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ゾンビが蔓延るロシアで慎ましく生きる人々のドキュメント番組!と思えば楽しめるかもしれない…謎の地味ゾンビ映画「リパブリックZ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(783日目)

「リパブリックZ」(2018)
ステパン•ブルナシェフ監督
ナデジダ•ユムシャノワ監督

◆あらすじ
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舞台はシベリアの森の奥。“病人”とも“化け物”とも呼ばれるゾンビが大量発生した世界。2人の男は要塞化した小屋に立てこもり、冬になると凍結したゾンビの首を切り落としていた。だが、春になるとゾンビは解凍し人間を襲いに来る。ある日、大量発生したゾンビに襲われ2人は車で小屋から逃げ出す。行くあてのない逃避行の始まりだった。旅の途中で射撃が得意な女性ドラや謎の老人ニキフォルと知り合い、ワクチン開発中の科学者のいる街へ向かう!果たして彼らは世界を救えるのか!?(Amazon.co.jpより引用)
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『ゾンビが蔓延る世界。シベリアの森の奥でゾンビの急襲を受けた主人公たちのあてのない冒険が今、始まる…』

という、どこかで見たことがあるような設定の王道のゾンビパニック映画ながら、舞台となるのが広大なロシアのシベリアだったり、出演者がアジア系ロシア人ばかりという謎のキャスティングかつ、びっくりするくらいに盛り上がりを見せない激ショボなストーリーが逆に面白かったです。

https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用

この“盛り上がりの無さ”をどう取るかなんですけど、

確かにゾンビパニックものの映画として見た場合は平板かつ起承転結もぼやっとした今作の構成やストーリーはあまりよろしくないのかもしれません。

なんですけども、その何も起きないシーンを登場人物たちの日常だと思って見ると『ゾンビが蔓延る世界で生き延びている人達に密着したドキュメント番組』にも思えてきます。

https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用

だとすれば別に何か大事件が起きなくてもいいですし、会話がつまんなかったり、無駄なやり取りが多かろうが、登場人物一人一人のパンチが弱く、華も無く、印象に残らなくても成立はすると思います。

“ザ・ノンフィクションのハズレ回”だというていで見ればそれなりに楽しめるかもしれません。
「ゾンビがいる世界に生きる人達に密着」という、どう考えても撮れ高しかない回がハズレって大分よくないですけど…

余談ですが、ちょっと前に放送されたザ・ノンフィクションのお笑い芸人•ガッポリ建設の小堀さんの回「クズ芸人の生きる道 ~57歳 婚活始めます~」は最高でしたね。世の中にはこんな救いようのないクズのダメ人間がいるのかと心が震えっぱなしでした。

https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用

それにしても一体なぜ、どのような経緯で今作は誕生したのでしょうか?

監督を務めたステパン•ブルナシェフ氏とナデジダ•ユムシャノワ氏、そして脚本を担当したアレクセイアンブロシエフ氏、御三方共に今作以外の情報は無く、お名前から見てもおそらくはロシアの方でしょうから、国内でのみ上映される映像作品を手掛けているのだと思われます。

となると今作はある程度は海外を意識したゾンビ映画なのかもしれません。アジア系ロシア人の俳優をキャスティングしているのもゾンビ映画好きが多くいる日本や韓国でも違和感なくハマるようにという意図があったとも考えられます。

広大な大地や自然の風景はとても良かったです。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

ドキュメント番組として見ればそれなりに楽しめるかもとは言ったものの、作り手側にそのような意図はおそらくなかったでしょう。シンプルに構成や脚本諸々のクオリティがあまりよろしくなく、かつ低予算であまりお金がかけられなかっただけだと察せますが、それにしてもグロ描写の完成度が低めでした。

基本的に血飛沫は後から合成で足しているだけですし、銃の発砲音などはZ級サメ映画と双璧をなすほどにショボいです。アクションもぬるく、全然ゾンビから逃げ切れてしまいますし、緊張感も皆無です。

https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用

なんですけども、今作に登場するゾンビのクオリティはそれなりに高いです。なぜ黒いのかは分かりませんがビジュアルも良いですし、数もそこそこいます。しかもロシアだからなのか今作のゾンビは冬になると凍結します。

なもんで主人公たちは春先までに少しでもその数を減らそうと、凍結したゾンビの首を撥ねるために本格的な冬シーズンの到来を今か今かと待っているんですけども、このあたりのおバカっぽいところを活かせばもっと面白くなったのではないでしょうか。

ビヨッケ(左)とメッテ(右)(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

序盤は割とコメディテイストで、主人公の似たようなぽっちゃりオジサン二人組(ビヨッケとメッテ)のドタバタ劇が結構面白く、「トイレを執拗にノックしてくるから怒ってドアを開けたらゾンビだった」とか「ビヨッケが誤ってメッテの足を撃ってしまう」とか「逃走時にライフルを置き忘れちゃう」等など

くだらないけど良い感じのテンポ感で見ていられます。なんですけどもゾンビの急襲を受けた2人が車で逃走してからは先述したように盛り上がりに欠けてしまい、明らかに尻すぼみのまま終わってしまいました。

予告映像にゾンビがほとんど登場しないのがなんだか勿体なかったです。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

これは私の好みなのでもちろん正解でも何でもありませんが、最後までコメディテイストで走り抜けるか、いっそのこと本当にモキュメンタリー風にして「冬になったら凍結したゾンビの首を撥ねる作業に入るんですよ」みたいな感じで、『ゾンビがいるのがもう当たり前になっているロシアで生きるおっさんたちの日常』を軸に、そこに何らかのトラブルが発生して〜みたいな感じにしたら新感覚のゾンビ映画ができるのかもしれません。

いずれにせよ今のままだとかなり中途半端で、あまり印象には残らないと思います。

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これ以上ないくらいにB級が漂ってますね。(Amazon.co.jpより引用)

◇アメリカの奇妙な実験のせいで謎のウイルスが蔓延。今や世界はゾンビの大量発生により文明はとうに崩壊していた。シベリアの森の奥でひっそりと暮らすビヨッケとメッテは冬になればゾンビは動かなくなるからと冬シーズンの到来を今か今かと待っていた。しかしそんな彼らの元に大勢のゾンビが急襲。ビヨッケが誤ってメッテの足を撃ってしまったこともあり、2人は逃走を余儀なくされる。道中で美しいスナイパー•ドラと出会った2人は共に避難所を目指すも、彼らが道すがら偶然救ったヘンテコ老人•ニキフォルにヤクーツクにワクチンを開発しているセミョン博士がいることを教えられる。一行は命がけでセミョン博士の元へと向かう。果たして彼らを待ち受ける運命とは…

というのが今作の細かめのあらすじです。

こういう荒廃した感じとか雰囲気はすごく良かったです。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

先述したように序盤はシベリアの森の奥深くでひっそりと暮らしている冴えない小太りオジサン二人組のビヨッケとメッテのもとにゾンビが急襲。誤ってビヨッケがメッテの足を撃ってしまったこともあり、車で逃走を図ります。

その後、おそらくはどこかの無人の集落なのか、村っぽいところで休息していた二人。しかし、負傷した足から菌が入ったのか、メッテは高熱にうなされあたりを彷徨い、たまたまその村に居合わせたドラはそんなメッテをゾンビと勘違いして肩を撃ち抜いてしまいます。

メッテはまだ何もしていないのにもうすでに満身創痍となります。

ドラ(ジャケ写)(Amazon.co.jpより引用)
ドラ(本編)
別に何とは言いません。おそらくは角度とか光のあたり具合で別人に見えるだけでしょう。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

その後、2人のせいで死にかけのメッテのためにビヨッケとドラで廃病院みたいなところに赴き、ゾンビの群れを掻い潜りながら薬を手に入れたり、紅一点のドラが仲間に加わったことでおっさん2人が舞い上がり、「オレに気があるな」、「いやいや!オレに惚れてんだよ!」みたいな茶番もありつつ、ドラの知っている避難所へと向かいます。

ビヨッケ(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)
メッテ(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

すると今度はゾンビに襲われている爺さんを発見したので助けたところ、ニキフォルと名乗るその爺さんはゾンビに自転車を漕がせて自家発電をする賢いのかトンチキなのかよく分からない奇天烈爺さんで、彼からヤクーツクにセミョンというワクチンを研究している博士がいるということを教えてもらい、四人は一路ヤクーツクへと向かいます。

ニキフォル(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

この後、出発してすぐにゾンビの群れと遭遇し、ビヨッケたちを守るためにニキフォルが犠牲となります。本当に「ワクチンを作っている博士がいるよ」という情報を伝えるためだけに用意されたキャラでした。勿体ないですね。

ここでドラとメッテは「やっぱ避難所に行った方がよくね?」とグラつきますが、頑固なビヨッケは「やっぱワクチンっしょ!」と意見が別れ、一度は袂を分かつ3人でしたが、またなんやかんやあってすぐに合流し、結局3人でヤクーツクのセミョン博士のもとを訪ねます。

即退場するニキフォル(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

やっとこそセミョン博士の研究所に到着するも、残念ながら彼はすでに死亡しており、遺言として用意してあった動画には「自分を被験者にして実験したけどダメでした…」というなんとも情けないコメントが…

するとゾンビ化したセミョン博士が突如襲いかかってきて、一瞬の隙を突かれたドラが噛まれてしまいます。それまでクールで頼もしかったドラが「ダメだ!絶対感染したわ!終わりだ!死ぬわ!」とテンパり散らかしますが、ここでついにメッテの見せ場が訪れます。

なんと彼はビヨッケに誤って足を撃たれた時、ゾンビの血が足の傷口やら口から入っているにも関わらずなぜか自分が感染していないことに気づきます。つまり「俺は元々抗体を持っている特異体質だ!俺の血をドラに輸血すれば助かるかも!」と気づきます。

寒いからなのかゾンビの動きは遅めなので全然逃げられます。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

と、それまでずっと鈍くさかったメッテのひらめきと覚醒によってゾンビの大群が襲いかかる中、ドラに輸血をしながら3人は慌てて逃走します。そして森の暗がりで息を潜めていた3人が翌朝外に出てみると、ついに本格的な冬到来!ゾンビは全員カチコチに!さらにはタイミング良く救助のヘリまでやってきます。

こうして物語は幕を閉じますが、おそらくこの後はメッテの血液からワクチンが作られて、世界に平和が訪れるという感じなんじゃないでしょうか。

この画角かっこいいですね。(https://youtu.be/oOupiHRZ11g?si=My36nqmJXdytwOIfより引用)

こうして書いてみても思うんですけど、ストーリーがめちゃめちゃ一本道なんですよね。かつ、彼ら以外の生存者も登場しませんし、数少ない登場人物もみんなバックボーンがほぼほぼ皆無で、魅力があまり感じられません。なんかもう少し『どう見せたいのか、何を伝えたいのか』が明確だと良かったかもです。

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