ババアの恨みは末代まで!怒涛のクライマックスに情緒がバグり散らかす鬱々民間伝承スリラー「イビルアイ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(727日目)
「イビルアイ」(2022)
アイザック・エスバン監督
◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
都会に住む13歳の少女ナラは、奇妙な病気にかかった妹の療養のため、家族とともに母の田舎であるラスアニマスという村にやってくる。そこには年老いた祖母がひとりで暮らしていた。祖母と過ごすうちに次第に不穏な空気が漂い始め、ナラは祖母の不可解な行動から、彼女が人間ではない何者かであると疑い始める。妹の容体はさらに悪くなっていき、家政婦の突然死など不吉なことが続き、村と祖母に隠された秘密が徐々に明らかになっていく。(映画.comより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『原因不明の病に倒れた次女の療養のため、母親の田舎へとやって来た一家。祖母が1人で暮らすその屋敷で娘たちを襲う恐ろしい現象の数々。祖母は本当に人間なのか…この村はどこかおかしい…』という、呪いや怨恨を民間伝承と上手く融合させたメキシコ発のじめじめスリラーです。
後半にかけての怒涛の伏線回収と後味最悪のラストは目を見張るものがあり、かなり見応えがありました。また、エンディングを除くと96分くらいと尺が100分を切っているのが個人的にはちょうど良かったです。じめじめ系は2時間越えるとやっぱり疲れますので…
今作は先日視聴させていただいた「パラドクス」(’14)で監督•脚本を務めた“メキシコの鬼才”アイザック・エスバン氏の最新作となります。
この監督の作品はかなりクセがあり、特に長編映画監督•脚本デビュー作である「パラドクス」(’14)は監督の思想みたいなものがこれでもかと詰め込まれているうえ、一瞬でも気を抜くと何のことだか分からなくなる中々に難しい内容となっています。
個人的には考察が捗るし、相当面白かったんですけど、次作の「ダークレイン」(’15)はこの企画の大分初期に見たこともあり、私の経験値が足りなかったため何のこっちゃで終わりました。
なもんでまだ今のところエスバン監督作品にはそこまでハマっていないので、「今作はどんな感じなんだろう?」という感じで必要以上に身構えて恐る恐る視聴させてもらいました。
そんな感じで姿勢を正して視聴したわけなんですけども、終盤までは案外普通と言いますか、『ババアがなんだか怪しいので、主人公がその正体を突き止めようと色々探ってたら恐ろしい真実に辿り着く』という、ともすればそこまで流行らないB級ホラー映画にありがちな展開が続きます。
別にそれがつまらないとかではないんですけども、良い意味でも悪い意味でもエスバン節が全然効いていないように思いました。なんですけども、それすらもエスバン監督の作戦の内だったのかもしれません。最後の最後に一気にギアを上げて視聴者の情緒を掻き乱し、そこからの最悪過ぎるラストに突入する流れはこれぞエスバン監督!と叫びたくなるほどの出色の出来でした。
「パラドクス」の記事を上げた際に、いつも私の記事を読んでくださっているマグ様から「この監督の作品は徐々に見やすくなっているけど、初期の方が好きだった」とコメントをしていただいたんですけども、私もまったくもって同意見です。
マグさんは音楽だけでなく、文学、漫画、映画等様々なジャンルに精通している御方なので、どれか一つでも好きなジャンルがお有りの方はフォローすることをオススメします!
もちろん今作の方が見やすいし分かりやすいんですけど、「パラドクス」みたいにちんぷんかんぷんに尖り散らかして、分かるヤツだけついて来いのスタンスの方が良かった気がします。
現在アマゾンプライム、Lemino、WOWOWにて配信中です。
※アマゾンプライムだと字幕が出るのが遅く、セリフを言い終わった後に出るので非常に見づらいです。そのため今回はしゃあなしで吹き替えで見たんですけども、主人公ナラの吹き替えをホラー映画大好き声優の野水伊織さんが担当されていらっしゃったのでなんだったら吹き替えもオススメです!
◇都会に暮らすとある一家。13歳のナラは思春期真っ只中でスマホをイジってばかり。そんな折、原因不明の病気に罹った妹•ルナは日に日に容体が悪化していく。父•ウィリアムは入院させたほうが良いのではと主張するも、母•レベッカは自身の田舎で療養させるべきだと押し切り、一家はレベッカの故郷である不気味な村•ラスアニマスへと赴く。出迎えたのはレベッカの母•ホセファと使用人のアビゲイルとペドロ。着いて早々両親は理由も言わず屋敷を後にし、姉妹は取り残されてしまう。アビゲイルから魔女と三姉妹の話を聞いたナラはホセファの常軌を逸した行動の数々から自身の祖母が魔女ではないかと疑い始める…
というのが今作の導入から中盤までの細かめの内容です。
兎にも角にもこのどう考えても怪し過ぎるババア•ホセファを語らずにこの作品は語れません。屋敷内でもなぜかサングラスを掛けているパワハラモラハラ常習犯のクソババアでまぁ終始ずっと怪しいです。ここまで怪しいと大体の場合は『実はババアは良い人で、逆に優しかったアビゲイルが悪者だった』みたいなパターンが定石なんですけども、今作はちゃんとストレートにババアが悪者です。
しかし、ここから「ホセファだけが悪者でした、魔女でした」というシンプルなところに着地はせず、「マジで?そいつも!?」としっかり視聴者を驚かせてくれます。こういう憎い演出が堪りませんね。
※今作はネタバレをしてしまうと面白さが半減するかもなので近々視聴予定の方は視聴後に読まれた方が良いかもです。以降は後半パートを中心にがっつりネタバレしていきます。
まず物語の冒頭やアビゲイルから語られる昔話がありまして、
というお話なんですけども、これがかなり昔の話かと思いきや実は全然最近の話だったことが明らかになります。
実はこの三つ子の三姉妹の長女が何を隠そう主人公ナラとルナの母であるレベッカで、ホセファこそが魔女の道を拒んだ次女だったのです。
魔女の道を選んだレベッカは永遠の若さを手にし、結婚、そして2人の子宝(ナラとルナ)に恵まれます。しかし、若さを保つためには子供の生き血を吸う必要があり、彼女は同じマンションの子供たちの生き血を夜な夜なこっそり吸っていたわけです。そのためナラたちが暮らすマンションの子供たちが原因不明の体調不良に見舞われていたのは全てレベッカのせいでした。
なもんで「実はジョセファは悪くない」というのは一概に間違っていないのかもしれません。
レベッカがホセファに娘たちを預けていたのは、故郷の村で儀式を行い、バッカ(どんな願いも災いと引き換えに叶えてくれる異形の生き物)を誕生させてルナの病気を治してもらうことが目的でした。
しかしホセファもついに堪忍袋の緒が切れたのかもしれません。自身は正しい道を選んだにもかかわらず年老いて1人寂しく暮らしているのに、レベッカはいつまでも若く、ハンサムな旦那との性行為に溺れ、可愛い子供も2人いる。
ここでホセファは魔女となる道を選び、こっそりルナの生き血を吸ってしまうわけです。(※レベッカとホセファは魔女を殺害した時に呪いにかけられており、おそらく子供の生き血を吸うことで魔女の道に進むことができるんだと思われます。間違ってたらすいません)
ここで彼女らが三つ子だったという設定が生きてきます!
若返ったホセファはナラを適度に襲ったり、挑発したりと、いつか自分に復讐するように綿密に計画を立てます。そしてレベッカが儀式を終え、見事ルナの病気が回復して一家が帰宅する日、自身がレベッカになりすますことで、ナラは眠っていたレベッカをホセファだと勘違いしてそのまま殺害。ナラはその勘違いに気づかないまま、どこか違和感を感じる自分の母親(ホセファ)に促されるまま車に乗り込みます。
ここで終わらずにこのあとさらにもう一展開あるのも非常に良かったです。後味最悪なんですけど、素晴らしい締め方でした。
めちゃくちゃ面白かったんですけども、ホセファの屋敷の使用人であるアビゲイルとペドロの存在がやや中途半端に感じました。存在意義はあるんですけど、もう少しストーリーに絡めても良かったと思います。あと、せっかくじめじめテイストの作品なのにジャンプスケアが過剰で、しかもそのジャンプスケアが全然いらないところで来るのがストレスでした。
個人的になんですけど、主人公であるナラのキャラが最後までよく分かりませんでした。反抗的な態度ばかり取ると思いきや、次のシーンではルナにめちゃくちゃ優しかったり、掃除が終わっていない季節はずれのプールにしきりに入りたがったり、情緒がよく分かりません。
正直なところ、ホセファとレベッカ以外のキャラにはあまり魅力を感じなかったので、なんだったらホセファ視点のストーリーとかにしても面白くなったようにも思いました。
多少謎が残る所や「結局どういうことだったんだろう」と思わせるあたりがエスバン監督作品の魅力です。これはその塩梅がちょうど良くて個人的には結構楽しめました。じめじめ系や伏線回収系のホラーがお好きな方にもオススメです。
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓