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9歳児VS最恐の悪霊!ジュブナイル•コメディホラーかと思いきや胸糞必至の鬱々ホラー「ゴーストホーム•アローン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(744日目)

「ゴーストホーム•アローン」(2019)
アジマル•ザヒール•アーマッド監督

◆あらすじ
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9歳の小学生イーライは、授業で恐ろしい悪霊が描かれた絵を発表する。その悪霊は“バーグリーの怪物”。子供の魂を集め、イーライ自身も狙われているという。先生には怒られ、友達にはバカにされるが、イーライ自身はその悪霊が自宅の地下室にいると信じ切っていた。そんな中、同級生のヒラリーがかつてこの町で起きた児童連続殺人事件の新聞記事を見つけてくる。その犯人の名前は、バーグリーだった―。その日の夜、両親は外出し、イーライの世話をするはずだった姉もデートで出掛けてしまう。そして、イーライは家でひとりぼっちになってしまうがー。(Filmarksより引用)
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『自宅の地下室に悪霊がいると信じて疑わない9歳の少年•イーライ。ある晩、一人ぼっちで留守番をする状況となった彼はたった一人で霊を倒そうと勇気を出して立ち向かう!』という王道のジュブナイル•コメディホラー!

だったら良かったんですけども、中盤以降はなんだか鬱々とした展開が続き、そのまま後味最悪のラストを迎える骨太のがっつりホラーでした。

もちろんそれが別に悪いわけではないんですけども、楽しくてワクワクする前半と陰鬱な後半の高低差があり過ぎて、まったくの別作品のように見えてしまいました。

ちなみに今日はクリスマスなので何か少しでもクリスマスっぽい作品をと思い今作を視聴しましたが、クリスマスの要素はゼロです。柄にもないことはするもんじゃないですね。

流石に本家に寄せすぎですね笑(Amazon.co.jpより引用)

『ホームアローン×ゴーストバスターズ』のようなあからさまな予告やあらすじ、上記のジャケ写から見るにどう考えてもコメディテイストの作品だと思って見てしまいます。

にも関わらず後半からまったく別のテイストに振り切っているので視聴者も戸惑ってしまいます。もう少し宣伝の時点から後半の匂わせと言いますか、「一筋縄でいかない映画ですよ」という引っかかりがあった方が良いと思います。

また、私個人としては作品にもよりますがバッドエンドよりかはハッピーエンドの方が好きです。子供たちが勇気を出して悪霊に立ち向かう系のホラーならばなおさらです。そういう意味では「ドラキュリアン」なんかは相当私好みの仕上がりでした。

逆に今作同様に前半はコメディ展開なのにラストは最悪の結末を迎える構成になっている「サマー・オブ・84」(’17)という作品は、楽しかった日常に徐々に不穏な空気が侵食していく流れが非常に丁寧かつ、後半から仲間たちがどんど殺されてしまうため、オチも「まぁそうなっても仕方がないな」と納得できます。もちろん嫌な気持ちにはなりますが笑

今作に関してはもちろんつまらなくはないですし、主人公のイーライを含めどのキャラクターも個性があってとても良かったです。

ですがあまり上手いことそれぞれの心の声というか心理描写的なものが描けておらず、いまいち何を考えているのか分からなかったです。そのためシンプルなストーリーに厚みを増せていなかったように思います。

主人公のイーライ。メカオタクのイタズラ少年です。
(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

また悪霊についてもあまりバックボーンが無く、最後しか姿を見せないのであまり恐怖を感じませんでした。基本的には地下室の暖炉が火を吹いたり、ドアノブをガチャガチャしたり、停電するだけです。なもんで『主人公イーライが一人ぼっちで留守番することから来る不安で些細な物音なども霊の仕業だと思ってしまうが、実際は霊などいない』というパターンに見えかねないです。

イーライの自宅の地下室にある暖炉(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

もう少し中盤くらいから霊の存在を明確にしておく方が私は好みですし、その霊がイーライの住んでいる家と何か関係しているとか、イーライの御先祖様に因縁があるとか何かしらのフックが欲しかったです。

ただ漠然と『100年前に町を騒がせた連続殺人鬼で子供ばかりを狙う』と言われてもあまり入ってきません。バラバラにした子供を焼却炉で燃やして証拠を隠滅しており、逮捕された後は独房内で謎の焼死を遂げることから『霊となっても暖炉内に潜み、通気孔を移動して子供たちの元にやってくる』という設定も微妙に噛み合ってないというか、ストーリーを進めやすくするためのこじつけのように感じました。ことさら『イーライの住んでる家自体に何か原因がある』の方がストーリーも展開しやすい気がします。

そして今作の監督•脚本を務めたアジマル•ザヒール•アーマッド氏は2014年に「バトル•オブ•アース 闇の種族と光の戦士」(原題は「JINN」)という中二病心をくすぐる堪らない邦題のバトルファンタジー映画でデビューしており、今作が2作目の長編映画となります。

今作を見る限り、同氏の意図せぬマーケティングをされているようにも思わないでもないです。先述したように、もう少し後半の暗いテイストをほのめかす売り出し方をしたらもっと注目されててもおかしくないと思います。

何度も言いますが作品自体はそれなりに楽しめる仕上がりになっておりますので御安心ください。ただ宣伝の仕方がちょっとだけズレているというところに問題があるように感じました。作品に罪はありません。

現在アマゾンプライム、U-NEXT、Leminoにて配信中です。

少々B級感が強めですが例の暖炉もありますし、本編にも登場するサイリウムをイーライが装着しているのも芸が細かくて良いジャケ写ですね。(Amazon.co.jpより引用)

◇9歳の小学生イーライはメカオタクで友達も少なく、自身の家の地下にも現れると信じて疑わない“バーグリーの怪物”という子供の魂を集める悪霊の絵を授業で発表してクラスメイトからは失笑を買い、教師からは呆れられてしまう。そんな折、彼の話を信じる不思議な少女ヒラリーは100年前にこの町で起きた児童連続殺人事件の新聞記事を見つけてくる。なんとその犯人の名前はバーグリーで、イーライも彼の唯一の友人サムもいよいよ地下室には近づけなくなってしまう。しかしその晩、両親は外出し、喧嘩中の姉はイーライからスマホもトランシーバーも奪って恋人とデートに出かけてしまう。誰とも連絡が取れず一人ぼっちになったイーライは勇気を振り絞って地下に潜む悪霊退治に乗り出すのだった。

というのが今作の細かめのあらすじです。

イーライ(右)と超絶友達思いのサム(左)(Amazon.co.jpより引用)

イーライが割と序盤の方から『手作りメカで姉•エミリーのメイクする様子を盗撮してそれをYouTubeにアップする』などかなりエグいイタズラをしたりと「ホームアローン」の過激版のような感じで、ますます今後のコメディ展開を予想してしまいます。

実際このあたりのイーライやサムのほのぼのしたやり取りやお化けを本気で怖がったりするシーンはとても可愛らしく、このままの感じで最後まで進んで欲しかったなとも思いました。

謎が残るスピリチュアル少女ヒラリー。もう少し彼女をストーリーに上手いこと絡められたら、より面白くなった気がします。(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

この導入はすごく良かったんですけども、肝心のホラー部分の入りが少々雑でした。イーライが地下室の怪奇現象から「お化けがいるのかも」となるのは分かるんですけども、そこから「僕の家には“バーグリーの怪物”がいます」となるのは飛び過ぎだと思います。

またイーライのことが大好きなスピリチュアル少女のヒラリーが偶然古い新聞を発見して、「あなたの言ってたことは本当だったのよ。バーグリーは実在したの」とイーライに言いに来るのも都合が良すぎるように感じました。

もうすでにこの時点で『イーライはバーグリーの怪物に狙われており、霊感が強いヒラリーはバーグリーに操られるがままにバーグリーの存在を彼に伝える役割を担わされていた』とも考えられますが、そこまで計算されているのかは定かではないです。

マジで本当に良い奴すぎるサム(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

ヒラリーからそんな話を聞いたもんだから「いよいよ家の地下室ヤバいかも」となったうえに、地下室に変な穴が出現して石が吸い込まれるところを目撃したことでイーライもサムも地下室に近づけなくなります。

その晩、イーライの両親は食事に行くため外出しますが、イーライのためにシッター(姉の彼氏•ドミニク)を呼びます。しかし動画をアップされた件で未だにブチギレていた姉•エミリーはイーライからスマホを奪い、さらには彼が地下室を怖がっているのを知りながらサムとの連絡に用いるトランシーバーを地下室に放り投げて、ドミニクとデートに出かけてしまいます。

誰とも連絡が取れなくなり、一人ぼっちとなってしまったイーライは頻発する怪奇現象に怯えながらも勇気を振り絞って地下室に向かいます。

※ここから大きなネタバレを含みますのでお気をつけください。

https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用

イーライは地下室で棚から落下して頭を強く打って気絶するもなんとかトランシーバーを奪取。その後はサムに助けを求めたり、懐中電灯やサイリウムをフル装備して再度地下室に向かったりとバーグリーとの対決パートに突入します。

正直なところ、このあたりが非常にテンポが悪く、あんまり話が進まないなぁと思ってしまいました。悪くはないんですけどいまいちイーライの行動目的が分からず、やっつけたいのか逃げたいのかが不明瞭でした。また霊のバーグリーも姿を見せずに“暖炉の火を強くする”とか“停電させる”とか“ドアノブをガチャガチャする”みたいなショボめの怪奇現象しか起こさないので対決感がまったくありません。

その後、どうやらヒラリーは何かに感づいたらしくイーライの意識に訴えかけたり、サムも胸騒ぎがして警察に通報しますが、最後の最後にイーライはバーグリーに取り込まれてしまいます。

イーライの手作りロボ(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

警察が到着した時には残念ながらイーライは既に死亡しており、さらにはなんとすでに死後3時間は経過しているということが明らかになります。

地下室の棚から落下して頭を強く打った際に彼は生死をさまよっており、その後のシーンは全て彼の魂が家の中を彷徨いながらバーグリーと戦っていたというわけです。だから突然現れたヒラリーが「その家は危ない」と彼に忠告したのも、言うなれば精神世界でのやり取りだったことが分かります。サムがトランシーバーでイーライとやり取りをしたのは事実ですが、イーライの声が聞き取りづらかったり、途中で連絡が途絶えてしまったのも彼が魂の状態だったからでしょう。

サムがトランシーバーで直前までイーライと連絡を取り合っていたという証言を警察が信じることはありませんでしたが、保護されてパトカーに乗せられた彼が握りしめていたトランシーバーからはイーライの「助けて」というか細い声が聞こえてくる。

というところで物語は幕を閉じます。

間違ってはないですけど、この終わり方でこの予告はやっぱりちょっと違うような気がします。(https://youtu.be/E8UrwWoH94U?si=Uwtt7AjMQ4aeqQG2より引用)

姉のエミリーが本当にただの嫌な姉のままですし、両親も両親で子供たち置いて2人で食事に行くなよ等と色々とツッコミたくなります。また、根本を覆すようで本当に申し訳ないんですけど、この感じならやっぱりコメディテイストで最後までやって欲しかったです。

『サムやヒラリー、さらにはなんだかんだでエミリーやドミニクも巻き込んでみんなで悪霊を退治する』という王道の展開の方がウケは良い気がします。もちろんオリジナリティのある今作のテイストも嫌いじゃないんですけど所々中途半端な感じが否めませんでした。

あと余談ですが今作の原題は「My Soul to keep」で、かなり本編のオチを匂わせている素晴らしいタイトルです。邦題の「ゴーストホーム•アローン」も嫌いじゃないんですけど、どうしても本家を思い出してしまい、実際の本編とかけ離れているように思います。

また今作はエンディングが8分程と少々長めです。ですが昨日視聴した「ジュラシック•シャーク」の方が13分と遥かに長かったです。

これ以上に長いエンディングと出会えるかも今後注目して見ていきたいと思います。

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