スクリームの黄金タッグが贈る!狼になっちゃった姉弟が巻き起こすドタバタ愛憎劇「ウェス・クレイヴン’s カースド」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(703日目)
「ウェス・クレイヴン’s カースド」(2005)
ウェス・クレイヴン監督
◆あらすじ
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ある月夜の晩。テレビ局に勤めるエリーと学生ジミーの姉弟は、ロスの山道で対向車を巻き込んだ交通事故を起こしてしまう。2人は横転した対向車の女性運転手を助けようと森に入るが、絶滅したはずのオオカミらしき動物に襲われ、その餌食となった女性運転手は惨殺されてしまう。獣の襲撃で傷を負った2人は、その直後から感覚が鋭敏になり、身体能力とセクシーさが驚異的に増していく。そのあまりの変化に当人も周囲も戸惑うなか、凄惨な殺人事件が続発し…。(Amazon.co.jpより引用)
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『狼人間に襲われたことで狼化してしまった姉弟がトラブルに見舞われるドタバタ愛憎劇』を描いたサスペンスコメディホラーです。
めちゃくちゃ見応えがあるわけでも、何かしらのメッセージみたいなものもこれといって無く、映像作品として絶賛するほど面白いか?怖かったか?と問われると微妙なところではありますが、肩肘張らずにお菓子を食べながらダラダラと見るのにちょうど良い娯楽映画に仕上がっており、個人的には結構好きでした。
タイトルに「ウェス・クレイヴン’s」と冠が付いてるいるぐらいなので皆様もうお分かりかと存じますが、今作の監督を務めたのは「エルム街の悪夢」シリーズや「スクリーム」シリーズなど、サスペンスやクライムホラーを得意とする巨匠ウェス・クレイヴン氏です。
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そして脚本には同じく「スクリーム」シリーズ(1.2.4)や「ラストサマー」(’97)、さらには私の大好きな「パラサイト」(’98)など、学園を舞台にして恋愛や青春などの要素をうまいこと取り入れたティーンズホラー映画に関してはもはや右に出る者がいないケヴィン・ウィリアムソン氏が起用されています。
『スクリーム1.2を手掛けた最強タッグがお送りする狼男映画』ってどう転んでも面白くなりそうなものなんですけども、中々どうして上手いこと噛み合っていないと言いますか、『面白いは面白いんだけど見る側のハードルが上がり過ぎていたため、それを超える程ではなかった』というのが私の正直な感想です。
詳しくは後述しますが、『狼に襲われたことで呪いにかけられた主人公姉弟は異常なまでに感覚が研ぎ澄まされ、さらには身体能力が爆上がりしたことで異性からも同性からもモテモテになる』という中盤の展開はくだらなさもあって相当面白いです。
なんですけども、そのコメディシーンがどれも絶妙にコメディっぽくないというか、やってること自体は面白いけど、単調で大人しめのBGMやその場の空気感なのか、視聴者を笑わせようという意図があまり感じられません。
朝起きたら庭におり、しかも素っ裸の状態で、さらにはそれをご近所さんに目撃されるシーンってだいたいはギャグっぽく描くと思うんですけど、今作ではそういったシーンもさらっと流してしまうので、作り手側としてはあまりコメディテイストにしたくなかったんでしょうか。
20年近く前の作品なのでCGのクオリティは少々アレですが、狼男のビジュアルや迫力は中々のものです。なんですけども、思っていたほど暴れ回ったり、人を襲うシーンが多くないので、どっちつかずというか、何を見せたい映画だったんだろうとは思ってしまいました。
一説によると、今作は製作や脚本の都合で1年以上撮影が長引いてしまい、スケジュールの都合もあってか出演予定だったキャストの一部が降板してしまったり、中には撮影中や撮影後にクレイヴン監督と喧嘩をして降板を申し出るキャストもいたそうです。
降板したキャストの中には「スタンド・バイ・ミー」(’86)のコリー・フェルドマン、「ピザ男の異常な愛情」(’08)のイリーナ•ダグラス、「アリゲーター」(’80)のロバート・フォスター、「エルム街の悪夢」シリーズのヘザー・ランゲンカンプ、「海底47m」(’17)のマンディ・ムーア等など、映画好きからすると生唾ものの錚々たるメンツが含まれているようです。
もし制作がスムーズに進行し、誰一人欠けること無くこれらのキャストが勢揃いしていたらと思うと残念ではありますが、十分に楽しめる一作であることには変わりありませんので、これから視聴される方もどうかご安心ください。
現在、アマゾンプライムにて99円でレンタルが可能です。見応えがあり過ぎる映画ばかり見ていて脳が疲れてしまった方にもオススメです!
◇ある晩、TV局に勤めるエリーと高校生の弟のジミーは運転中に急に飛び出してきた獣にぶつかり、対向車と事故を起こしてしまう。対向車のドライバーを救助しようと試みるも先程の獣が襲いかかり、女性を喰い殺し、さらには二人も軽傷を負ってしまう。その日を境に2人の掌には野獣の呪いの刻印が現われるようになり、異常なまでに五感が研ぎ澄まされ、血や生肉を欲し、さらには運動能力も人間のそれを凌駕するようになる。そんな折、エリーの同僚があの獣に惨殺されたり、ジミーを噛んでしまった愛犬ジッパーも凶暴化したりと散々な目に遭う二人。謎の獣の正体は…そして二人の呪いは解けるのか…
というのが本作の中盤までの細かい流れになっております。
今作では『狼人間に噛まれたり、爪で引っ掻かれたりすることで呪いが移って狼人間になる』、『呪いを移した相手を殺せば呪いが解ける』という設定があり、呪われると掌に五芒星のようなアザ(野獣の呪いの刻印)が浮かんでくるため、それで相手が狼人間かを判断したりします。
このあたりの『見た目は人間だけど、もしかしたら狼人間かも』と疑心暗鬼になる展開は「スクリーム」っぽいですね。
エリーの同僚で高飛車で性格が悪いジョアニー、ジミーが片想いをしている同級生のブルック、その彼氏でジミーの事をホモ野郎と罵ってイジメている不良のボー、この3人が作中でコメディリリーフとしてある程度機能しているため、主人公姉弟が振り回される構図が分かりやすくなっており、非常に見やすかったです。
ジミーが覚醒して雄としての魅力が増していくとブルックもジミーのことを意識するようになり、さらには実はゲイだったボーまでもがジミーにアタックするようになります。もちろんこういったセクシャル的な部分を笑いにするのは良くないことではあるんですけども、この奇妙な三角関係は面白かったですし、なんだったらボーの方が一途だしちょっと乙女なところが可愛らしく、出番もブルックよりはるかに多いため、実質ヒロインのようなポジションになっているのも良かったです。
狼人間になるとその大きくて鋭い爪や牙で人間に襲いかかり、また嗅覚や運動能力も優れているため、一度狙われると逃げ切ることはほぼ不可能となります。物語中盤で狼人間がエリーの同僚を駐車場で襲うシーンなんかは特にこの狼人間の脅威を感じられてめちゃくちゃ良かったです。欲を言えばこういうシーンをもっと見たかったです。
ここからは完全なネタバレになってしまいますが、結局のところ、この一連の騒動を引き起こした犯人である狼人間はエリーの恋人のジェイクとその元カノのジョアニーでした。
ジェイクは“野獣の呪い”で狼人間として生まれ、時たま衝動を抑えきれずに人間を襲っており、またジョアニーもジェイクと交際していた時に噛まれたことで狼化していたというわけです。
『ジェイクはなぜ生まれつき呪いにかかっていたのか、そもそも野獣の呪いとは何なのか』等に対する説明が作中でもほとんどないため、もし狼人間の脅威を軸に描くのであればこの辺りの説明や掘り下げは欲しかったですし、もしそれを省くのであればもっとコメディに寄せて欲しかったです。
狼化して姉弟に襲いかかろうとしたジョアニーが大勢の警察が駆けつけたことで姿を隠した際に、エリーの「正体は狼人間だけど、もしかしたら人間の姿になって隠れてるかも。ヒップは貧相で脚はブヨブヨ、肌はボロボロなのが特徴で〜」という明らかな挑発に腹を立てたジョアニーが窓をぶち破り、「そんなのウソよ!」と中指を立てたところを警察たちから蜂の巣にされて死亡する。
というシーンからして絶対にコメディだと思うんですけど、これもまた割と真面目っぽく描かれています。例えばこの場にボーがいて、ジョアニーが撃たれるのを目撃してちょっと面白い感じで驚きのリアクションをするだけでも成立すると思うんですけど、作り手側からするとそれは意図するものではないのかもしれません。
クライマックスでは呪いの元であるジェイクを姉弟で狼の力を使って見事に打ち倒し、呪いが無事に解けるという王道の大団円で、これも非常に気持ちの良い終わり方でした。
もしこれがもっとコメディに吹っ切っていたら私は相当好きになっていたと思うんですけど、そこは好き好きだと思います。先述しましたが今ならアマゾンプライムで99円で見られますので、もしよかったら皆様の感想もぜひお聞かせください。
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