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100年以上前の無声映画がなぜこんなにも面白いのか!?数々の名作に多大なる影響を与えたドイツ表現主義映画の傑作「カリガリ博士」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(808日目)
「カリガリ博士」(1920)
ロベルト•ヴィーネ監督
◆あらすじ
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あるドイツの田舎町のカーニバルで、カリガリ博士という男が眠り男・ツェザーレを使った見世物を出していた。自分の死期を尋ねた男が「明日の朝まで」と告げられ、翌朝に殺されてしまう。友人の死に疑問を抱いたフランシスは真相究明に乗り出すが…。(Filmarksより引用)
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『眠り続ける男を見世物にした小屋を訪れた主人公たち。怪しい老人曰く、その眠り男は未来を予知するらしい。明日の朝に死ぬと言われた友人が予言通り死亡したことをきっかけに主人公は町で起こる連続殺人の真相を突き止めようとする』
という、連続殺人事件の真相を追った結果、思いもよらぬ事実が明らかとなるドイツ発のサイコスリラーです。
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(https://m.imdb.com/title/tt0010323/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
今作はなんと100年以上前の1920年に公開された作品で、いわゆるモノクロの無声映画です。
また、一説によると世界で初めての長編ホラー映画とも言われています。なもんで「そんな古い映画、今見たって面白くないでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
かく言う私もそう思っていました。もちろん完全にハードルが下がりきった状態で見たというのもあるかもしれませんが、この作品めちゃくちゃ面白いです!
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『田舎町で巻き起こる殺人事件の真相を追う主人公』というのが今作の大筋なんですけども、所々で時系列が前後したり、「何これ?どういうこと?」と引っ掛かる部分があります。
今作はその違和感が最後の最後に一気に回収されるいわゆる“どんでん返し系”の作品となっています。
なもんで途中で気になるあれやこれやが全てフリになっています。100年前にもうすでにそんな高等技術があったとは驚きですし、後味は悪いんですけどその終わり方が非常に気持ち良いです。
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また、個人的にすごく印象に残ったのが今作の美術と舞台装置です。
冒頭とラストの現実パートは通常の映像と背景なんですけども、今作の大筋部分である『田舎町で巻き起こる殺人事件の真相を追う』は主人公が自身の記憶を辿りながら語る、言わば過去です。
そのため、あやふやな人間の記憶や思い出を表現しているかのようにアンバランスで曖昧な舞台美術がとても面白く、一度見たら忘れられません。
70分ほどの作品なのでサクッと見られますし、映画好きの方や映像関係のお仕事に携わる方々は見ておいて損はないと思います!
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(https://m.imdb.com/title/tt0010323/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
今作はドイツの表現主義映画の中でも最も古く、かつ最も影響力があり、ヒッチコック監督を筆頭にホラーやスリラー、ノワール映画を手掛けた多くの映画監督や脚本家はこの作品をお手本にしたと言われています。
※表現主義映画とは
客観的表現を排し、内面の主観的な表現に主眼をおくことを特徴とする映画のことで、ドイツ表現主義映画とも呼ばれる。あるゆる芸術分野で流行し、世界中の前衛芸術に影響を与えました。
また、ティム・バートン監督の名作「シザーハンズ」(’90)の主人公エドワードのビジュアルや衣装は今作に登場する眠り男•チェザーレの不安を煽る奇抜なメイクや衣装をオマージュしたものだそうです。
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(https://m.imdb.com/title/tt0010323/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
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ちなみに本作は、自らの意思を持たず眠り続ける男(チェザーレ)と、そんな彼を意のままに操って殺人を行わせる精神異常者(カリガリ博士)の関係性から、ヒトラーによる独裁政権、そしてユダヤ人の方々への蛮行、さらにはその後の第二次世界大戦等への盲信的な国民の加担を象徴している作品だと分析する映画評論家もいるようです。
でも実際はヒトラー政権が始まる10年以上前の作品ですし、そういった政治思想も少なからず込められていたかもしれませんが、少々こじつけな感じがしなくもないです。
そんな今作の監督を務めたロベルト・ヴィーネ氏はドイツの御出身で舞台俳優としてデビューした後に1912年頃から映画業界に飛び込みました。
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実父のカール氏も著名な俳優で、弟のコンラート氏も監督や俳優として活躍しており、いわゆる典型的な俳優一家の長男として主に1920年代に数々の名作を手掛けていました。
時代が時代なだけに、ナチス政権が樹立した後はパリに移り住み、“芸術のデパート”でお馴染みの芸術家ジャン・コクトー氏と共に今作「カリガリ博士」の有声版のリメイクを撮ろうか等と構想を練っていたそうです。
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その後、1938年に御自身が監督を務める予定だった長編映画のクランクアップ10日前に惜しまれつつも病死。遺作となった「Ultimatum」は同氏の友人だったロバート・シオドマク氏によって完成し、同年公開となりました。
現在Amazonプライム、U-NEXTにて配信中です。
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◇フランシスは友人のアランと共にホルステンヴァルの町にやって来たカーニバルにて怪しい老人•カリガリ博士のショーを見る。そこでは25年間も箱の中で眠り続けている男を見世物としており、なんとその眠り男のチェザーレはどんな質問にも答えるという。するとアランが悪戯心で“自分はあとどれくらい生きられるのか”と尋ねる。するとチェザーレは「もうすぐ死ぬ…夜明けまでには!」と返答し、再び眠りにつく。
すると翌朝、アランは何者かに殺害され、奇しくもチェザーレの予言通りとなってしまった。この町では以前にも人が殺されており、それはカリガリ博士を邪険に扱った人物だった。これらのことからフランシスは一連のこの事件はカリガリ博士とチェザーレによるものではないかと推理し、捜査に乗り出すのだった。
というのが今作の細かめのあらすじです。
※後半部分は完全にネタバレになっているので視聴予定の方はお気をつけください。
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「私は亡霊に取り憑かれたために家族を捨てるはめになった」
と、虚ろな表情の男にそう語り始めたフランシス。そこへまるで魂を抜かれたかのような美女が通りがかる。するとフランシスは彼女は僕のフィアンセだと言い、そして自分たちが体験した世にも恐ろしい体験を静かに語り始めた。
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ある日、フランシスの故郷•ホルステンヴァルにカーニバルがやって来たため、彼は友人のアランと赴く。様々な出店が並ぶ中、彼らは怪しい老人•カリガリ博士と25年間も眠り続ける夢遊病患者•チェザーレのポスターに足を止める。
なんでもカリガリ博士曰く、そのチェザーレはどんな質問にも答えるという。怖い物見たさでさっそくその見世物小屋に入るフランシスたち。
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大勢の物好きな観客で賑わう客席を前にし、カリガリ博士が「目覚めよ、チェザーレ。御主人様の命令だ」と言うと、ゆっくり目を開けるチェザーレ。どうやら彼は預言者らしいです。
カリガリ博士が「どうぞ未来を尋ねてください」と観客を煽ると、アランが悪戯心で「僕はあとどれくらい生きられますか?」と尋ねる。
するとチェザーレはゆっくりと「もうすぐ死ぬ…夜明けまでにはな!」と言い、再び眠りについた。
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なんだかばつが悪くなった二人は帰路につきますが、なぜだかこのタイミングでフランシスは自分もアランも思いを寄せているヒロイン•ジェーンについて、「僕たち同じ女を好きになったけどさ…どんな結果になろうと友達でいような」と絶対に抜け駆けしそうなことをポロッと言います。
そして翌日、アランが何者かに殺されたとの連絡が入り、悲しみに暮れるフランシス。チェザーレの預言通りでした。
実はこの町では数日前にも殺人事件が起きていました。殺されたのは役場の職員で、その男はカーニバルで夢遊病患者を見世物とする見世物小屋の出店許可を貰いに来たカリガリ博士を邪険に扱っていました。※このシーンはフランシスたちがカーニバルを訪れるシーンの前に差し込まれています。
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「何か恐ろしいことが起こってる」
一連の事件はカリガリ博士とチェザーレの犯行ではないかと踏んだフランシスはジェーンと彼女の父であるオルセン博士と協力し、カリガリ博士の身辺調査に乗り出します。
時を同じくして、危険を察知したカリガリ博士は予めチェザーレのダミー人形をこしらえておき、フランシスの通報で家宅捜索が入った際も、「いやいや、これ本当に起きないんですよ」と難を逃れます。
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その後再び殺人事件が発生。しかし今回は呆気なく犯人が御用となり、ホルステンヴァル連続殺人事件はこれにて解決と相成ってしまいます。
しかし犯人は「今回の殺人は俺だけど、それまでの2件の殺人を模倣しただけで残りは俺じゃないよ!」と自供。どうやら例の殺人犯に罪を着せようとしていたみたいです。
しかし警察は3件ともこの男の犯行として片付けてしまいます。
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父を探してカリガリ博士の見世物小屋にやって来たジェーンは突如目を覚ましたチェザーレとばっちり目が合ってしまい、驚いて逃げ帰ります。※すいません。ここちょっと曖昧です。
その晩、自分の周囲を嗅ぎ回っていることを察知したカリガリ博士はチェザーレに命令し、ジェーンの寝込みを襲って殺害することを命じます。
しかしチェザーレは昼間目が合ったジェーンに一目惚れしており、ナイフを振り下ろすことが出来ず、衝動的につい攫ってしまいます。
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思いっきりその姿を町の人たちに目撃され、追いかけられるチェザーレ。しかしここで彼は突然の心臓発作で死んでしまいます。
その後、フランシスは警察を引き連れてカリガリ博士の見世物小屋を訪問。しかしそこにいるのはダミー人形ですから当然目を覚ますことはなく、証拠も見つかりません。
そうこうしているうちにカリガリ博士は町の精神病院へと逃げ込みます。
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そういえば昔やってた「バケツでごはん」っていうアニメにチェザーレっていうキザなペンギンのキャラいましたよね。(https://m.imdb.com/title/tt0010323/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
行方を追っていたフランシスがその病院で「カリガリさんを探してるんだけど?」と言って職員に案内されたのはなんと院長室。そしてそこには院長然としたカリガリ博士の姿が…
これは一体どういうことなんでしょうか?
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カリガリ博士が自宅で就寝中に職員たちと院長室に忍び込んだフランシスは“夢遊病患者を操って殺人を行っていた興行師”について書かれた本を発見。
さらにその興行師の名前がカリガリだった…
さらには現カリガリ博士の日記を発見。そこには
彼は夢遊病患者を連れて旅をしていた。そして患者たちを自由自在に操り、危険や野望を実現しようとしていた。各地で同じ手口の殺人事件が起きていた。もはや私の野望を邪魔するものはない。彼らを操るために夢遊状態にする。そうすれば人殺しもできる。衝動!私はカリガリになるのだ!カリガリカリガリカリガリ!
という、先ほどの本に書かれていたことを自分自身で再現する決意を越えたおぞましい狂気が記されていた。
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翌日、町外れの谷間で死亡しているチェザーレが発見され、病院に担ぎ込まれる。
死体と対面したカリガリ博士は嘆き悲しみ、一連の事件の犯行もおそらくは彼のものと認められ、さらには精神に異常を来していたため、職員に拘束されて独房へと幽閉されるのだった…
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「今や彼は鎖に繋がれた異常者だ」
そんな一言で締めくくるフランシス。徐々に支離滅裂で時系列が歪み始めた彼の話に違和感を抱く。
実は彼自身が精神病患者であり、これまでの話は全て彼の妄想だった。
彼の話に登場したのと同じ精神病院の庭にはジェーンやチェザーレも同じ患者として存在している。そして、果たしてジェーンかも分からないその女性に対してフランシスは「ジェーン愛してるよ。いつ結婚してくれる?」と求婚するも、その女性もまた「私たちは王家の血を引くものよ。勝手なことは許されない」とまったく会話にならない。
さらにはチェザーレ(かもしれない男)を見ながら、「彼は僕たちの運命を操ろうとしている。撲たちは夜明け前に死ぬ」等と必死に訴えかける。
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そして、そこに現れた院長に対して「彼はカリガリだ!」と掴みかかり、職員に取り押さえられる。
独房へと連れて行かれるフランシスを見ながら、院長は「やはり彼は偏執病だ。私を謎のカリガリ博士と思い込んでる」と言い、続けざまに「しかしこれで彼をどう治療すればよいか分かったぞ」と今後の治療方針が定まったことを明言する。
こうして物語は幕を閉じます。
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精神病患者であるフランシスの妄想をメインストーリーにし、最後にそのタネ明かしをするという構成があまりにも見事すぎて圧倒されました。
これが100年以上前の映画だなんて信じられません!
面白すぎます!
無声映画なので要所要所で必要最低限のセリフが挿入されるだけですし、内容が内容なだけに時系列が前後したり、意図してるとはいえ整合性がない展開もあるため、多少ストーリーの理解に誤りがあるかもしれません。
※もし「それ違うよ!」という部分がありましたらコメント等でご指摘いただけると幸いです。皆様、いつも読んでいただきありがとうございます!明日もよろしくお願いします!
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