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未曾有のゾンビパンデミックに元傭兵の囚人パパが立ち向かう!アクション全振りの泣けるゾンビ映画「デイ•ゼロ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(679日目)

「デイ•ゼロ」(2022)
ジョーイ•デ•グスマン監督

◆あらすじ
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8年間模範囚として服役していた元エリート傭兵のエモンはようやく仮釈放が決まり、妻や娘との久々の再会に心を躍らせていた。しかし、感染者を凶暴化させる謎のウイルスが世界中で爆発的に広まり、未曾有のパンデミックを引き起こす。それは彼のいた刑務所や、妻や娘の暮らすアパートも当然例外ではなく、おびただしい数の感染者がなだれ込み、人々は逃げ惑い、そして襲われていく。エモンは友人のティモイと共に刑務所を抜け出し、家族を救うべくアパートに急ぎ向かう。国民の80%が凶暴化したこの国でエモンは家族を救うことができるのか…
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『元傭兵のムキムキ親父が家族を救うためにゾンビをバッタバッタとなぎ倒していく』というシンプルなストーリーながら、並々ならぬこだわりを感じる戦闘シーンは非常に目を見張るものがあってすこぶる面白かったです。

主人公の元傭兵のムキムキ親父エモン役のブランドン•ヴェラ氏は何を隠そう現役の総合格闘家で、しかもWKAムエタイ全米スーパーヘビー級王者、WEC13ヘビー級トーナメント優勝、初代ONE世界ヘビー級王者など数々の王座やタイトルを獲得しているトップクラスの格闘家です。

エモン役のブランドン•ヴェラ氏
奥様のケリー氏も総合格闘家です。(onefc.comより引用)

そんなドウェイン•ジョンソン似の現役バリバリの総合格闘家であるヴェラ氏によるゾンビ相手の格闘シーンは韓国の人気アクション映画「犯罪都市」シリーズのマ•ドンソク氏並みに豪快で迫力満点です。打撃やプロレス技、さらにはナイフアクションや手錠を鉤爪のようにして殴ったりと武器を用いた近接戦闘、さらには爽快感MAXの銃撃シーン等など、この映画の戦闘シーンだけをまとめた映像集を映画好きの人に見せて回りたくなるほどの出色の出来です。おそらくはアクション映画好きの方も唸らせることができるのではないでしょうか。

また、この痛快なアクションシーンに特化しただけの映画かと思いきや、純粋にゾンビパニックの描写もかなり優秀なうえに、家族や仲間との美しい絆で泣かせにかかるなど、映像作品として押さえておきたいところをしっかりと押さえているため個人的には相当高評価です。

私は例によって浜田山のTSUTAYAでレンタルさせていただきましたが、動画配信サイトのビデックス様で配信中のほか、huluでも550円でレンタルが可能です。ちなみに11月8日よりLeminoでは配信が開始されるようです。

Filmarksより引用

ストーリーは至ってシンプルで

『ウイルスに感染して凶暴化した人々が跋扈するフィリピンで元傭兵の囚人•エモンが愛する家族を救うために奔走する』

といった感じの内容で非常に見やすいです。

主人公のエモンを筆頭に、お調子者の相棒•ティモイや肝が座っているエモンの妻•シェリル、表情豊かでとても可愛らしい娘のジェーンなど、脇役を含め登場人物一人一人にしっかりとバックボーンが感じられる描き方でとても良かったです。

シェリルとジェーン(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

また、ジェーンが『言葉を話すことができない』というのが一つポイントになっております。

基本的には手話でやりとりをするんですけども、「出所したらジェーンと手話で会話をするんだ」と一生懸命手話を練習していたエモンがようやくジェーンたちと再会して覚えたての手話でやりとりをするシーンも非常に微笑ましいですし、物語終盤で自身がウイルスに感染したことを悟ったエモンがたどたどしい手話で「パパはお前を心から愛してる、ずっとそばにいるよ、生き続ける、お前の心の中で」と伝えるシーンは込み上げてくるものがありました。

家族の絆に泣かされてしまいました。(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

この家族の絆や愛、そしてそんなエモンたちを守るために男気を見せて散っていったティモイの勇姿等など、混沌とした世界で魅せる人間の美しさというものが非常に際立っており、とても良かったです。

エモンの相棒•ティモイ
口先だけのお調子者ですが作中屈指の良いヤツです。
(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

正直なところ、同系統のゾンビパニック映画「哭悲/THE SADNESS」(’21)にテイストがどことなく似ているようにも感じました。個人的にはこの「哭悲/THE SADNESS」がゾンビパニック系映画の中で最高点を叩き出しているため、そこと比較してしまうとどうしてもスケールダウンは否めませんでした。

笑顔の狂人が全力疾走で追いかけてくるってめちゃくちゃ怖いですよね。「哭悲/THE SADNESS」より(映画.comより引用)

今作も「哭悲」も『死者が蘇るタイプのいわゆるオールドスタイルのゾンビではなく、凶暴化して人々を襲う謎のウイルスの感染者』という部分は同じなんですけども、「哭悲」の方がそのゾンビ(正確には凶暴化した人間なんですけどもややこしくなるのでゾンビと呼びます)の設定に関する作り込みが深かったです。

哭悲におけるゾンビの設定は

◇狂犬病ウイルスが突然変異したもので、感染すると破壊衝動や暴力性を抑えることが出来ず、手当たり次第に非感染者を襲ったり、特定の人物に執着してどこまでも追い続けたり、家屋や車を破壊する等の凶行に及びます。“いかに残虐に人を殺せるか”を考えながらも、自分の非道な行いに対する罪悪感はあるため、やってはいけないと分かっているけども衝動を止めることができません。そのため、殺人を犯す際などは満面の笑みを浮かべながら涙を流すなど“楽しい”や“悲しい”など複数の感情が入り混じっているようにも見えます。そのためゾンビというよりかは狂人に近いのかもしれません。

この黒目がまぁ怖いんですよね。
「哭悲/THE SADNESS」より(映画.comより引用)

一方で今作は

◇謎のウイルスに感染すると凶暴化し、手当たり次第に人を襲う。視力は失われるが、代わりに聴覚が研ぎ澄まされ、些細な音にも反応します。周囲に獲物がいないと休眠状態になり、動かなくなりますが、音がするとまた目を覚まして襲いかかってきます。感染者に噛まれた者も数十分から一時間ほどで感染し、凶暴化してしまいます。こちらもゾンビというよりかは狂人タイプだと思われます。

ちょっとゾンビよりなビジュアルです。
(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

といった感じで、「哭悲」の方が『どんなウイルスなのか、感染するとどうなるのか』というシンプルかつ重要な部分が細部に渡り明確化しています。。

しかしそれと比べると今作は、メインキャラクターが襲われないようにするために都合良く目を見えなくしているだけなのではと思ってしまったり、感染するまでの時間もバラバラだったりと、物語を展開させるためにその都度付け足したかのように見えてしまう設定ばかりで少々薄っぺらく感じました。

音に過剰に反応するけど目が見えないのなら、ゾンビ同士で襲い合うことも起こり得そうなものですが、本編中にはそういった描写は見られませんでした。またゾンビは目が見えないと分かっているエモンたちがゾンビの群れ相手に消火器を撒き散らし、視界を遮ってその隙に逃げ果せるというのもなんだか矛盾しているように感じました。なんなら消火器の放射音でもっと突っ込んで来そうな気もします。

クオリティ自体は相当高いです。
(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

あと、ゾンビが人間を襲う理由も分かりづらかったです。凶暴化するところまでは理解できるんですけども、凶暴になってからは何がしたいのか、人間を襲うことが目的なのか、感染者を増やしたいのか、それともオールドスタイルのゾンビ同様に人間を食べたいのか等など、このあたりが少々不明瞭でした。おそらくは「哭悲」と同様に破壊衝動に突き動かされているだけだと思いますが、頻繁に噛みついてくる描写もあり、その割には体の一部が欠損しているゾンビがいないなど、細部が詰められていない印象でした。

『破壊衝動+噛むことで感染者を増やす』というのが今作のゾンビ(狂人)の行動原理だと思われますが、先述したような素晴らしい格闘アクションに重きを置いた結果、肝心のゾンビ映画としてのそういった厚みの部分がおろそかになってしまったのかもしれません。

狭くて薄暗いアパートや刑務所でゾンビから逃げ惑うシーンなども相当見応えがあります。(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

であるならば、もっともっとアクション方面に突き抜けて、ゾンビ映画としての細かい部分なんか全無視して、「もうこれゾンビ映画の皮を被ったアクション映画じゃん!」とツッコまれるぐらいの作品に仕上がったら相当話題になったかもです。

シェリルもジェーンを守るためにゾンビと揉み合ったり、銃を手にしたりするので、なんだったら“シェリルも元傭兵でめちゃくちゃ強い”みたいな要素を足してみたらまた違った面白味が出てくるかもしれません。

めちゃくちゃカッコイイ主人公でした。
“実は生きてました”みたいな感じで続編作って欲しいです。
(『DAY ZERO デイ•ゼロ』予告編 ビデックスで配信中!YouTube動画より引用)

思ったほど評価が高くないんですけども、個人的にはもうちょっと評価されても良いんじゃないかなと思います。このまま埋もれさせてしまうのは勿体ないクオリティなので是非とも沢山の方々に見ていただきたいです。

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