが、未だに親離れできていない根性無しの自分を許せなくなり、また涼子のもとへ駆けつけます。そしてジョージの弟を後ろからレンガで殴り殺して涼子を救出、さらにはジョージ一家もたった一人で制圧してしまいます。
自分の情けなさを受け入れてしっかりと成長を見せてくれる点は非常に好感が持てますが、少々都合が良すぎるというか、「そんな簡単に人って成長できるかなぁ」とも思ってしまいました。さっきまでビビって何も出来なかったヤツが斧や猟銃で躊躇なく人を殺してしまうのはちょっと都合良すぎな気もしました。めちゃくちゃ覚醒したのかもしれませんが…
一つだけ勿体なかったのが、クライマックスで健がジョージを猟銃で射殺するシーンで、健が決め台詞的な何か良いセリフを言う時に猟銃の引き金を引く音が被ってしまい、何と言ったのか聞き取れないのはちょっと残念でした。
でも、『涼子は拉致されてから3日が経ったと思っていたけど、実は行方不明になってから3年が経過していた』という謎が“涼子たちはあの時すでに殺されていた”ということを示唆し、健がこの山で出会った涼子やジョージ一家は人ならざるものだったということ、そして最後は健もジョージたちの仲間に迎え入れられてしまうというオチに繋がるのはすごく面白かったです。
映像作品としては十分に楽しめるんですけども、尺(70分ほど)の都合もあるのか、先述したように少々説明不足感が否めませんでした。元ネタそのままでやりすぎたのか、体験談に登場する謎の赤ん坊は映画の方でも謎のままでした。せっかくオリジナルの要素も足しているのだから、赤ん坊に関しても何かしらストーリーに絡めてもよかったんじゃないかなと思います。またカニバリズムを扱う割にはそこまでグロい描写もなく、怖さ的には少々物足りなく感じました。
70分くらいの尺なのでさくっと見られますし、絵面も相当インパクトがあり楽しめると思います。90〜100分ぐらいの尺にして、色々気になったところも掘り下げたバージョンも見てみたいです。
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