死者を蘇らせる禁断の血清!蘇りし者が手に入れる神秘の力は人もトラウマをも吹き飛ばす!「ラザロ・エフェクト」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(702日目)
「ラザロ・エフェクト」(2015)
デヴィッド•ゲルブ監督
◆あらすじ
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医学研究者ウォルトンと婚約者のゾーイたち研究者グループは「死者を蘇らせる」ことができる「ラザロ血清」の研究に日夜没頭していた。ある日、実験の最中にゾーイが事故で感電死してしまう。哀しみに駆り立てられたフランクは研究員の制止を振り切り、ラザロ血清をゾーイに投与して彼女を死の淵から蘇らせることに成功する。しかし、復活に喜ぶのもつかの間、ゾーイの身体に様々な異変が起こり始める。死の先で彼女が見たものとは、生き返った人間が手にした力とは。死からの再生という禁断の研究に足を踏み入れた研究員たちを襲う恐怖と絶望のなか、我々は死ぬよりも恐ろしいことがあることを知らされる――。(Filmarksより引用)
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『死者を蘇らせる禁断の血清を生み出した研究者たち。事故で死亡した仲間をその血清で蘇らせるも、一度死んだ人間が手にした超能力は思いもよらぬ暴走を始め…』という内容のサイエンスホラーです。ストーリーの構成自体は非常にシンプルで、尺もエンディングを除くと75分程なのでさくっと見られます。
中盤までは科学用語等が飛び交うロジカルなお話なので少々とっつきにくいところもあるんですけど、物語の後半で一度死んだヒロインが蘇り、死んだことで目覚めた超能力が暴走して一人また一人と仲間たちを手にかけていくというぶっ飛びパワープレイな怒涛の展開はそれまでとのギャップも相まってめちゃくちゃ面白かったです。
ちなみに公開当時、批評家からは酷評されてしまった今作ですが、製作費330万ドルに対して興行収入は3800万ドル超えと上々の入りだったそうです。
本作の主人公の一人である研究者のウォルトンを演じていたのが「クリープ」シリーズでお馴染みの怪優マーク•デュプラス氏だったのが個人的にはかなり嬉しかったです。
「クリープ」(’14)、「クリープ2」(’17)で同氏が演じた変態サイコパスなイチモツ見せ男•ジョセフは一度見たら忘れることができないトラウマ級のインパクトを誇っております。どちらかと言うと監督業やプロデューサー業が主で、俳優としての活動はそこまで多いわけではないんですけども、この人はちょっとヤバいですね。もっとたくさんホラー映画に出て欲しいです。「クリープ」は1.2共にNetflixで視聴可能です。こちらもオススメです。
今作の監督を務めたデヴィッド•ゲルブ氏は、ミシュランの三ツ星を当時6年連続で受賞していた銀座の超有名鮨店“すきやばし次郎”の店主である85歳の寿司職人・小野二郎に密着したドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」(’11)で注目され、以降も主にドキュメンタリー映画を手掛けているクリエイターです。なもんでいわゆる商業映画というか異なるジャンルの作品を担当したのはおそらく今作だけです。
そして製作会社はこの企画でも度々名前を出させていただくブラムハウス•プロダクションズです。
「インシディアス」シリーズ、「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ、「ゲット・アウト」(’17)などの低予算ホラーに定評のある会社で、2025年には「M3GAN」(’23)の続編にあたる「M3GAN2.0」や「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」(’23)の続編が、さらにその翌年には同じく「M3GAN」のスピンオフにあたる「SOULM8TE」の製作が発表されるなど、これからもこの会社からは目が離せません。
現在「ラザロ・エフェクト」はアマゾンプライム、U-NEXT、FOD、huluで配信中です。
というのが、今作の細かなあらすじです。
これ以降の怒涛の展開が巻き起こる後半パートは非常に面白かったんですけど、それまでの構成が少々単調というか、絶妙に視聴者との距離感を感じました。
という、この構成にいわゆる枝葉というか肉付けや遊び部分がほとんどないため、各登場人物の人間性やそれぞれの関係性がまったく見えてこず、いまいち作品に入り込めませんでした。そのため、後半の盛り上がりだけが浮いてしまった印象です。
如何せん各々のバックボーンがあまり描かれていないため、ラザロ計画に費した4年間の苦労もあまり伝わって来ないし、ウォルトンとゾーイ以外のメンバー(エヴァ、クレイ、ニコ)が“どういった経緯で加わっているのか”や、“研究に対するそれぞれの熱量”なんかが明確化するともう少しストーリーに厚みが増したように思います。
製薬会社に手柄を横取りされた時、4年間苦労したウォルトンとゾーイが憤慨するのはもちろんですが、撮影係として昨日今日参加してきたエヴァはどんな風に思っているのか、クレイとニコはどうなのか。ゾーイからスパイ扱いされたにも関わらず、その後もエヴァが実験に対して協力的なスタンスなのもよく分かりませんでした。
ラザロ血清の手柄を製薬会社に横取りされてしまうというくだりや、その後の実験中にゾーイが感電死してしまうくだりもそうなんですけど、どれもが突然過ぎるというか、その前兆みたいな、我々視聴者に「もしかしたらそうなっちゃうんじゃないか」と思わせるシーンが何もないままに突然事象が発生するのも距離感を感じた原因かもしれません。
他の作品を引き合いに出すのはあまりよくないんですけど、同じサイエンス系のホラーで言うと「インビジブル」(’00)がそのあたりの関係性や人間性を上手く引き出せていたと思います。
自信家でプライドが高いくせに元カノに未練たらたらの俺様主人公が透明人間になってまず取った行動が『好きでもない同僚の女性の胸をしゃぶる』というのがすこぶるキモいです。しかしそれと同時に、「こいつ普段からこういうこと考えてたんだ、したかったんだ、こういう人間なんだ」というのが一発で分かる素晴らしいシーンだったんですけども、今作にもなんかそういう滑稽なというか人間性が伺えるシーンがあっても良かったと思います。
あと、ほとんどの会話に科学用語が多用されているのも視聴者を置き去りにしている要因の一つのように感じました。
一個一個の単語の意味が分からなくてもストーリー自体は先述した通りシンプルなので理解度に関しては問題ないです。しかし、これは私の感覚なのであれなんですけど、なんか蔑ろにされているというか、自分含む3人で会話している時の『自分以外の二人が私の知らない話題で大盛りあがりして、会話に入れなくなってしまう』という、あの現象に近いかもしれません。あれってちょっと寂しいじゃないですか。その時の感覚だと思います。
『ラザロ血清が投与されたことで脳が急速に進化したゾーイがテレキネシスやテレパシー等の超能力を使えるようになったと同時に、副作用で怒りや狂気が増幅されて暴走を始める』という、この後半はめちゃくちゃ面白いです。なんで超能力使えるんだよ!というツッコミは野暮です。使えるもんは使えるんです。
ゾーイは死ぬ瞬間に幼少期のトラウマを回顧しており、それを「地獄の景色を見た」と表現するのがまたオシャレです。彼女は幼少期に自らの不注意でアパートを火事にしており、そのときに逃げ遅れて焼け死んだ人を見たことが今もトラウマとなっており、いつまでも心の中にこの時の光景が残っていました。
そのトラウマを払拭したい、または一生懸けても罪を償うことが出来ないことに対するぶつけどころのない怒りや不安からなのか、残っているラザロ血清を全て自分に投与したゾーイはさらなる力を手に入れます。この辺りからはちょっと抽象的な感じもあり、正しいのかは分かりませんが、おそらくは自身の深層心理の世界(トラウマ)を具現化することができるんだと思います。
こういった説明があまり無く、たぶんこうだと思いますとしか言えない展開は個人的には結構好きです。なもんで、だったら序盤の方からこれくらいパワープレイで進めても面白くなったんじゃないでしょうか。
前半と後半に温度差があり過ぎて少々勿体ないなと思うところもありましたが面白かったです。尺もそこまで長くないのでさくっと見られますし、科学とか医療系の作品が好きな方にもオススメできると思います。理系の賢い人と一緒に見て、色々内容にツッコミを入れてもらったらまた違った楽しみ方ができるかもしれません。
ここからは完全に余談ですが、作中に登場するラザロとはイエス・キリストの友人で、イエスによって死から蘇る「ラザロの復活」という逸話で広く知られている人物のことです。
この伝承から、欧米を中心に蘇生や復活に関連する学術用語に“ラザロ”が用いられています。医学用語で言うとラザロ徴候やラザロ症候群、他にも絶滅したとみなされた後に再発見された生物のことを指す、ラザロ生物群という用語があるそうです。
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