ノリで作った素人集団の映画が奇跡の神格化!支離滅裂な内容、雑編集、誤字脱字、ピンボケetc…今すぐ見て欲しいキング•オブ•カルト映画「魔の巣 Manos」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(714日目)
「魔の巣 Manos」(1966)
ハロルド•P•ウォーレン監督
◆あらすじ
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休暇中の一家が砂漠をドライブ中に行方不明になる。彼らは "マスター "と呼ばれる魔術師が率いる邪悪なカルト教団に遭遇する。(Amazon.co.jpより引用)
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「カルト映画界の秘密兵器」、「史上最悪の映画」など様々な異名を持つキング•オブ•カルト映画として知られる作品です。
『休暇をロッジで過ごす予定だった主人公一家。彼らが道に迷った末に辿り着いた怪しい屋敷で恐ろしい事件に巻き込まれていく』という大筋自体はホラー映画によくありそうな、どうとでも料理できそうなごくありふれたストーリーです。
しかし!
何をどうしたらこんなにも酷くなるのかと嘆きたくなるほどに支離滅裂で意味不明な脚本、ぬるい演技、ぶつ切りの映像と音楽、日本語訳の誤字脱字、カチンコ等の映り込み、ピンボケや不自然なカメラ目線等など、挙げたらきりがない程に壊滅的な要素が勢揃いし過ぎて現在は逆に神格化されています。
そんな問題だらけの今作の制作された経緯やバズったきっかけ、奇跡の続編発表に至るまでを簡単にご紹介させていただきます。
本作の監督、脚本、製作、主演を務めたハロルド•P•ウォーレン氏は若い頃に舞台を中心に俳優として活動しており、テレビドラマに通行人役で出演するなど下積み生活を送っておりましたが、その後は引退して保険や肥料のセールスマンをしていました。
ある日、知り合いの脚本家であるスターリング・シリファント氏とお茶をしていたウォーレン氏は「ホラー映画なんて簡単に作れる!」と軽はずみな発言をしてしまい、その場のノリで“映画を丸々1本制作出来るかどうか”をシリファント氏と賭けることになりました。
勢いそのまま喫茶店の紙ナプキンに作品構想を描き始めたウォーレン氏は、以前から貯めていた全財産1万9千ドル(現在の価値にしておよそ1600万円ほど)を用意して本格的に制作に乗り出しました。もしかしたらいつか映画を作ってみたいと前々から思っていたのかもしれません。
とはいえ限られた予算の中でやりくりをしなければならないウォーレン氏は映画の利益を分配することを約束し、昔の役者仲間やスタッフをかき集めます。ロケ場所も知り合いの弁護士が所有する牧場を借りてようやく撮影に入るも、スタッフはほぼ全員ド素人、さらにはカメラや照明機材のレンタル期限もあり、何もかもが手探り状態の突貫撮影が行われました。
手巻きタイプの古いカメラをレンタルしてしまったため、“一度に32秒までしか映像が撮れない”という信じられないハプニングなどにも見舞われながら、ぶつ切りの継ぎ接ぎ編集でなんとか乗り切り、音響や出演者のセリフ等も後から収録したものを編集で足したそうです。ちなみに主人公一家の娘•デビー役のジャッキー•ネーマン氏は完成された作品を視聴した際、自分の声を別の人物が当てていることにショックを受けて泣いてしまったと後に語っております。なぜそんなことが起きたのでしょうか。
また、本来であれば一番しっかり現場を指揮しなければならないはずのウォーレン氏のド素人っぷりや癇癪に辟易したスタッフたちは裏ではこの作品のことを「Mangos: The Cans of Fruit」 (マンゴーの缶詰)とイジっていたそうです。
そんなこんなでなんとか撮り終えた動画を制作会社に持ち込んだウォーレン氏でしたが、おそらくは会社側の怠慢なのか、開始早々カチンコが見えてしまうカットがそのまま使われていたり、ただただ車を走らせるだけの退屈なシーンが延々と続いたりと中々にアレな出来に仕上がってしまいました。ちなみにウォーレン氏はこの冒頭のシーンにオープニングクレジットを入れる予定でしたが、会社側に忘れられてしまったとのことです。
そんなこんなでようやっと上映にこぎつけた今作はウォーレン氏の故郷であるテキサス州の劇場で初公開。しかし残念ながら評価の方は芳しく無く、すぐに打ち切られてしまい、その後は小さな劇場やドライブイン等での上映にとどまりました。
上映後の観客の反応を見たウォーレン氏は
と語っておりますが、もはや吹き替えどうこうの問題ではないことを本人も自覚していたことでしょう。
そのまま誰の記憶に残ることもなく消え去るはずだった本作は意外な形で日の目を浴びることになります。
それは公開からおよそ27年後の1993年。あらゆるB級映画を面白おかしく、時にはイジり倒して紹介する人気テレビ番組「MST3K」(ミステリー•サイエンス•シアター3000)にて本作が取り上げられると、他のB級映画に格の違いを見せつけ大バズリ。この番組がきっかけで後々DVDが販売されるまでに至りました。そんな本作についてロサンゼルス・タイム紙は
と、評しています。
四半世紀を経て日の目を浴びることとなった今作はなんとさらなる奇跡を起こします。それが続編制作の構想です。
2014年に一度は頓挫するも、デビー役のネーマン氏が今でいうクラウドファンディングを募ったところ、なんと2万4千ドルが集まったことで企画が復活。ネーマン氏が再びデビーを演じ、妻•マーガレット役のダイアン•マーリー氏も同役で再登板。さらには屋敷の主人役にはネーマン氏のお父様であるトム氏がキャスティングされる等のお祭り状態で、映画自体は割とおふざけな内容だったものの、2018年にAmazonプライムにてリリースされました。(調べたところ日本だと見られないっぽいです)
先日、さらば青春の光さんのYouTube内でこの作品のことが取り上げられており、気になって視聴させていただいた次第なんですけども、これは予想以上でしたね。心が震えました。素晴らしい作品です。ちなみに私の大好きな「プラン9•フロム•アウター•スペース」(’59)と「必殺!恐竜神父」(’17)も紹介されていました。
こちらも名作ですので是非ご覧になってください。
ちなみに今作は現在パブリックドメイン化しているため、字幕無しver.がWikipediaにて無料で視聴可能です。ちなみに字幕ありver.はアマゾンプライムにて配信中です。パブリックドメイン化に関してはウォーレン氏が当時、著作権標記を入れ忘れてしまったため、そういう扱いになってしまったそうです。
あと余談ですがタイトルの「魔の巣」は原題の「Manos: The Hands of Fate」のManos(スペイン語で手の複数形の意味)の読みを当て字にしたもので、あまり深い意味はありません。
◇マイケルは妻のマーガレットと娘のデビー、そして愛犬のペッパーを連れ、ホテルで休暇を過ごすために車を走らせていた。しかし砂漠地帯に差し掛かった一行の車は道に迷ってしまい、どうにかこうにか突き進んでいくと不気味な屋敷に辿り着いてしまう。屋敷の従者であるトーゴにこの辺りに泊まる場所はないと告げられたマイケルは日が暮れていることもあり、嫌がる妻を説き伏せて屋敷に泊めてもらうことにする。屋敷内には異様な雰囲気が漂っており、外に飛び出した愛犬は獣に食い殺されるわ、トーゴはマーガレットを襲おうとするわ、デビーが迷子になるなど散々な目に遭う。そして彼らはこの屋敷の人々が一夫多妻制のカルト集団“マノス”だと分かり逃走を図るも、全ては主人の思うがまま。まんまと術中に陥ったマイケルたちの運命は…
というのが大まかなあらすじです。
正直なことを言うと、屋敷に着いてからは内容がほぼ支離滅裂で説明不足が否めません。なもんで私も視聴後に今作のWikipediaを読んで、「あれってそういうことだったんだ」と気づかされることが多く、このWikipediaによる補填が無いと意味わからんで終わってしまう映画です。
もはやツッコミどころしかない内容や映像のオンパレードで、獣に襲われた愛犬ペッパーの亡骸はどう見ても黒い布切れですし、マーガレットを自分のものにしようと迫るトーゴに対して「やめて!こないで!」等とは言うものの、その場から一切動かず抵抗もしないマーガレットのシーンも無駄に長いうえにもったりしています。さらには一切本筋とは関係ないカップルのいちゃつきとそれを注意する警察官のくだりが3回ほど差し込まれるため、テンポという概念が失われるほどにテンポが悪いです。
ここからは私の推測込みですが、屋敷の主人は一夫多妻制のカルト信者であり、6人いる妻はマイケル一家のように道に迷った末に屋敷に辿り着いた一家の妻や娘を娶ったのだと考えられます。
そして、よくわかりませんがどうやら邪神マノスにそろそろ生贄を捧げねばならないようで、さらに主人は案の定マーガレットと幼いデビーを自身の妻として迎え入れようとしていました。6人の妻たちは「そんな幼い少女を妻にするなんてどうかしてる!」派と「勝手にすりゃあいいじゃないの」派がぶつかり合い、壮絶な乱闘に発展してしまいます。
このシーンもぬるい押し合い圧し合いばかりの泥仕合にも程があるキャットファイトに仕上がっており、尺稼ぎに抜かりはありません。
その後、なんやかんやあって「あんただけずるい!俺も女欲しい!」とゴネたトーゴと主人に逆らった第一夫人が生贄に捧げられることになり、まずトーゴが台の上に寝かされて、妻たちに体を揺すられたりベタベタと触られているうちになぜか息を引き取ります。これが噂のゆすり殺しです。
そして、死んだはずのトーゴは操り人形のように起き上がり、主人に導かれるまま炎に手を突っ込むとなぜかそのまま手がちぎれます。片手を失ったトーゴは慌てふためき、どこかへ走っていきその後どうなったのかは誰にも分かりません。燃え盛る手を見て大笑いする主人はその手を柱に縛り付けている第一夫人の足元へと投げ捨て、描写はありませんがおそらく第一夫人は焼け死んだと思われます。
屋敷から逃げ出したマイケルたちでしたが、砂漠地帯でまたもや迷子になってしまい、さらにはマーガレットが「もう走れない!」等とほざき始めます。「逃げ切れないだろうし、逆に今屋敷に戻るとは流石にあいつらも思うまい」というマーガレットの謎理論によって再び屋敷に戻ったマイケルたちでしたが当然主人が待ち構えていました。
意を決して護身用の銃を主人に向かって発砲するマイケルでしたが、ノーリアクションでカメラ目線のまま主人が立ち尽くすピンボケの映像だけで、倒せたのかどうか何も分かりません。
その後、数日あるいは数週間が経過したのか誰にもわかりませんが、女性の二人組が道に迷ってしまい、あの屋敷に辿り着いてしまいます。すると出迎えたのは虚ろな目をしたマイケルであり、トーゴと同じように「主人の留守を任されています」と一言。さらにはあの夫人たちのようにマーガレットとデビーが妻として迎え入れられていることが分かったところで物語は幕を閉じます。
マイケルがトーゴの役割を担っているというラストから見るに、トーゴも以前にこの屋敷に迷い込んで奥さんを奪われているのかもしれません。『男は従者、女性は主人の妻となり、最後は生贄として捧げられる』というのが、被害者たちが屋敷に迷い込んだ時点で定められてしまった運命なのかもしれません。
そして今作でトーゴ役を演じたジョン•レイノルズ氏は映画が初上映される約一ヶ月前に散弾銃を用いて自ら命を絶ってしまったそうです。今作の撮影中、レイノルズ氏はトーゴという役がギリシャ神話の精霊•サテュロスをモデルにしていることから自身の足や歩き方が山羊に見えるようにお手製の器具を装着して撮影に臨んでいたそうです。しかし、この器具が原因で膝に後遺症が残ってしまった同氏は、自死をするまで常に鎮痛剤を服用しており、さらにはデビー役のネーマン氏曰く、レイノルズ氏は撮影中にLSDを使用しており、いつも酩酊状態だったと証言しています。なもんでトーゴの呂律が回っていない喋り方や妙な動きは全て演技ではなく薬物によるものだったと思われます。
これらのエピソードを踏まえたうえで視聴するとまた違った見方も出来ますし、70分程の作品なので最悪ドブに捨ててもギリ我慢出来る尺です。もし心に余裕がございましたらば是非ご覧になってみてください。超絶オススメです!
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