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美少年とイケおじのヴァンパイア殲滅ロードムービー!なんか総集編みたいだけど劇場版しかありません「ステイク•ランド 戦いの旅路」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(729日目)
「ステイク•ランド 戦いの旅路」(2010)
ジム・ミックル監督
◆あらすじ
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ヴァンパイアが蔓延る世界。アメリカ合衆国の秩序は崩壊し、大都市はすべて壊滅。大統領も職務を放棄して逃亡し、生存者が生活できる場所は、ごくわずかだった。そんなある日、家族と暮らしていた少年マーティンの家もヴァンパイアに襲われ、かろうじてマーティンだけが、ミスターと呼ばれるヴァンパイア・ハンターに助けられた。絶望に包まれた、行き場のない世界。マーティンはミスターと共に、北部に残されているという安全な聖域を目指し、旅に出ることになるが…(Filmarksより引用)
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『ヴァンパイアが蔓延る世界。謎多きヴァンパイアハンターのミスターと青年マーティンは安息の地•ニューエデンを目指し、今日も旅を続ける』という、バイオレンス描写満載のアクションホラーです。
ゾンビ映画の王道ともいえるストーリーを好戦的で動きの素早いヴァンパイアに置き換えることでアクションや戦闘シーンに派手さが増しており、非常に見応えがありました。またカメラワークや俳優陣の芝居も相当レベルが高かったです。
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作中において町に留まったり籠城することはなく、常に移動し続けているのでテンポ感が良いです。あと、『ニューエデンと呼ばれる絶対に安全な土地を目指す』というゴールが最初から定まっているので話がブレることが無い点も個人的には好感が持てました。
なんですけども、作中で起こる事件や事象みたいなものがどれも唐突と言いますか、あまりにもいきなり過ぎてその間の過程をすっ飛ばしているように感じました。たぶんなんですけどワンクールのアニメやドラマの総集編を見た時と同じ感覚だと思います。
そういう総集編ってどうしても2〜3時間でまとめなければならないですし、ストーリーもある程度分かるようにしつつ、名シーンや見所を全て見せなければならないので微妙に繋がりが不自然だったり、初見の人がいまいち理解できないところがあると思います。
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今作はまさにそれで、面白いは面白いし、見所もたくさんあるんですけど、逆に言うと良いシーンだけを抜粋して繋ぎ合わせただけで、その間の過程をすっ飛ばしているように見えました。なので詳しくは後述しますが、「何であのキャラは主人公たちの旅に付いて来たんだ?」とか「そのキャラって殺されたんじゃないの?」みたいなことが多々あります。
なもんでその都度『なんとなくこんなやり取りとか会話があったんだろうな』と我々視聴者が脳内で補填する他なく、これが本当にドラマの総集編だったらまだ分かるんですけど、ゼロから作ったものでこの構成になるのはあまりよろしくないと思います。
一応今作には「ステイク•ランド 戦いの果て」(’16)というその後を描いた続編があり、いよいよワンクールのドラマを前後編に分けて劇場版にしたみたいになってますけどドラマ版があったという情報は一切ありません。映画のみです。
また、監督•脚本を務めたジム・ミックル氏は今作含め4作のホラーまたはスリラー映画を手掛けており、なんとその全てに今作の主人公•ミスターを務めたニック•ダミチ氏がキャスト&脚本でクレジットされています。
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これは完全に私の憶測なんですけど、ミックル氏とダミチ氏は元々仲が良く、ダミチ氏が脚本をある程度形にしたらミックル氏に「お疲れ!今回も監督やってくんない?」みたいな感じで毎回やっているのかもしれません。またはミックル監督がダミチ氏の演技に惚れ込んでおり、「俺が監督も脚本もやるし、なんだったらダミチさんの役がオイシくなるように書き換えていいよ!」とか言ってるのかもですね。
ちなみにですが制作費400万ドルに対して、興行収入はアメリカとカナダの合計で約3.3万ドルと大分残念な結果に終わっています。
現在アマゾンプライム、U-NEXT、FOD、ABEMA、Leminoにて配信中です。ちなみに続編の「戦いの果て」の方は別の監督が手掛けているんですけども、ダミチ氏は単独で脚本を手掛け、もちろん主人公•ミスター役も務めています。
この続編に関しては現在U-NEXT、DMMTV、ABEMA、Leminoにて配信中です。こちらも近々視聴したいと思います。
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◇ヴァンパイアが蔓延する世界。死者7万5千人、都市機能は壊滅、政府は崩壊し大統領を含む権力者たちは国民を置き去りにして国外へ避難していた。夜な夜なヴァンパイアが跋扈し、常に危険と隣り合わせの人々は何かすがるものを求め、カルト宗教にのめり込む。そんな荒廃した世界において、謎多きヴァンパイアハンターのミスターによって助けられた青年マーティンは彼から戦い方を教わり、2人は北部に残される唯一安全と言われている地•ニューエデンを目指して旅を続ける。
というのが今作の細かめなあらすじです。
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基本的にはミスターとマーティンがニューエデンを目指しつつ、その途中で立ち寄った町や集落でヴァンパイアや邪教集団と戦ったり、助けた人達が仲間に加わったりみたいな感じで展開するので非常に分かりやすいです。
ですが先述した通り、そういった事象が起こるまでの過程が省かれているので、見ているこちらからすると「ヒロインのベルはなんで付いて来たの?」とか「邪教集団に拉致されたシスターのおばちゃんはなんで無事なの?」とか、毎回何かが起こる度に突然過ぎて疑問符がついてしまいます。
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もちろん、「ベルもニューエデンに行きたいんだろうな」とかある程度その間の流れとかやり取りは想像で補えますが流石に省き過ぎだと思います。雰囲気もあるし、作品のテイストもすごく良いのに勿体ないです。映像的には盛り上がらない繋ぎの部分をどう料理するのかがこの作品の課題だったのかもしれません。
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また、マーティン以外のキャラの掘り下げがまったく無いのも勿体ないです。すごく魅力的なのにポッと出みたいになっているのが残念です。ミスターに関しても断片的でもいいので、過去や生い立ちを想像できるシーンが欲しかったです。
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戦闘シーンはスピード感もあり、かなり見応えがあるんですけども、敵であるヴァンパイアにあまり魅力を感じませんでした。
作中において基本的な設定に関する説明がほとんど無く、“噛まれた人もヴァンパイアになる”とか“日光で死滅”とか、そういったヴァンパイアの王道設定はこちら側が分かってるうえで話を進めるのが少々不親切でした。そもそも“なぜ出現したのか”というところが一切語られず、ナレーションベースでいいのでもうちょっと設定を教えて欲しかったです。
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またヴァンパイアにもスカンプ(餓鬼)とかバーサーカーとか色々種類がいるんですけども、いまいちその違いが分からず個性を感じませんでした。ゾンビみたいな見た目で知能が低い種類以外はほぼ同じ外見で、基本的には色白で牙があり、好戦的で動きが素早いです。ヴァンパイアが出てくる度にミスターが「〇〇だ!」みたいな感じで名前は教えてくれるんですけど、出来ればそれぞれの特徴とか個性を教えて欲しかったですし、一発で見分けがつくようなインパクトが欲しかったです。
あと、頭を潰せば倒せるのにわざわざ心臓を杭で貫いて倒している意味が分かりませんでした。一番雑魚のヴァンパイア(ゾンビみたいなやつ)は頭を潰せば倒せるけど、それ以外のヴァンパイアは心臓を仕留めないと倒せないということだと思うんですけど、これに関してももうちょっと説明が欲しかったです。
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せっかくのヴァンパイア映画なのに、ラスボスが邪教集団のリーダー(ジェベダイア)というのもいまいちピンときませんでした。ミスターのせいでヴァンパイアに襲われたジェベダイア自身もヴァンパイアになっているので全然ありなんですけど、あまり登場しないうえ、どういうキャラで何が目的なのかもいまいち分かりません。一応、ミスターのせいでヴァンパイアになってしまったので復讐しに来るというのは道理が通りますが、ボス感は無かったです。
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クライマックスでは圧倒的な力でミスターを追い詰めるも、背後からマーティンの一撃を喰らい即死するというのがあまりにも呆気なかったです。しかもジェベダイアがまだ喋っているのにマーティンがお構い無しに杭を心臓に打ち込むので哀れというか、物語として無粋に感じました。
例えば、マーティンが意気地なしキャラでこれまでに一度もヴァンパイアを仕留められないというのがあっての、父親代わりのミスターを助けるために勇気を振り絞って倒すとかだったら成立すると思うんですけど、それまでにも何回かマーティンもヴァンパイアを倒しちゃってるのでこれもちょっと展開的にオイシくなかったです。
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『マーティンはもう一人でも大丈夫だと悟ったミスターは1人でどこかへ消えていき、マーティンは道中で知り合ったペギーと共にニューエデンに辿り着く』という終わり方は非常にキレイで良かったと思います。
面白いところだけを繋ぎ合わせたダイジェスト版のような構成なのでストーリーよりも映像とか派手なアクションを見たいという人には持って来いの作品だと思います。
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