元カノを救うため、雪山の神獣に立ち向かえ!中二心をくすぐる科学用語が飛び交う中国発のモンスターパニックムービー「スノー•モンスター」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(762日目)
「スノー•モンスター」(2019)
ホアン•ハ監督
◆あらすじ
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未開の地の調査のため北極圏に派遣されたシャオチンら研究員は、謎の巨大生物に襲われ消息不明に。彼女の元恋人で冒険家のイーフェイは、研究所に頼まれ捜索を開始。残された地図を頼りに古代遺跡にたどりつくと、その地下には無数の骸骨が転がっており…。(Filmarksより引用)
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『未開の氷原地帯で行方不明となった調査隊を救うため、冒険家の主人公たちが超巨大怪物に立ち向かう』という王道のB級モンスターパニック映画です。
世間ではちょうど今、全国的に今季最強の寒波が押し寄せているとも言われているようです。そう言われてみると昨日今日とかなり寒かったですね。明日以降は大分マシになるとかならないとかどっちなんでしょう。
そんな感じでせっかくだし冬っぽい、雪山とかが舞台の作品をと思って今作を視聴させていただいた次第であります。
タイトルだけ見ると、アメリカあたりのいかにもなB級映画のようですが、今作はハイクオリティな映像表現と派手なアクションに定番のある中国発の作品です。
年明け早々に中国の巨大ヘビパニック映画を2日連続で見させてもらいましたが、今作含め異常なまでにCGや特殊効果のレベルが高いです。作品のテイストや尺的におそらくそこまで予算が潤沢ではないと思いますが、なぜこんなにもクオリティが高いのでしょうか。
中国は世界に向けて作品を作っているからスポンサーがつきやすいみたいなことはチラッと小耳に挟んだことがありますがそれと関係しているのでしょうか。何か知っている方は是非ご教示いただけると嬉しいです。
ハイクオリティなCGによって描かれたスノーモンスターやスノーシャーク、そして人喰い鳥の群れ。そして定番のガンアクションや中国映画らしい素手による格闘シーンは相当見応えがありました。
同じく雪の中を泳ぐサメの脅威を描いた「スノーシャーク 悪魔のフカヒレ」(’11)に登場するサメとは天と地ほどの差があります。でも個人的には酷すぎて逆にこっち↓のほうが好きです笑
なもんで映像としてはかなり楽しめる今作ですが、正直なところストーリー自体は大分薄味で物語としてはあまり旨味が見出せませんでした。ストーリーの薄っぺらさは然ることながら、とりあえずそれっぽい科学用語などを詰め込んで状況を説明するくだりがあまり好みではありませんでした。
例えば、冒頭で『天岡R045年 北極X-36氷原』というテロップが表示されるんですけども、聞き馴染みが無い言葉ばかりですし、申し訳ないですけどあまりにも適当すぎて、この開始数秒で「あんまり良くないタイプのB級映画だな」と思ってしまいました。
“近未来かつ未開の地”であることを説明したいのであれば、別に20XX年でも良いですし、「舞台が中国の時点で北極は無いだろ」とツッコミを入れたくなるのでこれも不要だと思います。これが終始フザけ倒してるおバカ映画なら全然良いんですけど、今作のような真面目なモンスターパニック映画ならばそのあたりもちゃんとして欲しかったです。
そもそもこの『天岡R045年 北極X-36氷原』という設定がそれ以降で活かされることもないので尚の事いらなかったと思います。
また、「ここ(北極X-36氷原)のエネルギーは高い気圧を形成して大気層に衝突し、オーロラが発生しているんだ」とか「量子ゆらぎがランダムだ。そのベクトルに力が加わりトンネル効果を得たんだ」等など
度々、これでもかというほどの説明セリフで状況を丁寧に説明してくれるのは良いんですけど、ほとんどの人には意味が分からず、専門用語をただ並べているだけに思えてしまいます。
例えば、主人公たちに同行する仲間の中にコメディリリーフのおバカキャラを入れておいて、誰かがそういう小難しいことを言うたびに「俺に分かるように説明しろよ!」と怒れば、主人公のイーフェイあたりが噛み砕いて説明するという風になるのではないでしょうか。もう少し視聴者に寄り添って欲しかったです。
また登場人物の掘り下げが皆無で、一切感情移入出来ませんでした。恐ろしいほどにテンポ良く物語は進みますが、登場人物一人一人がどんな人間でどんな人生を歩んで来たのかがほとんど語られず、過去回想があるわけでもないので、終始「知らない人達が何か頑張ってるな」という感じで、視聴者を置き去りにしていました。
一応、主人公のイーフェイとヒロインのシャオチンは過去に交際しており、研究所職員のツァイを含めた3人で昔からつるんでいたことが伺えます。
ですが肝心の「なぜイーフェイは研究所を辞めたのか」、「どうしてシャオチンと別れたのか」、「なぜ今は冒険家をしているのか」などがぼやかされたままでした。
物語後半の3人が話し合うシーンにおいて「分かるだろ、おれにも色々あるんだよ」とイーフェイが言うと、ツァイもそれ以上は何も言わなくなります。でも我々視聴者には当然何のことか分からないので完全に置き去り状態ですし、「あんたがたの中だけで完結しないでくれよ…」と残念な気持ちになりました。
そのため後半で誰が命を落とそうが、誰が助かろうが、そこまでずっと視聴者を置き去りにしているため本当に申し訳ないんですけどいまいち盛り上がりませんでした。先述した通り一つ一つのシーンは映像的には十分楽しめますが、肝心の中身が無く、凄い悪い言い方になってしまいますが“外っ面だけが良い映画”だと思いました。
そんな今作の監督を務めたのはホラーから時代劇アクションまで幅広く手掛けている新進気鋭の若手クリエイターのホアン•ハ氏です。本当かどうかは定かではありませんが、ホアン氏は今作の構想に5年、脚本完成までに3年、特殊撮影に1年を費やしたそうで、その圧倒的な映像表現とエンターテイメント性が評価され、日本等での配信も決まったそうです。
現在アマゾンプライム、U-NEXTにて配信中です。アマプラではあと10日程で配信が終了するようなので気になる方はお早めにどうぞ!
◇天岡R045年9月18日。未開の地である北極X-36氷原においてホン遺伝子研究所の調査チームが謎の巨大生物に襲われ消息を絶った。チームの一人でシェン所長の大事な一人娘であるシャオチンの元恋人で現在は冒険家のイーフェイは事情を聞き、傭兵たちとともに捜索に乗り出す。残された地図を頼りに古代遺跡を訪れた彼らを待ち受けるは数万羽の人食い鳥。それを切り抜けた先に広がる氷原では雪の中を自由に泳ぐ巨大なサメ、さらには120mをゆうに超える伝説の怪物•スノーモンスターが彼らの行く手を阻む。そしてイーフェイに同行した林教授の恐ろしい計画が明らかとなり、多くの尊い命が失われてしまう。果たして、イーフェイたちは無事にシャオチンを救出することが出来るのか!?
というのが今作の細かめのあらすじです。
ヒロインのシャオチンがスノーモンスターに襲われて行方不明となる冒頭はかなりワクワクしましたが、それ以降のイーフェイ一行が氷原に辿り着くまでの展開があまりにも早すぎて、逆に視聴者に状況を飲み込む時間を与えていないように感じました。
シャオチンたちを助けたいからといって、元カレで冒険家のイーフェイに依頼しようというのも何か無理やりだなと思いましたし、ツァイに状況を説明されるやいなや出発するイーフェイがただシャオチンに未練タラタラの男に見えてしまいました。
そんなこんなでイーフェイ、ツァイ、リン教授、雇われ傭兵集団は残された地図を頼りに古代遺跡へと向かいます。「なんで氷原で行方不明となった人達を探すのに古代遺跡に行くの?」となりますが、どうやら磁場変動や量子のゆらぎの影響で時空が歪んでおり、苦労して遺跡を抜けた先には氷原が広がっています。これがトンネル効果なのでしょうか。
遺跡内での人喰い鳥の群れとの戦闘シーンはかなり迫力がありますし、音に敏感ということに即座に気づいたイーフェイが機転を利かせて窮地を脱しようとするも、誰かのスマホのアラームが鳴ってしまい、結局走って逃げる。みたいなのもアクション映画のお決まりな感じで良かったです。
遺跡を抜けた先にある氷原ではいきなりエンジンフルスロットルでスノーシャークが襲いかかってくるわ、そんなスノーシャークを片手で掴む程の超巨大怪物スノーモンスターが現れたりと、相当盛り上がります。
スノーモンスターの迫力に気圧された傭兵の一人が発砲してしまったことで、スノーモンスターの怒りを買い、追い詰められる一行。さらには雪崩に飲まれ散り散りになってしまいます。
その後、どうしてそうなったのかは分かりませんがイーフェイやツァイは原住民によって助けられ、その集落で幸運にもシャオチンと再会を果たします。
一方、雪崩を運良く免れた林教授たちでしたが、実は林教授は中東の企業と裏取り引きをしており、彼の真の目的が金のためにスノーモンスターを生け捕りにして連れて帰ることだったというのが明らかになります。
この氷原一帯の異常な磁場変動は生物の遺伝子にまで影響を与えているらしく、それによって生物は巨大化したり凶暴化しているようです。そんな生物の遺伝子はかっこうの研究対象であり、金脈というわけです。
そして、その分け前欲しさに自分に付き従う傭兵を引き連れ、林教授はスノーモンスターの捕縛に乗り出します。
原住民はスノーモンスターを神獣として崇めており、イーフェイを瞬時に取り押さえるほどの戦闘力を持つ少女•カヤの母親はスノーモンスターと意思疎通が取れるため、毎年12月3日に呼び寄せて、感謝の儀式的なことをするようです。ちなみになぜ12月3日なのかは分かりません。
イーフェイたちもスノーモンスターと心を通わせ、辺りには穏やかな空気が流れます。しかし、そこへ林教授率いる傭兵たちが現れ、誰彼かまわず射殺する蛮行に打って出ます。
イーフェイたちがこの原住民の集落を訪れた日が偶然にも12月3日ということは、シャオチンたちが行方不明になったのが9月18日なので、発見までにおよそ2ヶ月半も経過していたということになります。
おそらくは様々な方法でシャオチンたちを捜索しても見つからず、藁にも縋る思いで12月頭にイーフェイにお願いしたのかもですが、儀式の日が12月3日である必要も無いですし、そもそも◯月◯日みたいな時間経過が物語において一切必要ないので、別に無くてもいいと思うんですけどどうなんでしょう。
スノーモンスターに銃弾がほとんど効かないことを見越した林教授は特殊な超音波を出す戦闘機を呼び寄せ、スノーモンスターを行動不能にします。イーフェイたちがあれだけ苦労してやってきた氷原に戦闘機はなぜ短時間で来ることができたのでしょうか。中盤のトンネル効果とか量子のみだれの設定があまり活かされていないように感じましま。
邪魔なイーフェイたちや原住民をも皆殺しにしようとする林教授たちとの手に汗握る戦闘描写は非常に見応えがあって面白かったです。カヤの素早い身のこなしとか、ツァイやシャオチンと共闘して傭兵のボスを倒すシーンなんかも胸熱でした。
バズーカを奪い取ったイーフェイが戦闘機を破壊したことで形勢逆転。スノーモンスターの活躍もあり、林教授たちは全滅。原住民の生存者はわずかとなってしまったものの、氷原を後にするイーフェイたちを最後の最後まで名残惜しそうに見送る。
そして無事に研究所までシャオチンを送り届けたイーフェイでしたが、研究所のモニターにはワニのような謎の生物が襲来している様子が映しだされ、ここからもうひと騒動あることを示唆して物語は幕を閉じます。
おそらくは人類の開拓によって元々そこにいた生物や原住民の尊い命が奪われたという悲しい歴史に対するアンチテーゼみたいなものも込められているんだと思います。でもその原住民の存在が作中であまり活きてないので些か中途半端というか、もっと出番があってもよかったのではないでしょうか。
決してつまらなくはないんですけど、やはり映像表現の素晴らしさやアクションシーンの良さが先行してしまい、ストーリーの薄っぺらさが顕著になっているように感じました。また、見所であるスノーモンスターよりも人間同士の争いがメインとなっているのも勿体ないように思いました。派手な映像を見てスカッとしたい方にはオススメです。
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