未来永劫語り継がれるべき青春ホラーの金字塔!息をするのも忘れるほどの衝撃のクライマックスに開いた口が塞がらない…「キャリー」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(760日目)
「キャリー」(1976)
ブライアン・デ・パルマ監督
◆あらすじ
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狂信的な母親のもとで育てられ、学校でも日常的にいじめを受けている少女キャリーは初潮を迎えて動揺するが、生理現象は汚れの象徴だと母親に罵られる。しかし、その日を境にキャリーは念じることで物を動かせる超能力に目覚めていく。一方、いじめっ子たちは陰惨な嫌がらせを思いつき、高校最後のプロムパーティの場でキャリーを陥れるが、怒りを爆発させたキャリーの超能力が惨劇を招く。(映画.comより引用)
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『狂信的な母親に育てられ、学校でもいじめを受けている気弱な少女•キャリー。彼女はあることがきっかけで超能力に目覚めるが、その力は怒りによって暴走し、惨劇を招くことになる』という、もはや説明不要の青春ホラーの金字塔です。
原作は私の企画でも常連の“ホラーの帝王”スティーヴン・キング氏による同名小説で、なんとこの「キャリー」が同氏の記念すべき長編デビュー作となっております。
狂信的な母親からの信仰という名の虐待、学校での壮絶ないじめ。怒りや恐怖など激しい心の動きに呼応するかのように強さを増す超能力の目覚め。成長と変化を阻害する母親からの脱却、そしてパーティーの惨劇、超能力の暴走。
ホラー映画としてもうこれ以上無い完璧な内容であるとともに、ごく普通の学生たちのありふれた日常や恋そして駆け引きなど、ティーンズ映画としてもずば抜けたクオリティを誇ります。
何だったらホラー描写よりもそういった日常パートの方が比率としては多いんですけども、どちらも爆裂に印象に残るシーンばかりでずっと面白いです。
実際、今作は1977年のアカデミー賞において、主人公キャリー役のシシー•スペイセク氏は主演女優賞に、母親役のパイパー•ローリー氏は助演女優賞にノミネートされております。
それまでのホラー映画は基本的には低予算のインディーズ、アングラ感がまだ残っており、いわゆる商業映画よりも低く見られていたため、そんなホラー映画が賞に選ばれること自体が異例中の異例だったそうです。
本当に今までこの作品を見ていなかったことを心の底から後悔するレベルの傑作でした。ここまで良すぎると感想を書くことすら野暮なのかもしれません…
ちなみにそんな今作は1999年に続編となる「キャリー2」、2002年と2013年には今作のリメイク作が発表されております。2013年の方はクロエ・グレース・モレッツ氏が主演ということもあり、かなり評判になりましたが批評家からの評価はあまり芳しくありませんでした。
私もこの企画の初期の頃に視聴しましたが、良い意味でも悪い意味でも今風というか、全然面白いんですけども、オリジナル版を見た後だと正直物足りないと思います。なもんでもし「キャリー」を視聴す
る際は先にリメイク版を見たほうが良いかもです。
また、続編の「キャリー2」と2002年のリメイク版はあまりヒットしなかったため現在もサブスクなどには無く、視聴するのが難しいようです。どうにかしていつか視聴したいと思います。
「キャリー2」に関しては絶対に蛇足で野暮な内容だと思うので逆に楽しみです。
そして、今作の監督を務めたブライアン・デ・パルマ氏はニューヨークのインディーズ映画業界で実力を発揮し、1970年頃に満を持してハリウッドに進出。しかし、初の商業映画「Get to Know Your Rabbit(汝のウサギを知れ)」(’72)は作中のウサギを切り刻むシーンにワーナー・ブラザースが難色を示し、撮影中に解雇。さらには同氏に無断で再編集を加えられた上に2年間もお蔵入りされるという洗礼を浴びて出鼻を挫かれ、ニューヨークに戻ります。
しかしその後、ニューヨークで再帰を図った「悪魔のシスター」(’72)、「ファントム・オブ・パラダイス」(’74)が立て続けに若者の心を掴み、カルト映画として批評家からも高評価を受けて再びハリウッドに返り咲きます。そして手掛けたのが今作「キャリー」です。
「キャリー」のキャスティングに関しては、なんとジョージ•ルーカス監督の「スター・ウォーズ」との合同オーディションだったそうです。
“そこまでキャリアの無い若い俳優たちをたくさん見たい”という意見が一致したことで合同オーディションになったそうですが、現場ではルーカス監督が俳優たちに質問をしまくり、パルマ監督は後ろの方に座って黙ったままだったそうです。
余談ですが、キャリー役のシシー・スペイセク氏はキャリー役以外は絶対にやらないと言い切るほどにキャリーを演じることを熱望しておりましたが、パルマ監督の描いていたイメージとは合わなかったのかあまりハマっておらず、逆に「スター・ウォーズ」のレイア姫役の候補に挙げられていたそうです。
しかしその後、彼女の圧倒的な熱意と演技力に押される形でパルマ監督もシシー氏の起用を決めたとのことです。また、トミー役のウィリアム・カット氏も当初はルーク・スカイウォーカー役を希望していたそうです。
パルマ監督作品の特徴としては、分割画面(スプリットスクリーン)や長回し、スローモーション、早送り、目線のアップやアングルなどが挙げられますが、ファンの間ではデ・パルマカットと呼ばれています。今作でもその技法は遺憾無く発揮されており、クライマックスのプロムでのキャリーの暴走シーンは何度見ても痺れる出色の出来となっております。
そんなパルマ監督は今作以外にも「スカーフェイス」(’83)、「アンタッチャブル」(’87)、「ミッション・インポッシブル」(’96)など数々の名作を世に生み出している一方で、作品の出来不出来が激しいとも評されており、残念ながらあまりヒットせずに終わった作品も多々あります。ちなみに「スカーフェイス」も公開当時は酷評の嵐だったそうです。
個人的には当てにいったぬるい作品よりも、当たればどこまでも飛ぶ一発長打のブンブン丸みたいなエネルギッシュな作品の方が好みです。なもんで私は「アンタッチャブル」や「ミッション・インポッシブル」も大好きですが、あまりヒットしなかった作品もひっくるめてパルマ監督の大ファンです!これからも推していきます。
そんな今作は現在U-NEXTでのみ配信中です。他のサブスクでも是非配信して欲しいですね。これはもっともっとたくさん方に見られるべき傑作中の傑作です。超絶オススメです!ちなみに私はTSUTAYAのレンタルを利用させてもらいました。
◇狂信的な母親に育てられ、学校でも日常的にいじめを受けている気弱な少女キャリー。彼女は女子更衣室で初潮を迎え、それを同級生にいじめのネタにされパニックに陥ったことをきっかけに何もせずに物を動かすことができる超能力に目覚めていく。そんな折、唯一彼女を庇ってくれる女性教師•コリンズは同級生たちを叱責し、『毎日居残りで体育授業に強制参加、もしサボったらプロムへの参加禁止』という罰を与える。渋々従う同級生たちだったが、いじめの主犯格であるクリスは反発したことでプロムへの参加を禁止されてしまう。このことがきっかけで彼女はキャリーに対して復讐の機会を伺っていた。その一方でスーはいじめの件を反省し、恋人のトミーに自分の代わりにキャリーとプロムに行ってほしいと頼み、最初は嫌々だったトミーも徐々にキャリーと打ち解け、ついに一緒にプロムへ参加することとなる。
というのが今作の冒頭から中盤までの細かめの流れです。
狂信的な母親に育てられ、信仰という名の下に虐待を受け続け、成長に伴う初潮や生理、胸の膨らみも罪とされ、祈り部屋と称した折檻部屋で許しを得るまで懺悔をする日々。
しかしキャリーにとってはそれがごく当たり前の日常なんです。第三者から見たらどう見ても異常だけど、本人にとってはそれ以外を知らないから、どれだけ虐待を受けようが虐げられようが最終的には母親に愛を求めてしまうのがなんとも辛いところです。
キャリーの弱々しさや学校内での扱い、そしてクラスのパワーバランスを一瞬にして把握させる冒頭の体育のバレーボールのシーンに心を掴まれました。さらにはその後、いきなり女子更衣室のシャワーシーンへと移り、若い女性の裸がこれでもかと映ります。
そしてシャワーを浴びているキャリーがこのタイミングで初潮を迎えるも母親に初潮や生理のことを教えられていなかったため、パニックに陥る。それを見た同級生は笑いながら彼女に生理用品を投げつけるという非常に胸糞悪いシーンへとなるわけですが、これは次に何が来るかを分からなくさせて、先が読めない映画にするという意図があったそうです。
ちなみにこのシャワーシーンは裸を晒すことになるため拒否反応を示したり不安がる方もいましたが、その一方で目立ちたいからと進んで全裸になる方いたそうです。
唯一の彼女の味方である体育教師のコリンズによって同級生たちは罰を受け、その大半が反省したものの、主犯格のクリスは反省はおろか、プロムへの参加を禁じられたことでキャリーに対する復讐を企てます。
余談ですがコリンズがクリスにビンタをするシーンはするフリではなくガチビンタで、しかも30回以上撮り直したそうです。
あとクリスの恋人ビリーを演じていたのは若き日のジョン・トラボルタ氏で、クリス役のナンシー・アレン氏曰く、トラボルタ氏はアドリブが多く何をするか分からなかったけどすごく刺激的で楽しかったそうです。また、非常に紳士的だったそうでクリスにビンタをするシーンはするフリだったそうです。
その一方でスーは心を入れ替え、自身がプロムに参加することを諦めてでもキャリーに何かをしてあげたいと思い立ち、恋人のトミーにキャリーとプロムに参加してほしいと頼み込みます。当初は嫌がっていたトミーでしたが、自身が授業中に発表した詩を教師が嘲笑った時にキャリーだけが褒めてくれたことを思い出し、彼女に猛アタックしてプロムへの参加を取り付けます。
トミーの積極的な態度に戸惑うキャリーでしたが、コリンズの後押しもあり、参加を決意。ドレスを1から手作りしたり、おそらく人生で初の化粧をするなど終始ウキウキでここでようやく彼女の楽しそうな表情を伺うことができるとともに、他の同級生やトミーたち男性陣がスーツやヘアスタイルについてああでもないこうでもないと話し合う様は本当にただの学生たちのありふれた日常で、とても微笑ましくて愛おしかったです。
◇プロムへの参加を決意したことをきっかけに懸命に変わろうとするキャリー。そしてそれを快く思わない母親。ついに彼女は母親の反対を押し切り、トミーとともにプロムへ出席。手作りのドレスを皆が褒め、トミーもキャリーに思いを伝える。初めての感覚、幸せを噛みしめている彼女を見てコリンズも涙を浮かべて喜んでいる。そしてプロムのメインイベントであるベストカップルに選ばれたキャリーたちは壇上に上がり溢れんばかりの拍手を浴びる。しかし、彼女に復讐心を抱いていたクリスはこの時を待ちわびていた。恋人のビリーに用意させたバケツ一杯の豚の生き血を天井から降らせ、キャリーは一瞬にして真っ赤に染められる。この時、彼女は全員が自分を見て嘲笑しているかのように錯覚し、ついに秘めていた超能力が暴走。プロム会場はたちまち阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、多くの死亡者が出る大惨事となる。
というのが後半のあらすじとなっておりますが、ここからまだもうひと展開あります。息つく暇もありません。
キャリーへの復讐を企てていたクリスは恋人のビリーや仲間たちと共謀し、プロムのベストカップルにキャリーたちが選ばれるようにヤラセを行い、わざと2人を壇上に上げて、一番盛り上がる最高の瞬間に不幸のどん底まで叩き落とそうと計画します。
その方法が『養豚場に忍び込んで豚を殺し、その生き血をバケツ一杯に入れたものを天井に仕込み、頭からキャリーに被せる』という常軌を逸したもので、クリスがいかにプライドが高く、陰険な人間であるかが伺えます。
このショッキングなシーンの後にトミーはもちろん激昂しますし、コリンズは戸惑いと心配の表情を浮かべていました。でもこの時のキャリーはその場の全員が自分を嘲笑っているかのような錯覚に陥り、怒りや悲しみなど様々な負の感情がピークに達し、超能力が暴走してしまいます。
キャリーが豚の血を被ってから自宅に戻るまでの一連のシーンがあまりにもショッキングすぎて、私は呆然としてしまいました。ずっと味方でいてくれたコリンズに対しても自分のことを嘲笑っているかのように思ってしまうなど、もはや思考はほぼ止まりかけていたのかもしれません。
「皆が自分を嘲笑っている。プロムに参加したのが間違いだった。母親の言っていたことが正しかった」
もしかしたらそれだけが彼女の中に渦巻いていたのかもしれません。
自宅に戻った彼女は赤子のように母親に愛を求めますが、娘の初めての反抗で何かが壊れた母親は背後から彼女を包丁で刺し、殺害しようとします。
キャリーは咄嗟に超能力を使い、家中の刃物を母親に向けて飛ばして殺害してしまいます。悶え苦しむ母親は信仰していた聖セバスチャン像と同じような格好になり、死は神に近づく崇高な行為とばかりに悦楽の声をあげながら息絶えてしまいます。
そして力の暴走によって崩れ落ちる家からキャリーも脱出することは叶わず、母親の遺体とともに祈りの部屋で家が燃え朽ちていくのを待つだけでした。
◇凶行を止めることが出来ず、全てはキャリーをプロムに参加させた自分のせいだと心に深い傷を負ったスー。彼女は夢の中で跡形も無くなったキャリーの自宅に花を添えるも、地面から飛び出してきた血濡れの手に腕を掴まれる。夢から覚めたことにも気づかず発狂し続ける彼女を母親は必死に抱きしめるのだった。
というラストシーンがもう本当に後味が悪くて、いつまでも脳裏に焼き付いていること間違いなしです。本当に最後の最後までセンセーショナルなシーンのオンパレードでした。これは本当に未来永劫語り継がれるべき傑作です。最高でした!
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