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“失神、卒倒、失明者続出”まさかの誇大宣伝!?実際はいぶし銀な一作「サランドラ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(537日目)

「サランドラ」(1977)
ウェス・クレイヴン監督

◆あらすじ
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トレーラーで旅していたボブ・カーターとその家族一行はかつて核の実験場だった民間人立ち入り禁止エリアに迷い込む。しかもそこで車が故障。荒野の真ん中で立ち往生するボブたちはやがて思わぬ恐怖に遭遇する。彼らは異常な殺人鬼一家に襲われ、次々と犠牲に。しかも赤ん坊も連れ去られてしまい……。(映画.comより引用)
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「エルム街の悪夢」シリーズや「スクリーム」シリーズでおなじみのヒットメーカーであるウェス・クレイヴン監督のデビュー2作目にあたるのがこの「サランドラ」です。

ウェス・クレイヴン監督
(ウェス・クレイヴンWikipediaより引用)

『かつて核実験場だった土地を訪れた旅行者たちを殺人鬼一家が襲う』

というシンプルな内容ながら、15世紀頃スコットランドに実在したアレクサンダー•“ソニー”・ビーンという一族を率いて多くの人間を殺害、金品を奪い、その人肉を食べていた猟奇殺人鬼一族をモデルにしており、かなりリアリティがあります。

現在、配信などはないようです。私は浜田山のTSUTAYAにてレンタルさせてもらいました。

ちなみにアレクサンダー•“ソニー”・ビーンのWikipediaがかなり読み応えあるのでもしお時間ありましたらぜひ↓

今作は正直なことを言うとかなりシンプルな作品でした。

“旅行者が殺人鬼一家に襲われるも徐々に反撃に打って出る”という良く言えば王道の展開、悪く言えば意外性が無いストーリーですし、グロ描写や殺害シーンがとりわけクオリティが高かったりインパクトがあるわけではありません。

インパクト大の殺人鬼•プルート
(moviewalker.jpより引用)

更にはジャケ写にもなっている奇形の殺人鬼プルート↑は『核実験の被爆の影響で奇形児として生まれたため捨てられてしまい、殺人鬼一家に拾われた』

という今なら完全アウトな設定も相まって、中々に日本での知名度は低めです。

日本での公開は1984年で、おそらく日本の配給会社的にはインパクトのあるグロ描写やキャッチャーな殺人鬼が登場して人気を博した「悪魔のいけにえ」(’74)のように売り出したかったのかかなりの誇大宣伝に打って出ます。

もしかしたら『パンチ弱めのこの作品をどうにかしてヒットさせたい!』という気持ちが前に出過ぎてしまったのかもしれません。

配給元である東宝東和は本編には一切登場しないジョギリ(改造牛刀)というオリジナルの凶器を描いたポスターなどによる宣伝を行い、更に公開時にはジョギリのレプリカを作製し、劇場に展示したそうです。

natalie.muより引用
この真ん中のがジョギリです。
(natalie.muより引用)
natalie.muより引用

ポスターをよく見てみると

•ご注意下さい あなたの眼が破れます。

•これが噂の《ジョギリ•ショック》だ!

•そいつが来ると、誰でも眼が破れます

•悪の主人公〈サランドラ〉が凶器ジョギリを振りかざし、次から次へ残忍な殺しを展開

•失神、卒倒、失明者続出。全米38州でいまだ上映禁止!

などなどかなり過激な文言が見受けられます。

ショックなシーンを見て失明は流石に無理があると思いますが、個人的にはこういう誇大宣伝は時代を感じられるので好きです。

ちなみに原題は「The Hills Have Eyes」で、「サランドラ」という邦題は東宝東和が勝手に付けただけです。

悪の主人公〈サランドラ〉などと書いていますが、サランドラという登場人物は当然いません。補足しておくと、“サランドラ”は四大精霊の“サラマンダー”(サラマンドラ)」をもじった造語だそうです。

そしてこれらの誇大宣伝の結果、いざ蓋を開けてみると広告と本編の内容は異なるし、ジョギリなんて凶器はただの一度も登場しないしで、怒った観客は展示されていたジョギリのレプリカに“嘘つき”と落書きをした上でへし折ったそうです。

配給元も配給元ですが、観客も観客で中々にマナーがヤバいですね(笑)

先述しましたが内容はかなりシンプルですが、しっかりまとまっており個人的にはかなり楽しめました。

今作の戦犯は、「行くな」と言われた地域に立ち入り、車をおじゃんにして、全ての選択肢をミスり、家族を危険な目に合わせた上で酷い殺され方をしたボブ(被害者家族の長)です。

“サボテンを口に突っ込まれた上で爆発させられる”

という殺し方は中々にインパクトがありました。

そして、このボブよりも彼らが飼っているシェパードの方が遥かに優秀です。プルートを含む殺人鬼数名を殺害したり、無線を奪うなど大活躍を見せ、今作のMVPと言って過言ではないでしょう。

そしてDVDにはNG集や予告の他、未公開バージョンのエンディングが収録されています。

劇場公開版は殺人鬼一家のルビーが被害者家族側に味方をしたことで形勢逆転。殺人鬼一家の長男を協力して殺すシーンでスパッと終わります。

しかし未公開バージョンではその後に殺人鬼一家の父親を殺害するシーン(劇場版では長男殺害シーンの前にそのシーンがあります)があり、その後ルビーと被害者家族の間に絆が生まれ、固く手を握り合い幕を閉じます。

個人的にはこの未公開バージョンの方がキレイな終わり方だなとは思いました。

ですが実際のところ、リアルタイムでこの作品を映画館で見ている人からしたら終わり方どうこうよりも、身長2m超えで体重200キロ超えの怪物•サランドラなんて1ミリも出てこないし、ジョギリもなけりゃ、失明するほどのショックなシーンも皆無なわけですから肩透かしもいいところですよね。

そう考えてみると、虫の居所が悪かった人がジョギリに落書きをしたり、へし折ったりする気持ちも分からなくはないですね(笑)

もちろんモノに当たるのは駄目なことですから、「誇大宣伝じゃないか!」と思われる作品に出会ったとしても笑い飛ばすぐらいの心の余裕を持っておきたいものです。

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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