もうこれ以上、上げて落とさないでおくれ…状況作りが天才的過ぎるサメ映画「海底47m」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(630日目)
「海底47m」(2017)
ヨハネス・ロバーツ監督
◆あらすじ
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メキシコで休暇を過ごす姉妹。ケイトはホオジロザメをひと目見ようと、“シャークケージダイビング”への参加を計画する。一方のリサは乗り気ではなかったが、ケイトに説得されて二人は沖へ出る。保護用の檻に入り、海の中を堪能しているのも束の間、水上の船とをつなぐケーブルに故障が発生し、二人は檻ごと水深47メートルの海底へ落下してしまう。ケージは壊れ、船との通信も途絶え、酸素も残り少なくなっていく。絶望的な状況の中、助けを求める彼女たちに巨大なホオジロザメが牙を剥く。(Filmarksより引用)
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『水深47mの海底にケージごと落下した姉妹。船との通信も絶たれ、酸素も残り少ない状況下、超巨大なホホジロザメが2人に襲いかかる』
という風に、“海中”という行動が制限される不自由な状況下、サメがうろつき、視界不良、通信も途絶え、酸素も残り僅か、救助も来ない、とこれでもかと最悪な条件が揃った海底からの生還を目指す姉妹を描いたパニックスリラーサメ映画です。
詳しくは後述しますが、状況を作るのが非常に上手く、脚本の妙を感じる素晴らしい作品でした。
話は少し逸れますが、私はホラー映画と同じくらいサメ映画も大好きなので、この企画でも「人も死ぬし、モンスターパニックものに分類されるだろうからサメ映画もホラー映画ってことで!」とこじつけて何作も見させてもらっております。
しかし最近はサメ映画の中でもいわゆる低予算やおバカが当てはまるアレなサメ映画を見ることが多く
と、ごらんの通り碌なサメ映画を見ておりません。
個人的にはこういうアレな作品が好きなので自分から率先して探しているところもありますし、これはこれでちゃんと面白いんですが、今作のような優等生なサメ映画を見ると、「すごい!ちゃんとしてる!サメがリアルだ!」と当たり前のことで感動してしまいます。
どちらにもそれぞれの良さがあるので、今後もお世話になると思います。
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◇彼氏と別れて傷心気味のリサは姉のケイトとメキシコで休暇を過ごしていた。少しでもリサの気が晴れればと、ケイトは知り合ったばかりの地元男性の誘いのままに海中でホホジロザメを間近で見ることが出来る“シャークケージダイビング”への参加を計画。当初リサは乗り気では無かったものの、ケイトの押しに負けて仕方なく参加する。
という導入から非常にセンスを感じました。
『恋人に一方的に別れを告げられ傷心気味のリサ』
↓
『姉の提案に流されるがまま危険な企画に参加』
の流れはとても自然ですし、『現地で知り合ったばかりの素性も知らないような男2人から提案された参加費一人100ドルのケージダイビングツアー』って絶妙に不安になるやつなんですよね。
船もボロいし、船長はその男2人の知り合いだし、挙句の果てには禁止されている撒き餌でサメをおびき寄せており、もうこの時点で「このあと絶対に悪いことが起こる」というフラグがビンビンに立っているんです。
何が起こるかはだいたい予想がつくので驚きとか意外性みたいなものはないんですけど、『来るぞ、来るぞ、ほら来た!』的な楽しさがずっと続くので個人的には最後まで心を掴まれてました。
その後は予想通り、
◇リサとケイトの入った檻と船を繋いでいるケーブルが故障、さらには鎖が切れ、二人は水深47mの海底に落下。船との通信も途絶え、酸素は残り僅か、さらには巨大なホホジロザメが2人を襲う。
と、『海中、檻の中、酸素僅か、通信できず、視界不良、サメがうろつき、助けも来ない』という最悪条件でリサとケイトがフルボッコにされます。
サメさえいなければ、通信さえ出来ればと、この上記の最悪条件のうち1個か2個くらいが解消されればなんとかなりそうなもんなのが逆にもどかしいです。船上でもなんとか二人と通信を取ろうとしたり、ダイバーに助けを要請したりと色々やってくれるんですけど、サメがいるから近づけないし、せいぜい酸素ボンベを落とすとかそういうことしか出来ないのがこれまた悔しいんです。
ホホジロザメのタックルによって檻が壊れて、海中に出ることが可能になってからは通信の電波が届くところまで浮上して状況を伝えたり、酸素ボンベを落としてもらうんですけども、いかんせんサメがうろついているのでずっと海中にいることが非常にリスキーなんです。
ちょっと通信したらまた急いで檻に戻ったり、酸素ボンベ回収しようとしたらサメに追われたりと一瞬足りとも気が抜けないですし、視界が悪いのでいつサメが襲ってくるのかが分からないのがもう本当に怖いです。急に目の前に巨大ホホジロザメが現れるシーンなんかは来るのが分かってても思わず息を飲んでしまいます。
「でも地上からたったの47mだし、隙を見て泳いで上がってくれば良くない?」と思ってしまいそうなもんですが、急に上がってしまうと※潜水病で最悪の場合死に至るため、10数m上昇したら血中の窒素を抜くために5分待機しなければならないなど、『サメがうろつく海中を無防備状態で待たなければならない』という自殺行為に等しいことをしなければならず、ならば檻ごと引き上げてもらうか、武装したダイバーが来るのを待つしかありません。
つくづく状況作りが上手いです。
あとこの作品の憎らしいのが、兎にも角にも『上げて落とす』ところです。
ようやっと救助が来たと思ったらもう既にサメに襲われて死んでいたり、予備のケーブルを繋いで浮上したのに途中で切れてまた落下したりと、とにかく視聴者を希望から絶望へと真っ逆さまに叩き落として来ます。
個人的には『命からがら海上まで浮上して船に引き上げられて無事救助されたと思ったら、それが全て窒素酔いによる幻覚だった』という終盤のシーンが血も涙も無さ過ぎてめちゃくちゃ良かったです。
船上にいるのに傷口から出た血が空中を舞っているという演出が本当にうますぎます。
登場人物などは最低限の味付けですし、サメも山程登場するわけではないんですけど先述したようなハイクオリティな脚本や映像によって相当レベルの高いサメ映画に仕上がっていると思います。
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