適当なモゴモゴ呪文で召喚されし悪魔から俺たちの町を守れ!警察もDJもウェイトレスもおじいちゃんも!これぞ全員野球の精神だ!「ヘルブレイザー」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(707日目)
「ヘルブレイザー」(2022)
ジャスティン・リー監督
◆あらすじ
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人里離れた小さな町ホープバレー。ある夜、古代の呪文で悪魔を召喚するカルトグループが密かに集結。その儀式は成功し、町に悪魔が解き放たれた。カルトメンバーたちは悪魔の餌にするため、住民に襲いかかる。迎え撃つのは善良な人々と保安官のグループ。ショットガンや銃、手榴弾と地雷、グレネードランチャーを手に悪魔と人間の激しい攻防が始まる!(Filmarksより引用)
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『邪教徒集団が召喚した恐ろしい悪魔から大切な町を守るため、住人たちが決死の攻防を繰り広げる』という内容の毎度おなじみなB級映画です。
低予算感満載ですし、後半はやや盛り上がりに欠けるし、主人公があまり主人公として機能していないため、「映像作品的にそれってどうなのよ?」と問われるとぐうの音も出ませんが、作り手側が楽しんで作っているのが伝わってくる映画愛溢れる内容に仕上がっており、個人的には結構好きでした。
私はここ最近、“B級映画見たい欲”が異常なまでに高まり過ぎて、昨日、一昨昨日と『ゾンビ✖忍者』というマニアックにも程がある映画を見ていることもあり、逆にまだ見ていない名作ホラーを見なければなと思っているんですけども今日もまたB級ホラーです。良くないですね。
昨日と一昨昨日に見た珍作はこちらから↓
しかも先日、忍者とエイリアンが戦う映画も見つけてしまいましたし、「エクソシスト•シャーク」(’15)の続編となる「帰ってきたエクソシスト•シャーク」の配信も始まったのでそのあたりも近々見たいと思います。
今作の監督を務めたジャスティン・リー氏は今作以外にも如何にもなB級アクション映画を数本手掛けておりますが、そもそも見ている人がほとんどおらず、しかも低評価です。一応、同監督の代表作とも呼べるのが最新作にあたるサメ映画「マンイーター 捕食」(’22)と今作です。どちらも評価は芳しくありませんが、着実にキャリアを重ねておりますので次回作も期待大です。
今作は現在アマゾンプライム、U-NEXT、DMMTV、FOD、hulu、ABEMA、Leminoにて配信中です。大体どの配信サイトでも見られると思いますのでNetflix以外はいける!と覚えておくと良いと思います。
◇田舎町ホープバレーの片隅で怪しい集団が奇妙な儀式を行っていた。彼らが召喚した異形の怪物は生贄と思わしき人間に入り込み、そのままどこかへと姿を消した。その一部始終を目撃していた頑固者の老人•ビルは警察に相談しに行くも誰一人として聞き耳を持たない。しかしそれ以降、平和だったホープバレーで次々と怪事件が発生。赴任してきたばかりの保安官•グループたちは捜査を進め、邪教徒集団、そして悪魔の存在に辿り着く。
というのが細かめのあらすじです。
めちゃくちゃ低予算で作られたであろう今作ですが、中盤までは低予算なりの工夫が随所に施されており、かなり面白かったです。専門的なことはわかりませんが、カメラワークやカット割りとかなんですかね。そのあたりが凄く良いので構成がのっぺりしておらず、普通に飽きがこない作りになっています。
田舎町に赴任してきた主人公の保安官•グループがベトナム戦争帰りの退役軍人おじいちゃん•ビルから「俺の家の敷地で変な格好した奴らがなんかデカい怪物召喚してたんだけど!」と相談されるも、「そんなのは老人の与太話だ」と誰一人信じることはなく、適当にあしらってしまいます。しかし、それからというもの町で次々と異変が起こり、いよいよなんかヤバいことが起こりそうだぞ!という、不穏な空気が漂い始める中盤までのこの流れは完璧だと思います。
ここまでで町の住人を含む主要人物をほとんど登場させており、大体どんな感じのキャラなのかもそれぞれ分かるようになっているので後半から「この人誰だっけ?」みたいになることがありません。あと、ビルが自分の命を狙ってくる邪教徒集団を地雷やトラップで全滅させるシーンなんかは映像的にはぬるいんですけども面白いです。
しかし、中盤以降の肝心の悪魔が登場してからの展開は低予算なりの工夫ではカバーしきれておらず、尻すぼみになっていました。
後半は住人たちが皆で協力して邪教徒集団や悪魔と戦いを繰り広げるんですけども、このあたりの戦闘シーンがどうしても映像的にぬるいです。銃で撃とうがナイフで刺そうが基本的に血飛沫は一切無く、ただ倒れるだけです。一応、あとから合成で血飛沫を足しているシーンもあるんですけど中途半端に数シーンだけそれがあるので、それならば全部やるか一切やらないかのどっちかにしたほうが良かったと思います。ボビーが邪教徒に刺された時に傷口から血が出ていないのも残念でした。
邪教徒集団側がそもそもどういう目的で悪魔を召喚したのかもよくわかりません。リーダーっぽいやつも冒頭のシーン以降は一切登場せず、最後の最後で他の町でも同じことを計画していることが示唆されているのでおそらくは『あらゆる場所に悪魔を召喚し、町を次々に壊滅させて世界を我が手に』という目的があるのかもしれませんが、流石に説明も設定も無さすぎました。あと、冒頭のシーンではリーダーの後に続いて他の邪教徒たちが呪文を詠唱するんですけども確実に何人か言えてないです。モゴモゴ言って誤魔化しているのがバレバレです。
そして最初の方でも少し述べたんですけど、主人公の保安官•グループが中盤から終盤にかけて謎に20分くらい登場しません。80分程の作品で主人公が20分不在はちょっと良くないかもしれません。
中盤で邪教徒を退けたビルはおそらく悪魔にやられてしまい、その現場に駆けつけたグループと婦警のリズも悪魔の襲撃を受けてリズは死亡。グループは近くの地雷を撃って悪魔を爆発に巻き込んでその隙に逃げたらしく、町の人々が窮地に立たされて大ピンチ!という場面で久々に登場します。一応、その間はグループの同僚であるテディが主人公っぽい感じで話が進むんですけども、あんまりまとまりが無く、話がブレてしまったように感じました。
そもそも主人公のグループについての掘り下げみたいなものが作中で一切無く、バックボーンが明らかになることもないため、『彼がどういう人間なのか』や『なぜ都会からこんな田舎町に赴任してきたのか』などが分からないため、どうしても感情移入が出来ません。あまりにも情報が出てこないし、中盤から20分近く登場しないので「もしかして彼が真犯人なのでは?」とすら思ってしまいます。
ストーリー自体は面白かったので、ここにプラスアルファで『誰の物語なのか』という明確なビジョンがあるとより良くなったのではないでしょうか。あと、クライマックスでグループが悪魔をチェーンソーとショットガンであっさり倒してしまうのも勿体なかったです。「死霊のはらわた」リスペクトな武器は素晴らしいんですけど、もう少し苦戦したり、他の住人たちと協力するとか、死んだと思われていたビルが武装した車椅子で颯爽と駆けつけるとか色々やりようはあったのではないでしょうか。
昨今はどうしてもタイパの時代ですから「確実に“面白い”が保証されているものしか見ないよ。見るとしても1.5倍速だけど」みたいな人が増えているようですが、そんな時代だからこそ見たところで何一つ得るものが無い今作のようなB級映画を愛していきたいですね。
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