グリム童話“ヘンゼルとグレーテル”の15年後!魔女ハンターとなった二人を描く痛快アクションエンタメホラー「ヘンゼル&グレーテル」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(772日目)
「ヘンゼル&グレーテル」(2013)
トミー・ウィルコラ監督
◆あらすじ
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お菓子の家で魔女に捕らえられ、魔女をかまどに突き落として生還した兄ヘンゼルと妹グレーテル。15年後、成長した兄妹は魔女ハンターとして活躍していた。ある日、子どもの誘拐が頻発する村から事件の解決を依頼された兄妹は、黒魔女ミュリエルを追うが……(映画.comより引用)
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『お菓子の家の魔女を倒し、生還を果たした奇跡の兄妹ヘンゼルとグレーテル。その後、兄妹は旅を続けながら各地で魔女を打ち倒しており、今日もまた誘拐された子供たちを救うため、魔女たちと死闘を繰り広げるのだった!』という王道のファンタジーアクションホラーです。
この作品を見たことによって特に何かが得られるわけでもないですし、後世に語り継がれるほどの名作かと問われるとそうでもないです。
なんですけども普通に面白いです!本当にちょうどいい娯楽映画に仕上がってます!
「ヒューゴの不思議な発明」(’12)、「白雪姫と鏡の女王」(’13)、「オズ はじまりの戦い」(’13)等など、2010年代に多く作られた中世っぽい世界を舞台としたファンタジーものなんですけど、今作はその中でもアクションシーンの質が群を抜いており、なんならちょっと引くレベルです。
体術や銃火器を用いた戦闘シーンはもちろん、ボーガンやチェーンウィップ、はては時代設定ガン無視のガトリングガンなど、戦闘に用いる武器にも非常にこだわっており心が躍ります。
また今作のヴィランである魔女は美しい仮の姿と醜悪な化け物の姿を併せ持っており、いかにもな“The悪役”です。またべらぼうに俊敏で、森の中を全力疾走したり、箒で飛んでいったりと色んな一面を見せてくれますし、植物や雷を操ったり、破裂するまで虫を食べ続けるという恐ろしい魔法まで扱うため、非常に手強いです。
そんな恐ろしい魔女に武器と体術で立ち向かう主人公のヘンゼルとグレーテルがこれまたかっこいいですし、二人のファンの青年•ベンジャミンや白魔女のミーナ、心優しいトロールのエドワードなど脇役もすごく魅力的です。
CG合成、ワイヤーアクション、カメラワーク、カット割りなど、そのどれもが優秀なのでずっと見ていられますし、脚本や構成もしっかりしているため、本当に文句のつけようがありません。
強いて良くなかった点を挙げるとしたら、題材となっている「ヘンゼルとグレーテル」の要素が中盤以降であまり感じられないというところでしょうか。
『子供の頃に魔女をやっつけた兄妹がその後は魔女ハンターとして日夜活躍する』
というのは別に「ヘンゼルとグレーテル」がベースで無くてもできますし、かなりダークでハードボイルドな世界観の作品に仕上がっているので、もう少し童話本来のポップさとか可愛らしさがそのダークな世界観と上手いこと融合出来ていたらより良くなっていたのかもしれません。
あとこれは私の好みですが、アクションやグロに振り切るならもっと怒られるくらいに振り切っちゃってもよかったかもです。今のままだとキレイすぎるというか、「上手くまとまってるね」で終わってしまう気がします。
個人的には「アルプスの少女ハイジ」の不謹慎リメイク「マッド・ハイジ」(’23)くらいやりきってくれたら大絶賛してたと思います。
そして先程も申し上げましたが、今作は世界的に有名なグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」を題材にしております。
内容に関しては『森で迷子にならないようにパン屑を落としながら歩いてた兄妹。いざ帰るときにはそのパン屑が鳥に食べられてて、彷徨ってたらお菓子の家があって、魔女に捕まって、なんやかんやあって魔女を倒す』くらいのうろ覚えだったので今回Wikipediaで改めて復習してみたんですけど、これ結構エグいお話なんですね。
時代も時代ですから仕方ないんでしょうけど、食べるものに困った母親が口減らしのために夫に頼んで、兄妹を森の奥深くに置き去りにするというのは中々にパンチがありますね。
今作は割とこの原作をベースにしており、『なぜ両親はヘンゼルとグレーテルを森に置き去りにしたのか』というところを映画用のオリジナル展開にしており、これがまたかなり良い伏線となっていてすごく良かったです。
もしよかったらこちら↓から元のお話のあらすじなどもご覧になってみてください。
そして!
そんな今作の監督•脚本を務めたのは私の大好きな“ノルウェーの鬼才”トミー・ウィルコラ氏です。
雪山に封印されていたナチス兵がゾンビとなって蘇り、若者たちに襲いかかる鮮烈の長編映画デビュー作「処刑山-デッド•スノウ-」(’07)
ゾンビの腕を移植された主人公がオタクやオネエ、そしてソビエトゾンビを引き連れて、ナチスゾンビと死闘を繰り広げる続編「処刑山 ナチゾンビvsソビエトゾンビ」(’14)
この2作が私は大のお気に入りです!
設定自体は非常に馬鹿げているのに勢いと熱量が凄まじく、アクションやグロ描写も相当レベルが高いです。しかもその中に「明らかにフザケてるだろ!」と言いたくなるような遊び心満載のシーン(ゾンビの腸で戦車に給油など)が散りばめられており、最後の最後まで楽しめる愛されおバカホラー映画となっています。
両作ともにAmazonプライム、U-NEXTで視聴可能ですので、これまでタイトルで敬遠されていた方もこの機会に是非!
ちなみに今作は批評家からは「ファンタジーアドベンチャーとしても、パロディとしても失敗している」と辛口のコメントを貰っていますが、製作費5千万ドルに対して最終的な興行収入は2億2千万ドル越えと上々の客入りでした。
そのため続編の制作も検討され、ウィルコラ監督もすでに脚本を執筆し終えているそうです。しかし出演者たちのスケジュールが中々合わないらしく、製作が継続されるのかは未定のままだそうで、その後ウィルコラ監督の降板も報じられています。
これはたぶん一生作られないやつですね。
また今作は日本での劇場公開もするとかしないとか情報が何度も錯綜したうえでの公開スルーで、後にDVDとBlu-rayが販売されるにとどまりました。
なお類似作として「ヘンゼルとグレーテル」(’02)、「ヘンゼルとグレーテル おそろし森の魔女」(’13)、「ヘンゼル&グレーテル 〜呪いの森の魔女〜」(’13)、「ヘンゼルVSグレーテル 最強魔女ハンター最後の戦い」(’15)、「グレーテル&ヘンゼル」(’20)等など多くの作品がありますが、もちろん今作との繋がりはありません。
全て題材が「ヘンゼルとグレーテル」なだけです。
こちらも日本では未公開ですが映画サイトなどでも評価が高いので要チェックですね。
現在Amazonプライム、U-NEXTにて配信中です。2010年代のいかにもなアクションホラー映画ですが十分に楽しめると思います。「なんかちょっとスカッとする映画が見たいな」なんて時にはもってこいです!
◇幼い頃、お菓子の家で魔女に捕らえられて監禁されるもかまどに突き落とし、見事生還した奇跡の兄妹ヘンゼルとグレーテル。その後2人は旅を続け、各地で子供を誘拐する悪い魔女を駆逐し、いつしか魔女ハンターとして知られるようになる。ある日、兄妹はアウクスブルクで起きている子供の連続誘拐事件の解決を依頼され、さっそく調査に乗り出す。しかしその事件の首謀者である黒魔女のミュリエルと兄妹との間には深い因縁が隠されていた!
というのが今作の細かめのあらすじです。
有名な童話を題材としている時点で「どうせ大した事ないB級映画だろう」と敬遠する方もいらっしゃるかもですが、今作はB級はB級でもかなり良いB級です。
ヘンゼルとグレーテルがお菓子の家で魔女に監禁されている冒頭において『グレーテルには魔女の魔法がなぜか効かない』という気になるシーンがあります。揉み合いになっている最中なので見逃してしまうかもしれませんが、この「あれ?今のなんだったの?」という絶妙なフックを残しておくことで視聴者の意識をしっかりと掴むことに成功していますし、これがまた後半で非常に良い伏線として回収されます。
またその後は『兄妹たちは成長し、魔女ハンターとして各地で活躍している』というのをオープニングのアニメーションでささっと提示してしまうのが非常に好みでした。「ヘンゼルとグレーテルは魔女ハンターですよ!はい!じゃあ本題入ります!」という状態で始まるのは見ている側からすると非常に楽です。
ストーリー自体は非常にシンプルで、『依頼を受けた兄妹が事件を追う中で黒魔女ミュリエルとの因縁が発覚。全てを終わらせるために死闘を繰り広げる』といった感じでサクサク進みます。
そこに『白魔女のミーナとヘンゼルの恋の行方』、『心優しいトロールとグレーテルの交流』、『兄妹の母親の正体』、『グレーテルの秘められた力』等でしっかり大筋に肉付けをしており、“まとまり過ぎ”と言われるとそれまでですが相当見やすくて良かったです。
ここからガッツリネタバレになってしまい大変恐縮ですが、実は兄妹の母親は伝説の白魔女アドリアーナだったのです。
農夫と恋に落ちたアドリアーナは二人の子宝(ヘンゼルとグレーテル)にも恵まれ、山奥で平穏な生活を送っていました。その一方、黒魔女のミュリエルは強大な力(弱点の炎が効かなくなる)を得られる秘薬を作るために必要な白魔女の心臓を欲していましたが、アドリアーナには刃が立たない。そこで、その血を受け継いでいるグレーテルを狙っていました。
ミュリエルはアドリアーナの心優しい性格を見越し、町人にアドリアーナが魔女であることをリーク。大勢押し寄せた町人を相手に予想通り抵抗することなく火あぶりにされるアドリアーナ。そしてそれを止めようとした父親もあえなく殺害されてしまった。
アドリアーナの機転により、兄妹は町人たちの襲撃よりも前に父親が森の奥に匿っていたものの、父親がいなくなったあとに森を彷徨った二人はお菓子の家の魔女に捕らわれてしまった(冒頭のシーン)というわけです。
ミュリエルは一度は白魔女の心臓を手に入れ損ねるも、来るいつの日かの血の満月に向けて、12個の月の子供たち(1月から12月生まれの子供を1人ずつ、男女それぞれ6人で計12人)とグレーテルの心臓で秘薬を作り、最強の魔女になろうとしていたのです。
この真相が徐々に明らかになっていく感じがとても心地よく、なんとなくそうだろうなとは思うんですけど本当にちょうどよかったです。
真相を知り、さらにはグレーテルを攫われたヘンゼルはベンジャミンと白魔女のミーナと共に救出に向かいます。儀式を行うために集まった大勢の魔女やモンスターが秘薬の完成を今か今かと待ちわびる血の満月の夜、そこへ大量の銃火器を持って真正面から切り込むヘンゼルたちがまぁかっこいいです。
死闘は夜明けまで続き、トロールのエドワードの加勢もあり、兄妹たちが優勢となるも、ミュリエルを取り逃がしてしまう。逃げた先にはあのお菓子の家。そこで兄妹は見事復讐を果たし、また旅に出るのだった。
という終わり方は定番ですが少々物足りなく、もうちょっとなんか欲しいなと思わせます。制作側もそれを分かっているのか、エピローグとしてその後の兄妹たちをちょっと描いてくれています。
『ベンジャミンとエドワードと共に旅を続ける兄妹は砂漠地帯の魔女を相手に大立ち回りを繰り広げる』
という短いものではありますが、この最中に気持ちよくエンディングに入るため爽快感がありますし、ちょうど良い尺のエピローグでした。
個人的には『ヘンゼルがお菓子の魔女に監禁された時にお菓子を大量に食べさせられたせいで糖尿病を患っており、定期的に注射を打たなければならない』という設定は別に無くても良かった気がしましたが最後までしっかり楽しめました。オススメです!
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