年に一度の大安売りに招かれざる客が押し寄せる!おもちゃ屋VSエイリアンのドタバタSFコメディホラー「ブラック•フライデー」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(688日目)
「ブラック•フライデー」(2021)
ケイシー•テボ監督
◆あらすじ
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感謝祭の夜。皆が家族や友人と過ごす中、不満を抱えた者たちが大型ホビーショップ「ウィー・ラブ・トイズ」に集まってくる。彼らはここの店員であり、感謝祭の後に控える年に一度の大安売り“ブラック・フライデー”に備え出勤してきたのだ。客にとってはお買い得な日だが、店員にとっては、大勢の客をさばかなければならない憂鬱な日。しかも特別手当はなく、売上倍増で喜ぶのは本社のエリートたち。既に店の外には行列ができている。そんな中、宇宙から飛来して来た未知なる生命体が店の倉庫に潜んでいた。その生命体は人間に寄生し、異形へと変貌し凶暴化。開店と同時に客がなだれ込んで来た店内に、その脅威が近づいていた―。(Amazon.co.jpより引用)
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『年に一度の大安売り“ブラック•フライデー”当日を迎えた大型ホビーショップに潜んでいた謎の生命体は客や店員に次々と寄生し、その数を増やしていく。無気力おじさん店員ケンたちは生き残りをかけて、ヤツらと決死の攻防を繰り広げる』
という、いかにも私好みのSFコメディホラーでした。尺もエンディングを除くと80分程なのでサクッと見られますし、何よりもテンポが良いうえに、アクションとコメディのバランスや緩急が絶妙でめちゃくちゃ面白かったです。そこまでグロくないのでホラー映画やスプラッター描写が苦手な方にもオススメです。
詳しくは後述しますが、登場人物が揃いも揃って濃いくせに、それでいてまったく渋滞することがありません。それぞれが作品内においてしっかり機能しており、役割やポジションが明確なところが個人的には相当ポイントが高かったです。なもんで「こいつはたぶん死ぬな」と思うやつは死にますし、生き残りそうなやつは生き残ります笑
それぞれのバックボーンもそこまで重たくなく、かといって取ってつけたような感じでもない絶妙な塩梅なのが良かったです。「嫌なヤツにも嫌なヤツなりの信念があるんだな」みたいな感じで、どのキャラクターにも感情移入できますし、好きになると思います。
しかもなんと!
「死霊のはらわた」シリーズでお馴染みの皆さん大好きブルース•キャンベル氏がクズでケチな店長役で出演&製作を担当しているというのがホラー映画ファンからするとなんとも激アツです!
キャンベル氏は御年66歳のレジェンド俳優であると同時に脚本家や監督業、また牧師免許を保持しており実際に結婚式に牧師として出席したこともあるそうです。そんな同氏の長編映画デビューはかの有名な「死霊のはらわた」(’83)の主人公アッシュ役で、以降も同シリーズでアッシュ役を担当していました。
「死霊のはらわた」で監督を務めたサム・ライミ氏とは中学校からの親友で、当時から自主映画を撮ってきた仲でした。そのため、同シリーズ以外にもサム・ライミ監督が手掛けた「スパイダーマン」シリーズにも毎回異なる役(リングアナやクラブのフロアマネージャーなど)で出演しています。
余談ですが「死霊のはらわた」の頃は予算も少なく、人手不足だったこともあり、キャンベル氏は製作総指揮にも名を連ねており、以降も同シリーズでは主演兼製作を務めていました。その後のリブート版や最新作である「死霊のはらわた ライジング」(’23)でも製作を担当するなど同シリーズへの愛が伺えます。ちなみに同氏の一番好きな映画は「戦場にかける橋」(’57)だそうです。
そして、今作のタイトルにもなっている“ブラックフライデー”ですが、日本でも聞き馴染みがあるもののじゃあどんなものなのか説明してみろと言われると中々どうして難しいので私なりにざっくりとまとめてみました。
※知らなくても作品の理解度は変わらないので、読み飛ばしてもらっても全然大丈夫です!遠慮なくスクロールしてください。
☆ブラックフライデーとは
現在アマゾンプライムの100円レンタル対象です。おそらく10月末までなのでもし御興味がある方はお早めに!またU-NEXTでも配信中です。
といった感じに展開していきます。
ストーリーも非常にシンプルで、『エイリアンVSおもちゃ屋の従業員たち』の構図が自然と確立されていく流れもキレイです。あと、特に伏線やら作品に込められたメッセージみたいなものがない娯楽映画なので肩肘張らずにまったり見られるのもとても良かったです。作り手側のメッセージが感じられる作品も見応えがあって面白いんですけど毎回だとちょっと胃もたれしちゃいますね。
エイリアンに関してはおそらくアメリカの各地に隕石と共に飛来しており、元々はピンクのブヨブヨの塊(上記画像参照)のような見た目で、人間に寄生することで脳や身体を乗っ取ります。乗っ取られた者はエイリアンのようゾンビのようなそのどちらでもないような見た目となり、凶暴化します。また、寄生された人間に噛まれた場合も同様に乗っ取られてしまいます。
人間に襲いかかり、口から出す白い触手のようなもの(上記画像参照)で寄生者を増やしていきます。最初にやってきたピンクのブヨブヨがおそらくは母体のようで、寄生された人間はその数を増やすとともに、栄養としてブヨブヨに吸収されます。人間を吸収する度に成長し、巨大化。大型ホビーショップの天井を突き破るほどの大きさとなり、最終的には超巨大な人型のモンスターになります。
なぜアメリカにやって来たのかは定かではありません。しかし『寄生を繰り返して数を増やし、自分の栄養として吸収し、巨大な人型となる』というところから見るにおそらくはシンプルに地球侵略が目的だったのかもしれません。
先述した通り、今作は登場人物が揃いも揃って異常なまでに濃いです。「こいつ誰だっけ?」みたいなのがありません。全キャラクターに各々の役割を全うさせ、しっかりと見せ場を作る脚本が素晴らしいですし、役者さんも一人一人がとても印象的で良かったです。
まず主人公のケンはバツイチ子持ちのシングルファザーで、仕事に対する意欲が無く少々だらしないおじさんです。仕事をサボったり、営業中にこっそり酒を飲んだりと、店長のジョナサンや真面目なブライアンからは疎まれています。そのあたりの関係性が後々尾を引いたりもします。
そのちょいワル感が逆に異性を惹きつけるのか、従業員のマーニーとは男女の関係をもっており(閉店後の店内で行為に及んだらしい)、ケンは本気にしていたもののマーニー的には自分の父親と大差ない年齢のケンと付き合うつもりなど毛頭なく、ただの暇つぶしだったことが後に明らかとなります。
気弱で潔癖症のクリスや途中で離脱してしまう大柄でムキムキのアーチーも美味しいポジションで、クリスの成長やアーチーの大立ち回りなんかも今作の見どころです。
アーチーはエイリアンからクリスを庇って負傷した際も「おれは大丈夫だから、行け」と自らを犠牲に仲間を守るなど相当かっこいいです。
そして、私の大好きなブルース•キャンベル氏が演じるジョナサン店長は売り上げのことしか頭になく、お客さんのことを獣と揶揄したり、従業員に対して休憩を禁じたりと横暴な性格が見て取れます。しかし物語の中盤、生き残っている従業員たちとバックヤードに隠れながら車座になってハムを食べたり、各々の心情を吐露するシーン(私はこのシーンが一番好きでした)では、自分の気持ちを吐き出し、従業員たちとほんの少しですが打ち解けます。
そして、店を捨ててみんなで裏口から逃げようとなった時には「バカかも知れんがここを愛してる。世界で一番好きな場所だ。店の最後を共にできれば光栄だ」と、店と心中する覚悟を見せるなど男気溢れる一面もあります。このあとすぐエイリアンに襲いかかられて前言撤回しますが。
基本的には嫌なヤツなんですけどどこか憎めず、マーニーから思いっきりぶん殴られたりもするので絶妙にヘイトを集めないキャラでした。
中盤までは籠城した従業員たちがエイリアンたちと攻防を繰り広げたりするんですけども、基本的には二手に別れたりバラバラになったりするため、シーンが目まぐるしく切り替わるのでテンポ感が非常に良いです。その後は先述したバックヤードの会話(いわば給水ポイント)を経て、後半の畳み掛けへと続いていきます。
クライマックスではエイリアンの母体が超絶巨大化し、いよいよ窮地に立たされるも、ここで頼りにならなかった貧弱なクリスが今作最大の活躍を見せて見事に撃退します。
『その後、ケンの娘たちの無事も確認され、生き残ったメンバーで車に乗り込み意気揚々と避難所に向かうも、遠くの方には先ほどと同じような巨大人型モンスターが…』という、まだ戦いは全然終わっていないことを示唆するエンディングも非常に良かったですね。なんだったらその後の話を続編として作って欲しいです。
「おもちゃ屋が舞台なんだからもっとおもちゃを有効活用すればいいのに…」という意見もチラホラ見受けられました。確かにおもちゃを使ってエイリアンを撃退するというのはビジュアル的にもワクワクしますし、ホラー版「ホーム・アローン」みたいで相当面白いかもしれません。その点については個人的にはそこまで気にならなかったですが、このあたりで評価を下げてしまったのかもしれません。
私は相当面白かったんですけどFilmarksだと平均☆2.8とイマイチなので、好みが分かれるのかもしれません。この後、私がFilmarksにも記事を投稿して☆5を付けて少しでも評価を上げたいと思います。オススメです!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓