生きたまま蝋人形にされちまう!こんな名作があったとは!「蝋人形の館」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(564日目)
「蝋人形の館」(2005)
ジャウム・コレット=セラ監督
◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大学フットボールの試合を観戦しようと6人の若者がスタジアムを目指す。途中、キャンプをして一泊すると、翌朝車は誰かの仕業で走行不能に。声を掛けてくれた男に近くの街まで車で送ってもらうのだが、そこは異様な静けさに包まれていた。(Filmarksより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『若者たちが迷いこんだのは、人間を生きたまま蝋人形にしてしまうイカれ双子が住む激ヤバ村だった!』
というスプラッタームービーで、タイトルに惹かれて内容はほとんど確認せずに視聴しましたが、これがまぁべらぼうに面白かったです!
今までこの作品を知らなかった己を恥じるレベルの面白さとクオリティの高さで、特に終盤の蝋人形の館内での攻防や、蝋人形や蝋の館が燃え上りドロドロに溶けていく様子は圧巻の一言です。
更には20年近く前の作品にも関わらず、CGなどの映像技術が今と何ら遜色がありません。本当に凄いです。もっと名が知られててもおかしくないと思います!
原作はチャールズ•ベルデン氏の戯曲「肉の蝋人形」で、これまでに1933年と1953年にも映画化されています。
中でも1953年に上映された「肉の蝋人形」は3Dメガネをかけて鑑賞する3D立体映画として公開されており、1950年代の3D映画ブームにおける最大のヒットを記録しているそうです。2014年には「文化的・歴史的・芸術的にきわめて高い価値を持つ」とされ、アメリカの国立フィルム登録簿にも登録されました。
ちなみに今作(2005年版)はロバート・ゼメキス氏とジョエル・シルバー氏によって設立されたホラー映画専門プロダクションである“ダーク•キャッスル•エンターテインメント”の作品で、同社初の殺人鬼映画であり、R15指定も受けています。
監督を務めたジャウム・コレット=セラ氏はCMやMVのディレクター出身で、今作が劇場映画初監督作になります。
今作の発表後は、言わずと知れた名作スリラー「エスター」(’09)やディズニーアニメの実写化「ジャングル・クルーズ」(’20)、ドゥエイン・ジョンソン主演の「ブラックアダム」(’22)などホラーやアクション、ファミリー向け映画など数多くの作品を手掛けています。
本作は現在Netflix、U-NEXTにて配信中です。
ちなみに、33年版と53年版の両作が収録されている「肉の蝋人形」コレクターズ•エディションも発売中です。
『若者たちが知らずに訪れた村や館が実はヤバい所だった』みたいなテイストのB級ホラー映画を私は今までにたくさん見てきました。
そういう作品の大半は『若者4〜5人で村を訪れたらヤバい奴らに襲われて、ひとりまた一人と殺されてしまう』みたいな同じ展開の繰り返しになることが多く、非常に単調でどれも印象に残りませんでした。
今作もテイストとしてはそれに近しいものがあります。
しかし!
とにかくシーン展開が巧みで、そういったB級映画とは明らかに一線を画しています。
状況づくりが非常に上手いため
『6人のうち2人は車を直すために村へ、残りの4人は先に目的地のフットボールの試合会場へ』
というところから
『渋滞がすごいので観戦を諦めて一度引き返す。先ほどの2人と合流しようと思ったら、カップルがサカって我慢できなくなったので男2人を先に行かせる』
という風に『村にいる2人』、『後から村に来た2人』、『森でヤッてる2人』と『2人ずつ✕3』の状況を作り、そこからそれぞれ話が展開し、襲われたり、殺されたり、蝋人形されたりしながら合流したりしなかったりするので飽きがきません。
主人公•カーリーと不良兄貴•ニックの兄妹の絆も物語に華を添えており、ニックの不器用ながらも妹を思う気持ちや何だかんだで2人が支え合っている様子がとても綺麗に描かれていました。
あと、何かと世間を騒がせることでおなじみのパリス・ヒルトンがお色気担当の女子として出演しており、鉄パイプでその美しい顔面を串刺しにされ無惨に死亡してしまうなど爪痕を残しまくっています。
ちなみに今作でパリス・ヒルトン氏は第26回ゴールンデンラズベリー賞において最低助演女優賞を受賞し、更には最もうんざりしたダブロイドネタ賞にもノミネートされました。
※ゴールンデンラズベリー賞とは
アメリカの映画賞のひとつ。アカデミー賞の授賞式の前夜に開催され、“最低”の映画を表彰するもので、ラジー賞とも言われる。
村を訪れた人々を生きたまま蝋人形にしてしまうサイコパス双子ブラザーズも中々にインパクトがあり、とても良かったです。
どんな幼少期だったかは冒頭でほんの少し見せるだけで、あとは劇中で新聞の切り抜きに載っていることでしか彼らの情報を得られず、謎な部分もいくつかあります。ですが多少謎があり、我々視聴者に想像させる余白が残っているのが今作のテイスト的には合っているように思いました。
そして、彼らが住む蝋人形の館の不気味なセットや地下の作業部屋のおぞましさなども非常に魅力的でした。彼らによって生きたまま蝋人形にされてしまった人々はロウで全身を固められてはいるものの、生きてはいるので目だけが動いたりしますし、ロウをベリベリ剥がされて皮膚までベロっと持っていかれた時に涙を流したりするのも痛々しさが伝わってきてめちゃくちゃ良かったです。
『この館は全てロウで出来ている』というのが割と序盤で判明した時点で、もう絶対にラストで燃えるじゃんとオチが読めてしまいます笑
ですが!
この蝋人形の館が燃え盛るクライマックスがこれまた大迫力で、ドロドロと溶けていく壁や人形、ズブズブと沈んでいく死体など、「こんな映像見たことない!」と釘付けになるほどの出色の出来で、私は一回見終わったあとにもう一回このクライマックスだけ見直しました。それくらい良かったです。
本当に良いところばかりでマイナスポイントが中々見当たらないのですが、強いて気になったところを挙げるとしたら本題に入るまでが少々長いのが気になりました。
登場人物のキャラや関係性を見せるために他愛のないやり取りをする序盤のシーンに40分ほど使っており、さすがにじっくりやり過ぎかなと思いました。
俳優陣の演技も上手いですし、不穏な空気感に持っていくのも自然なので全然見られるし、面白いんですけど、このあたりをもう少しスッキリさせて、全体尺が90〜95分くらいになったら個人的にはもっとハマっていたと思います。エンディングを除いても107分くらいあるのでやっぱりちょっと長かったです。
ですがそれらを差し引いても相当面白い一作です。グロ描写も秀逸で、グロ好きの私も思わず唸るあんなシーンやこんなシーンがたくさんありました。
これは是非とも見ていただきたいです。オススメです!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓