“愛は死なない”サイコ親子の怨念渦巻くハイテクマンションのドッペルゲンガー大騒動!「ザ・ハウス~呪縛のAIマンション~」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(780日目)
「ザ・ハウス~呪縛のAIマンション~」(2016)
クレイグ•モス監督
◆あらすじ
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1983年、クリーブランド。食肉処理場を経営していた男が警察に追われ時計塔の窓を突き破って自殺する。そして現在、アレックスはある古い建物を全面的にIoTマンションに改装し、「フェアモント・ロフト」と名付ける。彼と妻シャーロットと彼らの幼い娘ミア、ある情報機関で働くデビン、プロアイスホッケー選手ジャクソンらが同じ日に入居するが、ミアは正体不明の少年を目撃。さらにその晩、ある男性が命を落とす事件が……。(Amazon.co.jpより引用)
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『過去に凄惨な殺人事件があった場所に建てた最新鋭のマンションにて怪奇現象が頻発し、ついには死亡者が現れる。この土地に隠された恐ろしい事実とは一体何なのか!?』
という、ドッペルゲンガーを題材とした“これ以上ないくらいのザ・B級ホラー”です。
現在、いつもお世話になっているプレシディオチャンネル様の公式YouTubeにて本編がまるっと無料で公開されております。期間限定のようなので気になっている方はお早めにどうぞ!
サブタイトルの「呪縛のAIマンション」が流石にダサすぎて、私はそこに惹かれて視聴したんですけども、予想に反して構成が非常にしっかりしており、後半にかけての盛り上がりやどんでん返しもかなり良かったです。なんですけども、設定の粗がちらほら目立ち、いまひとつピンとこない感じがやはりB級でした。
ちなみにWOWOWで放送された際のサブタイトルは「呪縛の時計塔」で、DVDや配信が開始したタイミングで「呪縛のAIマンション」に変更されました。どちらにしろダサいですね笑
怖さはマイルドかつ、恐怖演出自体も少なめです。そのため、『少々ホラー要素があるミステリー映画』として見たほうが良いかもです。
内容はそれなりに面白かったんですけど、展開が遅いというか終盤までが中々盛り上がりきらず、平坦でもったりしている印象でした。また、作中のあらゆる設定がほとんど活かされておらず、非常に勿体ないというかもどかしかったです。
今作の舞台となる超最新鋭のハイテクマンションは『あらゆるシステムをAIが管理しており、しかもそれぞれの住人の生活リズムや行動から学習し、より洗練されていく』というのを前面に押し出してはいるものの、そこまでそのハイテク機能が活かされていないというか、最悪、普通のアパートでもストーリーが成立するように思いました。
“大きなスクリーンに子供が映り込む”や“勝手にモニターが付く”などのアイドリング的な怖いシーンや、そういったモニターを利用した住人同士のやり取りもあるにはあります。
なんですけども、例えば霊障によってAIが暴走してエレベーターが落下するとか、自動ドアがいきなり閉まって身体が切断されるとか、もっと魅せる恐怖にそのAIを活かして欲しかったように思いました。
あと、そもそもなんですけど“モニターというかスクリーンがすごく便利”という以外にあまり「最新鋭だ!AIだ!」と感じる要素がありませんでした。一階ロビーは広くてキレイなんですけど、住人の部屋自体はかなり普通で、そこにハイテクなモニターだけあるのが逆に浮いちゃってるというか、予算不足を露呈していました。
エレベーターに関しては手動でドアを開閉するタイプのオールドスタイルで、これもまた気になってしまいました。
また舞台となるマンションが建っている土地には過去に食肉加工工場があり、そこで凄惨な事件があったことで現在のマンション内でなんやかんやが起きるんですけども、これも食肉加工工場である必要性は感じられませんでした。
この辺りを整理して、“誰の何の話なのか”と起承転結を明確にすればもっと見やすくなるように思いました。今のままだと全体的にアンバランスで何を見せたい作品なのかが不明瞭で、後半の盛り上がりやどんでん返しを迎える前に視聴を止めてしまう方もいる気がします。
でもこういうのは好き好きだと思いますので、これはあくまでも私個人の意見です。
今作で監督を務めたクレイグ•モス氏は「41歳の童貞男」(’10)で長編映画監督デビュー。以降は「バッド・アス」(’12)、「最狂トワイライト」(’12)、「ドラゴン・タトゥーな女 in パラノーマル・アクティビティ」(’12)等など、何とは言いませんがいわゆるパロディ映画を主に手掛けているようです。
今作はAmazonプライムとLeminoにて現在配信中ですが、先述した通り、YouTubeにて無料公開中ですので気になる方はお試しで少し見てみてはいかがでしょうか。
◇1983年、クリーブランドのフェアモント食肉商会に警察が家宅捜索。密かに多くの人間を惨殺していた工場長のトマスが追い詰められるが、屋上の時計塔から愛息子ルパートを抱いて無理心中。しかしなぜかルパートは時計塔から身を投げた父親を見下ろしており、そのまま警察に保護される。そしてその様子をルパートはまだ時計塔から眺めていた…
時は流れ現在、アレックスは過去にフェアモント食肉商会があった土地にあるマンションをフルリノベーションし、AIによって管理する最新鋭のマンション“フェアモント•ロフト”に生まれ変わらせる。妻のシャーロットや娘のミアも快適な生活を満喫し、父親があの食肉工場で働いていたらしいデビンやプロホッケー選手のジャクソンなど他の住人たちも順調に新たな生活をスタートさせる。しかし彼らの身の回りでは次から次へとは怪奇現象が起こり、ミアはルパートという少年が自身につきまとうとアレックスに相談する。このマンションに隠された恐ろしい真実とは一体?そしてルパートは霊なのか、それとも…
というのが今作の細かめのあらすじです。以降はがっつりネタバレしてしまいますのでお気をつけくださいませ!
今作は基本的にはアレックスが主人公としてストーリーが展開するんですけども、いまいち彼が何もしません。このマンションで巻き起こる怪奇現象についても、娘のミアが目撃する謎の少年•ルパートの存在に関しても受け流してしまいます。
というのも今作はドッペルゲンガーを題材としておりまして、実はアレックスがルパートそのものだったんです。
ちょっと私も理解が追いつかないんですけど、父親があの食肉工場で働いていたという中年男性のデビンは父親の不審死の真相を追うためにこのマンションにやってきており、諸々調査をしていました。
そして犯人である工場長トマスはすでに死亡しており、真相解明の鍵を握るのはその息子のルパートのみ。しかし彼は警察に保護された後の記録が一切残されていない。別人としてどこかで暮らしつつ、少年のルパートはドッペルゲンガーとしてこの建物に留まっているという答えに辿り着きます。
デビンが言ったことをまとめると
ということらしいんですけど、意味分かりますかね?僕はいまいちピンと来ませんでした。
冒頭の過去のシーンで父親が自分を抱いて無理心中する未来を見たルパート(アレックス)はドッペルゲンガーを無意識に生み出し、父親は霊体の方のルパートを抱いて飛び降りたため、姿が消えてしまったというわけです。その後実体のルパートは警察に保護され、アレックスとしての人生を送り、霊体のルパートは建物に残り続けた、ということだと思います。
なんですけども、アレックスがこのあたりのことをどこまで分かっているのかが一切描かれていないため、マジで主人公として機能しません。
わかったうえでこの土地にやってきたのか、それともルパートに導かれるままにやってきてしまったのか、おそらくは後者っぽいんですけどこのあたりが非常にふわふわしていて、『なぜ彼はアレックスと名乗っているのか』とか『空白の数十年の間は何をしているのか』とかアレックスについての掘り下げがこれっぽっちもないのは如何なものかと思います。
また、そもそもルパートの狂気性や殺意がどこからやってくるものなのかも不明瞭でした。というか、父親が殺人を繰り返していた理由も分からないので、もう説明不足なことばっかりなんですけど、おそらくは殺人衝動を止めることが出来ないサイコな父親な血を引いているとかそういう感じじゃないでしょうか。
物語終盤では正気を失ったアレックスが住人を次々と殺害し、ついには娘のミアと共に無理心中を図ろうとします。ルパート(ドッペルゲンガー)との再結合が目的じゃなかったの?とは思いましたが、もう説明不足だらけなのでもう気にしないことにしました。
しかしミアもあの時のルパートと同じようにアレックスが自身を抱いて無理心中する未来を見たことでそれを回避し、アレックスは代わりにルパートを抱きしめて時計塔から身を投げ、再結合して命を絶ちます。
ようやく騒動は収束したかと思いきや、ミアもあの時に無意識にドッペルゲンガーを生み出しており、警察に保護された彼女が時計塔を見上げると、そこにはミアが不敵な笑みを浮かべて自分を見下ろしていた…
というところで物語は幕を閉じます。
このオチは凄い好きだったんですけど、如何せんそこに至るまでの過程で説明を省き過ぎており、「これどういうことだったの?」のオンパレードでした。あまり深く考えずに見た方が良いかもしれません。私は考え過ぎて疲れたので、明日はどうしようもない作品を見たいと思います。
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