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尺が足りないのならゆっくり動けばいいじゃない。常軌を逸した尺稼ぎに圧倒される低予算B級SFホラー「魔獣星人ナイトビースト」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(800日目)
「魔獣星人ナイトビースト」(1982)
ドン•ドーラー監督
◆あらすじ
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ある小さな町に宇宙船が墜落し、凶暴なエイリアンが放たれた。保安官のジャック・シンダーたちが調査のために現場に到着すると、激しい戦闘となる。汚職まみれの町長はエイリアンに立ち向かおうとせず、ジャックは町の人々を守るために立ち向かう。(Filmarksより引用)
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『田舎町に突如現れた凶暴なエイリアンに対し、保安官たちは必死の抵抗を見せるも為す術なし。悪徳町長は保身に走り、見て見ぬふり。そして今、エイリアンと町民による壮絶な死闘の火蓋が切って落とされた!!』
という、王道のB級SFホラーです。
エイリアンのデザインが非常に個性的で面白く、光線銃を浴びた人間は跡形も無く消滅するという雑な設定が80年代の緩さを象徴しているかのようで個人的には相当ハマりました。やっぱり私はこういうおバカな映画が大好きです。
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ちょっとゴリラっぽいですけど意外にスタイルが良いです。
(https://m.imdb.com/title/tt0086013/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
内容的にはそんな真新しい展開や要素も無く、本当にごくありふれた80年代のB級ホラーなんですけども、そんな今作が唯一類似作と一線を画している点が“常軌を逸した尺稼ぎ”です。
私もこの企画を含め1000本以上のホラー映画を見てきているので、もちろんその中にはストーリーに全然関係無いようなシーンややり取りを入れることで尺を引き延ばしている作品もあります。
もちろん今作でもそういった定番の引き延ばしは見受けられます。
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(https://youtu.be/OiT5mjHOIaY?si=bKHhngeOqzd3cp71より引用)
エイリアン騒動そっちのけで急に主人公とヒロインのベッドシーンが差し込まれたり、全然どうでもいい脇役同士の恋愛や復讐等の無駄シーンはしっかり押さえています。
今作の凄いところはそういったどうでもいいシーンでも重要なシーンでも、とにかくゆっくり動いて、じっくりたっぷり見せるところだと思われます。
さも「この後何かが起きるのでは?」と我々視聴者に期待を抱かせるくらい、主人公たちが事あるごとにたっぷりと時間を使って辺りを窺ったり、様子を見に行ったりするんですけども、結局何も起こりません。
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(https://m.imdb.com/title/tt0086013/mediaindex/?ref_=tt_mv_smより引用)
多分なんですけど途中でトイレに行って戻って来てもストーリーはまったく進んでいません。
それくらいたっぷりと時間を使ってきます。そもそもが80分くらいの短めの作品なんですけども、上記のような信じられないくらいに露骨な尺稼ぎで引き延ばしているため、実際は40分くらいで方が付くお話です。
ここまで酷いと逆にそれが面白くなってきます。短所は短所すぎると長所になるのかもしれません笑
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今作のエイリアンについて少しまとめておくと
地球に不時着してしまったものの帰る術が無く、ただただ田舎町を彷徨い、手当たり次第に人間を襲っていきます。
一応は人間をエサとして認識しているようで、光線銃が破壊された後はステゴロで人間たちに襲いかかります。また、非常に防御力が高いらしく、銃弾等は貫通せず、ダメージもまったく無いようです。そして、物語の後半で電気(感電)が苦手というのが明らかになります。
なんですけども、最後の最後まで意志らしい意志を感じられる描写はありませんでした。自分が暮らしていた星に帰るためにどうにかしようとするシーンとかがあればもう少し作品としての厚みは増したように感じます。
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そんな今作は数々の悪名高い名作B級ホラー映画を生み出してきたトロマ・エンターテインメントの作品です。
「悪魔の毒々モンスター」シリーズでお馴染みの“トロマの大ボス”ロイド・カウフマン氏は今作にはノータッチで、その代わりに低予算映画に定評があったドン•ドーラー氏が監督•脚本を務めています。
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若い頃はいわゆるアングラ系の漫画家として活躍しており、仲間を集めて漫画雑誌を創刊したこともあるそうです。
その後、80年代から本格的に映画監督としてデビューし、今作のようないわゆる低予算のB級ホラーを数本手掛けました。その後、数年の充電期間を経て、90年代の終わりから2000年代の頭まで御活躍されていました。
ちなみにデビュー作からエイリアンものです。ドーラー監督の他の作品がどの程度尺稼ぎをしているのかも見てみたいですね。
現在U-NEXTで配信中です。最近U-NEXTに加入した友人がファミリーアカウントで招待してくれたため、見ることが出来ました。ありがたい限りです。
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◇ある晩、田舎町ペリーヒルに突如として宇宙船が墜落。そして中から現れた凶暴なエイリアンは光線銃で次から次へと町民を殺害。保安官シンダーを筆頭に、人々も必死の抵抗を見せるが刃が立たない。
そんな状況下でも肝心のバート町長は己の保身に走り、州への応援要請すら拒む始末。そして一人また一人と罪のない町の人達が犠牲になっていく。シンダーは同僚のリサやジェイミー、さらには町を守るためにと立ち上がった勇敢な町民たちと共にエイリアンと壮絶な死闘を繰り広げる!
というのが今作の細かめのあらすじです。
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宇宙船の故障でどういうわけだか田舎町ペリーヒルに墜落してしまったドジっ子凶暴エイリアンはとりあえず誰彼構わず人間を光線銃で跡形もなく消したり、内臓を引きずり出したりします。
そして、たちまち警察も出動する騒ぎとなり、保安官と町民の連合チームVSエイリアンの壮絶な銃撃戦がおっ始まります。
都合良く偶然にもエイリアンに銃弾は一発もあたりません。もしかしたら当たってるけど効いてないのかもしれません。一方でエイリアンの光線銃によって次から次へと人間は消滅してしまいます。
さっきまで銃を持っていた男性が武器を細っこい木の枝に変えて、エイリアンの背後から襲いかかるも秒殺される始末。保安官たちは一時撤退を余儀なくされます。
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翌日、銃の名手であるパーキンス(一般人)を招集してエイリアンとの再戦に臨みます。
どうやら地球上の銃火器ではエイリアンにダメージを与えることは不可能らしく、いつのまにか戦いに参加していたおそらくパーキンスだと思われる老人はおそらく息子だと思われるジミーを失うも、しっかりとエイリアンの光線銃を撃ち落として破壊。
エイリアンは退散します。
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保安官のシンダーは悪徳町長のバートに州からの応援を要請するように頼むも、「これから知事が来るし、俺の選挙にも影響するから」とシンダーの要求を一蹴するどころか、避難指示を出すことも禁じます。
そんな町長の命令は無視してとりあえず避難指示を出したシンダーはエイリアンの生態を調べようと無くなった同僚•クーパーの遺体を検死したところ、半分以上が食べられており、どうやらエイリアンは人間を食料として見ていることが明らかになります。
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ここで町の厄介者ドラゴが現れ、シンダーを挑発する一幕があり、その後、若い保安官のジェイミーはドラゴの元カノで現在は自身の彼女であるスージーも助けたいと急に言い出します。スージーのところにだけ避難指示が出ていなかったのでしょうか。
所変わって、スージーの家では今まさにドラゴがスージーに暴力を振るっています。理由は分かりません。きっと理由も無く暴力を振るうヤツなんでしょう。
たっぷりと暴力を振るって出ていくドラゴ。その後すぐにジェイミーたちが駆けつけ、とりあえずはすぐに避難するよう呼びかけます。それを遠巻きから見ていたドラゴはジェイミーたちがいなくなるとまたすぐにスージーの家に押しかけて、またじっくりたっぷりと暴力を振るい、ついには殺害してしまいます。
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そんな折、バート町長は知事を招いて自宅のプールで盛大なパーティーを開くも、駆け付けたシンダーたちが『近くの山から有毒ガスが漏れている』と誤情報を流し、その場の全員を半ば強引に避難させます。
その一方、ルースとスティーブンの診療所をエイリアンが急襲。患者数名を亡き者にし、さらには地下に隠れたルースたちを狙います。
スティーブンはゆっくりたっぷりと時間をかけて一階の様子を見に行き、エイリアンがいるのを確かめると、また時間をかけてルースのところに戻り、『エイリアンがまだいる』という分かりきったことだけを伝えます。
そんな2人が隠れている地下についにエイリアンが侵入。スティーブンは悠長にバケツにゆっくりと水をためるとそれを撒き、謎のスローモーションのシーンを経て、切断された電源コードを利用してエイリアンを感電させて見事撃退します。
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そこへようやく騒ぎを聞きつけたジェイミーがバイクで颯爽と駆け付けます。そしてそこへスージーの遺体が運び込まれてきます。
ひと目で“ドラゴの仕業に違いない”と思ったジェイミーは証拠も何もありませんが一般市民のドラゴをぶん殴りに行きます。
エイリアン騒動よりも個人的な復讐を優先する保安官ジェイミーと町の厄介者ドラゴによるスピード感や迫力は皆無の長い長い壮絶な殴り合いは怒りの力でジェイミーが制しました。
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そんな折、山中でシンダーとリサがエイリアンの急襲を受けます。もちろん勝ち目はないので撤退しますが、全然関係ないところでシンダーがちょっと高いところから落ちて足を負傷。とりあえずリサの家で手当てをしようという流れになります。
傷の手当てが終わると急にシンダーを誘惑するリサ。制服の下には何も着ておらず、目の前で服を脱いだり、シャワーを浴びてあられもない姿を見せつけたりと、シンダーもすっかりその気です。
そして2人のベッドシーンが長いこと続きます。めちゃめちゃ長いです。実尺なんじゃないかと思うくらいに続きます。
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所変わって、全てがバレてしまい、知事からこってり絞られたバート町長は秘書兼愛人のメアリー•ジェーンと共に落ち込み&自棄酒を煽っています。おそらく知事はエイリアン騒動のことは知らないままだと思われます。
そして夜も更けた頃、診療所のスティーブンが「避難したほうがいいんじゃない?」と心配して訪ねてきます。
しかしメアリー•ジェーンはベロベロに酔っ払っており、バートは酔いつぶれています。仕方なく事後のシンダーに連絡をして迎えに来てもらいます。そしてスティーブンが帰った直後にエイリアンが急襲。メアリージェーンは惨殺され、その断末魔を聞きつけた町長は首をねじ切られてしまいます。
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事後のシンダーとリサが町長宅に駆け付けた頃にはもう手遅れ。こうなったら直接州に応援を要請し、自分たちはもう逃げるしかないのではと敗戦モード。しかしスージーを失ったことで修羅と化したジェイミーや診療所のルースたちは「私たちでこの町を守ろう!」と勇気を奮い起こします。
おそらくエイリアンは電気が苦手と踏んだ一行は発電所から大きなコイルを拝借し、ヤツがエサとなる人間の遺体を探しているならばきっとまた診療所に現れるはずだと考え、作戦を実行に移します。
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発電所で死に損ないのドラゴがリサたちの様子をこれでもかとじっくり窺い、そしてついに襲いかかるもジェイミーに射殺されたり、すぐにでもコイルを診療所に持っていかなければならないのにリサが「上着が必要」などと悠長なことを言う一幕もあり、いよいよ一行は診療所にコイルを運び込み、罠を仕掛けます。
シンダーやジェイミーが電線を繋いだり、大木に括り付ける中、見たこともないチェックシャツのヒゲ男(おそらく保安官)やリサがこれまたゆっくりたっぷり辺りを窺って尺をしっかり稼ぎます。
そして全然関係の無いところでスティーブンがエイリアンに襲われたて死亡。おそらく保安官のチェックシャツのヒゲ男も応戦しますが殺られてしまいます。
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なんとかリサとシンダーがエイリアンをおびき寄せ、今まさに甥っ子であるスティーブンを目の前で失い、取り乱しまくりのルースに“電気が流れるスイッチを押させる”という明らかな人選ミスはさておき、エイリアンがまんまと電線に引っかかります。
しかしここで電線を押さえていたジェイミーが「電線が緩んでしまうから俺ごと殺れ!」と謎の男気を見せ、冷静さを取り戻したルースは何の躊躇いもなくスイッチを入れて、ジェイミー諸共エイリアンを感電させて倒します。
黒焦げになって息絶えるジェイミーを見つめるシンダーとリサ。多くの犠牲と引き換えにこの田舎町に再び平和が訪れた。
というところで物語は幕を閉じます。
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そもそも80分と短めの尺ではありますが、随所で露骨な引き延ばしが見受けられます。それがどうでもいいシーンとかやり取りならまだしも、ただ単純にゆっくり動くだけとか何にも起こらないのにずっと辺りを窺うだけみたいな虚無すぎる尺稼ぎが一周回って面白かったです。
流石は80年代の低予算B級ホラーですね。レベルが違いすぎました。こういう作品と出会えることがこの企画の醍醐味かもしれません。オススメはしませんがオススメです笑
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