格差社会を描いたセンセーショナルなデスムービー!暴力の先に答えはあるのか…「プラットフォーム」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(607日目)
「プラットフォーム」(2019)
ガルダー•ガステル=ウルティア監督
◆あらすじ
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ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が"プラットフォーム"と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!果たして、彼は生きてここから出られるのか!?(Filmarksより引用)
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スペイン発のSFスリラーで今年続編が公開予定です。社会風刺が効いており、個人的にはかなり面白かったです。
今回はちょっと設定説明が多目になってしまいましたが最後までお付き合いいただければと思います。
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まずはこの謎の施設についての基本設定をご紹介します。
•部屋の真ん中に穴があり、同じような部屋が上にも下にも無数に存在する謎の施設『穴』
•1層から200層まであるとされていた。
•中央の穴からは上から下へと豪華な料理が大量に用意された台座が昇降し、決まった時間(おそらく1〜2分)だけ食事を取ることができる。しかし上の階層から順に食べていくため、下の階層に行くにつれて残飯を食べることになり、さらに下の階層までいくとその残飯すらも行き渡らない。
•各部屋の定員は2人で、それぞれベッドと水道は用意されている。
•食料を確保して後から食べようとした場合はその食料を捨てない限り、部屋の温度が死ぬまで上がるか下がるかしてしまう。
•一ヶ月経過するとランダムで別の階層に移される。ものすごい下の階層に行く場合もあれば、逆も然りで一桁の階層に行くこともある。どういったルールで変動するのかは明かされていない。
•この施設には主人公•ゴレンのように何らかの理由で自ら入る者もいれば、トリマカシのように強制的に入れられる者もいる。施設に入る際は何か一つだけ物品を持ち込める。(例:ゴレンは小説、トリマカシは包丁、イモギリはペットの犬)
•決められた期間を過ごせば認定証が発行され、出ることができる。期間は人によって異なるがゴレンは半年らしい。
•台座に乗ることで下の階層に行くことは可能。逆に上の階層の者と協力して上がることも可能。
•16歳以下の者はこの施設に入ることはできない。
といった感じでしょうか。
主人公のゴレンがトリマカシの次に同室となるイモギリ(以前はこの施設の職員を務めていた)から聞くところによると、台座に用意された料理は0層(おそらくは超富裕層のこと)のシェフたちが腕によりをかけたもので、各々が一人前ずつを食べれば最下層まで料理が行き渡るようになっています。
ですが、多くの者が欲張っておなかいっぱいになるまで食べてしまうため、食料が行き渡らない下層でら同室の者を殺害して食べるなど食人行為が起きてしまいます。「今は上層にいても来月は下層に行くかもしれない」、「食べられる時に食べておきたい」と欲が出て、ほとんどの者が他者(自分たちよりも下層の人達)を思いやることはありません。中にはトリマカシのように料理に唾を引っ掛けたりする者もいます。
バハラトのようにロープを持ち込んで、上層の人間に協力を仰げば上層に上がることは可能です。しかしほとんどの人間は先述したように「自分たちさえ良ければ」という思考なので、ロープで登ってきたバハラトの顔面に糞便をするという卑劣極まりない行為も厭いません。
ゴレンと2人目の同室者であるイモギリが33層に移動した際、下の階層の人に対して「余分に食べないで。取り分けた分だけを食べて欲しい。下の階層の人達のことも考えて!」と毎日訴えかけるも、耳を傾ける者は一人もおらず、見かねたゴレンが「従わなきゃ料理に糞をぶっかけるぞ!」と脅迫することでなんとか従わせることに成功しましたがどこまでそれを守ってくれたかは定かではありません。しかもイモギリ曰くこの施設の最下層は200層でしたが、翌月にゴレンとイモギリは202層に移動し、さらにはもっと下まであることが発覚します。
つまりどれだけみんながルールを守って食料をやりくりしたとしても、最下層まで行き渡ることは端から不可能だったことが明らかになります。イモギリの自死もあり一人で最下層で死肉を貪りながら生き延びたゴレンは翌月に3人目の同室者•バハラトとともに6階層というかなり恵まれた階層に移動します。
ここでゴレンは贅沢を貪ろうとしたバハラトを窘めて、台座に乗って食料を分け与えていきながら最下層へと行き、そのまま台座ごと上層に上がって自分たちの思いを0層の人々に伝えようと計画します。
ここで食料を奪われないように、自分たちの身を守るために、武装をしたゴレンたちは武力によって統制し、下層に行く中でそれに従わない者を何人も殺していきます。
自分たちも致命傷を負い命も絶え絶えの中、辿り着いたのは最下層となる333層。そこにはいるはずのない一人の子供。ゴレンたちは死守し続けたパンナコッタをその子に与え、自分たちの代わりに台座に乗せたその子が上層へと上がっていくのを見届けるところで物語は幕を閉じます。
そんな中々にメッセージ性の強い今作でしたが、おそらくは「資本主義や格差社会に対する風刺」を描いているのではないでしょうか。
贅沢を貪り続ける上層、それなりに生きていける中層、食べるものにも困る下層、人を殺さなければ生きられない最下層
この貧富の差を解消できるのは上層の者だけです。実際、本編ではイモギリやゴレンなど一部の者は現状を打破しようと行動を起こしていました。
しかし現実世界において下層の人々(貧困層)に目を向ける上層(富裕層)はどれだけいるのでしょうか。自分たちは贅沢な暮らしを送ることができているのだから下層がどうなろうと知ったことではない。だからこそゴレンたちは武力を行使することで統制して共産主義的思考を押し付けていましたが、それが正解ということではないのでしょう。その暴力は自分たちに帰ってきてしまいますから。
どちらが正しいとかではないですし、綺麗事だと言われたらそれまでですが、困ってる人がいたら助け合ってほんのちょっとでも良い世の中にしていきたいですね。
最後の最後まで「この施設が何なのか」、「あの台座は何を原動力に昇降するのか」、「ゴレンはなぜ自ら施設に入ったのか」などは明らかにされませんでした。このあたりが続編で語られるのかなども注目ですね。
個人的には「CUBE」(’97)のように「それがどこなのか、何なのか、何一つ分からないけどとりあえず皆で脱出を試みる」みたいな、物語が進むに連れて少しずつ状況は明らかになるものの、結局最後の最後まで根幹自体は分からないままみたいな作品が結構好きなので、今作のテイストもかなり好みでした。
今作も「CUBE」もそうなんですけど「作り手側の中では明確な答えがあって、それをあえて描き切らない」という構成であれば、我々視聴者も分からないなりに何か得るものがあるので全然良いと思います。たまに「作り手側が何にも考えてない」という作品にも出会いますが、それはちょっとムリです笑
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