傑作とはまさにこのこと!ロメロ✖キングの黄金タッグ「ダーク・ハーフ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(535日目)
「ダーク・ハーフ」(1993)
ジョージ•A・ロメロ監督
◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
純文学作家のサッド・ボーモントには、もうひとつの顔があった。それは、人気バイオレンス作家のジョージ・スターク。しかしその正体が暴かれた時、サドはジョージ名義での執筆をやめる決意をし、彼を葬ってしまう。やがてサドの周囲で残忍な殺人事件が次々と起こり、彼がその容疑者と目されるが……。(映画.comより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
言わずと知れたゾンビ映画界の巨匠ジョージ•A•ロメロ監督と世界的人気作家スティーヴン・キングの黄金タッグによる作品です。
原作は1989年に発表され、Publisher's Weekly 誌によるその年のベストセラー第2位に選出されており、一説にはロメロ監督がこの作品をどうしても自らの手で映画化したいとキング氏に企画を持ちかけたのが始まりだそうです。
◇純文学作家で大学教授の主人公が別名義でバイオレンスな小説を書いていたものの、たちの悪い男に正体がバレて強請られてしまう。彼は自ら公表してその名義での活動を辞め、その名を葬ってしまう。すると時を同じくして彼の周囲で凄惨な殺人事件が多発し、現場の証拠から彼が容疑者であると目されてしまう…
という王道のミステリーホラーながらキング節の効いた一切先の読めない展開とロメロ監督ならではのホラー演出がキマっており、個人的にはかなりの傑作だと思います。
スティーヴン•キング氏はかつて幾つかの作品をリチャード・バックマン名義で発表しており、そのバックマン名義の作品はキング氏の作風よりもバイオレンスでアクション性が強かったそうです。今作はバックマンの正体がキング氏であることが発覚した後に書き上げられたたもので、「小説がその作者にどれほど強い支配力をもたらすか」という主題を掘り下げているそうです。
2017年9月22日、東京•池袋の新文芸坐にて「ロメロ監督追悼企画」として一回限りの追悼上映として今作も上映されました。
現在配信などは無いようで、私は浜田山のTSUTAYAにてレンタルさせていただきました。
ミステリー要素が強く、ネタバレは絶対に厳禁な作品だと思いますのでそういった部分を避けながら書いていこうと思います。
◇小学生の頃から作家を目指していた主人公•サッドは頭痛や幻聴に悩まされており、ついには意識を失い、病院に担ぎ込まれる。検査の結果、脳腫瘍が発見され、さっそく手術に取り掛かるも、奇妙なことに脳からは瞬きする目や、鼻が発見される。なんと彼は元々双子だったが、胎内にいるときに片方が吸収されたことでこのような事が起きたという。
無事摘出したものの、そのとき外では数え切れないほどのスズメが狂ったように飛び交っていた。
という開始数分で100%心を掴まれます。
23年後、双子の父となったサッドは大学教授兼あまり売れない純文学作家をしながら、実はジョージ・スタークという別名義で超売れっ子のバイオレンス小説家の顔を持っていた。しかしある日、たちの悪い教え子•フレッドがサドとジョージ・スタークが同一人物であることを知り、バラさない代わりにとサッドに金銭を要求。サッドは屈することなく、自らの意思で雑誌にて公表する。乗り気ではなかったが、カメラマンの提案でジョージ・スタークの墓まで作り、その名義を葬り去った。
その後、カメラマンやフレッドなどサッドの周囲の人物が立て続けに殺され、その場の証拠からサッドは容疑者と目されてしまう。
というこの王道のミステリーテイストが堪らないですよね。
だいたいこういう場合って主人公が多重人格で、“自覚はないけど実は自分が犯人だった”みたいなオチの作品が多いんですけども、そこは我らのスティーヴン•キングです。そんな一筋縄ではいきません。
大丈夫なネタバレなんですけど
割と早い段階で犯人がジョージ・スタークであることが発覚します。
そうなんです!
存在しないはずのサッドの別名義であるスタークです。当然、この部分がオチだと“サッドは多重人格で実は犯人でした”で終わりなんですけど、今作はここからです!ここからとんでもなくギアを上げて面白くなっていきます。
結局の所、サッドとスタークは同一人物なのか?
スタークが凶行に及ぶ理由は?
このあたりの謎が解き明かされる後半にかけての盛り上がりがもう本当にとてつもなく面白いです。
心優しき主人公のサッドと暴力的なジョージ・スタークの一人二役を担当したティモシー・ハットンの演技は神がかっており、これは別の役者が演じているんだよと言われたら完全に信じてしまいそうなほどにまったくの別人を演じきっています。
ジョン・ユーリッチ氏とエベレット・バレル氏による特殊メイクも出色の出来で、掌に鉛筆が貫通して穴が開く様子や前述した脳のシワからギョロッと眼が見開くシーン、終盤の朽ちていくスタークなどロメロ監督のこだわりを感じる描写の数々も見所の一つだと思います。
今作はDVDを購入して定期的に鑑賞したいレベルでめちゃくちゃハマりました。これは手元に置いておきたいですね。本当に面白かったです。サブスクなどにはないため、中々見る機会が無いかもですが、ぜひとも見ていただきたいです。オススメです!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓