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高尚なフランス映画を見ているような感覚!一度は見るべき傑作ミステリーホラー「チェンジリング」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(667日目)
「チェンジリング」(1979)
ピーター・メダック監督
◆あらすじ
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交通事故で妻子を一度に失った作曲家のジョン・ラッセルは、妻子と暮らしたニューヨークを離れシアトルの大学へ音楽を教えにいく。シアトルでは友人を通して紹介された歴史保存協会に勤めているクレアから、カーマイケル財団が所有するチェスマン・ハウスと呼ばれる古い屋敷を借りて住むことにした。ラッセルがその屋敷に移り住むと夜な夜な何かを叩く轟音が発生したのだった。(チェンジリングWikipediaより引用)
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『初老の作曲家が移り住んだ古い屋敷で頻発する怪現象。その裏にはこの屋敷に隠された恐ろしい過去が関係していた』
という内容のミステリーホラーです。推理モノのような側面もあるため、終始目が離せず最後の最後まで楽しめました。
情景の美しさ、ピアノやオルゴールの音色、妻と娘を失った主人公の繊細な心理描写、愚かしく救いようの無い人間の業etc…どれをとっても非常に芸術性を感じるといいますか、高尚なフランス映画を見ているようでした。(カナダで製作された映画ですが…)
オバケや怪物がいきなり現れたり、目を背けたくなるようなグロ描写など、“驚かせるための作為や過剰な演出”というものは一切なく、霊の出現や怪現象などその一つ一つに意味があるように感じました。おそらくはそのあたりが他の作品と一線を画しているのかもしれません。
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今作のように静かに淡々と始まる作品は個人的にはあまり得意ではなく、どちらかというとバカ丸出しのB級ホラーや血飛沫大盤振る舞いの派手な演出の作品の方が好みなんですけども、この作品は別格でした。本当に面白かったです。
監督を務めたピーター・メダック氏はハンガリー系のイギリス人で御年86歳の大ベテランです。今作以外だとゲイリー・オールドマン主演のノワール映画「蜘蛛女」(’93)や「スピーシーズⅡ」(’98)が代表作で、その他にも様々なテレビドラマで監督を担当しています。
メダック監督個人のホームページがありました。
現在U-NEXT、DMMTV、huluにて配信中ですが、私はどうしても吹き替え版で見たかったので池袋のTSUTAYAでレンタルさせてもらいました。
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本作の構成を大まかに分けてみると
前半部は
妻と娘を交通事故で失った作曲家のラッセルは大学で音楽を教えるためにシアトルへ移住する。友人のツテで歴史保存協会に勤めているクレアからチェスマン・ハウスと呼ばれる築100年を超える古屋敷を紹介され住むことに。家族を失った悲しみを忘れようと作曲に没頭するラッセルだったが、10年以上借り手が現れず、“家が人を拒む”とまで言われたこの屋敷で彼は様々な怪現象に遭遇する。
ショッキングな交通事故からのタイトルバックに衝撃を受けながらも心を掴まれました。愛する家族を失った初老の作曲家ジョン・ラッセル役のジョージ•C•スコット氏の哀愁漂う演技が静かにそして頼もしく作品を引っ張ります。登場人物の見せ方やカット割り、カメラワークなども相当レベルが高く、序盤のこのあたりが特にフランス映画っぽさを感じました。
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吹き替えは「鶴瓶の家族に乾杯」のナレーション等でもお馴染みの久米明さんです。(Amazon.co.jpより引用)
カーマイケル財団が所有する古屋敷チェアマン•ハウスは外観内観共に美しく、美術館に改装するという案が出るほど価値のある屋敷にも関わらず借り手がつかないという、なんだか不穏な雰囲気を匂わせます。
屋敷で起こるポルターガイスト現象も最初はピアノの音がポーンと1音だけ聞こえるとか、シンプルに物音がする程度でしたが、次第に現象は強くなり、しまいには毎朝6時に鐘を打つような音が鳴り響くという中々に厄介な状況に見舞われます。
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(ジョージ•C•スコットWikipediaより引用)
そして中盤は
様々な怪現象に頭を悩ませるラッセルはクレアと共にあの屋敷に隠された謎を解き明かそうと調査を始める。そして霊能力者を屋敷に招いて霊と対話させた結果、ジョセフと名乗る少年の霊はこの屋敷で父親に殺害され、牧場の井戸に捨てられたと証言する。ラッセルたちはジョセフが言っていた場所を掘り返して白骨死体を発見。さらにはその死体がジョセフだということが分かるアクセサリーも手に入れる。ラッセルはこの屋敷の所有者であるカーマイケル財団の家系を調べ上げ、真相にたどり着く。そして事件の鍵を握るカーマイケル上院議員にその事実を叩きつけるも意に介さない。そればかりか、議員は事件を完全に闇に葬るべく、次々と強行策に打って出る。
という謎解きメインのパートです。
完全なるネタバレになりますが、
今作の黒幕であるリチャード(ジョセフの父)。彼はスペンサー財閥の令嬢と結婚し、そしてジョセフが誕生しました。スペンサー(リチャードの義父にあたる人物)は遺言にて、全財産をリチャードではなくジョセフに譲ると記し、もしジョセフが成人を迎える前に死亡した場合はその遺産を慈善団体に寄付するとも記していました。生まれつき病弱で身体に障害があるジョセフは成人まで生きられないのではと察したリチャードは自らの手でジョセフを殺害。さらには治療をするために海外に行かせていると嘘をつき、数年後に孤児院から同じ年齢の子供を引き取り、ジョセフの代わりとして育てていた。
つまり今のジョセフ•カーマイケルはあのカーマイケル上院議員だったのです。そうして彼は成人して遺産を相続され、上流階級の人間として暮らし、現在に至るというわけです。
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(Amazon.co.jpより引用)
そして終盤は
カーマイケル上院議員は権力を乱用し、クレアを歴史保存協会から追放したり、事件を捜索していた刑事を事故に見立てて殺害。本物のジョセフを殺害した父親のリチャードはもうこの世にいないため、自分にはもうこれ以上何もしてあげることがないと思っていたラッセルでしたが、ポルターガイスト現象は収まらない。ジョセフは駄々をこねる子供のようにラッセルに訴え続けます。しかし、もうどうしてやることもできないラッセル。そんなラッセルに業を煮やしたジョセフは自らの手でこの復讐劇に終止符を打つ。
という感じでクライマックスへと続いていきます。
事件を隠蔽するカーマイケル上院議員もたしかに悪いんですけど、諸悪の根源であるリチャードがもうすでに死亡しているので、ラッセルの言う通りもうどうしてあげることもできないんですよね。にも関わらず、癇癪を起こすかのようにポルターガイスト現象を頻発させるジョセフ。そんなジョセフに「もうやることはやったんだよ!これ以上どうしろっていうんだよ!」としっかりブチギレるラッセルが痛快でした。
そしてジョセフは自らの手で復讐劇に打って出るわけですが、罪のない人々(ラッセルやクレア)は助かり、カーマイケル上院議員だけ凄惨な最後を迎えるという終わり方がまた素晴らしかったです。
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クレアの吹き替えは「3年B組金八先生」の第5シリーズで兼末健次郎(演:風間俊介)の母親役で強烈なインパクトを残した名優の田島令子さんです。(Amazon.co.jpより引用)
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吹き替えは「スター・ウォーズ」シリーズのダース・シディアス役でお馴染みの千葉耕市さんです。
(Amazon.co.jpより引用)
勉強不足でこの作品のことを最近まで知りませんでしたが、これは本当に名作ですね。心の底から見て良かったなと思いました。めちゃくちゃオススメです!
ちなみに、タイトルにもなっている“チェンジリング”ですが、これは取り替え子(changeling)というヨーロッパの伝承から来ています。
人間の子どもがひそかに連れ去られたとき、その子のかわりに置き去りにされるフェアリー・エルフ・トロールなどの子のことを指す。時には連れ去られた子どものことも指す。
とのことで、その国々によって伝承内容などに差異はあるものの、一説によるとこの伝説の裏には奇形児や発達障害児の誕生が関係しているそうです。資料に残されている取り替え子の特徴などがいわゆる奇形や障害に当てはまるそうで、これらのことから取り替え子の伝承は正常に成長しない子供たちの特徴や個性を説明するために用いられていると言われています。
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もしよかったら覗いてやってください。
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