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ハチャメチャ要素てんこ盛り!なのに超面白いのが憎らしい!脳吸い猿人大暴れシベリア超特急「ホラー•エクスプレス/ゾンビ特急地獄行」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(675日目)

「ホラー•エクスプレス/ゾンビ特急地獄行」(1972)
ユージニオ•マーティン監督

◆あらすじ
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1906年、満州の氷壁から発見された未確認生命体の化石。シベリア横断鉄道で移送の際に目覚めた生物は次々と乗客を襲っていく。発見者であるサクストン卿と、偶然乗り合わせたドクター・ウェルズが事件を解明しようと奔走する中、犠牲者の脳から記憶が消し去られていることが判明する……。(stingray-store.comより引用)
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『地球外生命体が乗り移った200万年前の猿人が鉄道内で復活を遂げて大暴れ!脳から記憶を吸い取るその怪物は次々と乗客に乗り移り、捜査を撹乱していく!』

という、とても70年代に作られたとは思えない尖り散らかしたハチャメチャな内容ながら、これがなぜだかべらぼうに面白いんです!

どこがどう面白いのかを説明しろと言われると難しいんですけど、ずっと見ていられると言いますか、当時の怪奇映画界の二大巨頭であるクリストファー・リー氏とピーター・カッシング氏の名コンビが織り成すハイクオリティな演技が妙な説得力を生むため、カオス過ぎるB級なストーリーでも破綻せず、我々視聴者は納得させられてしまうのかもしれません。

クリストファー・リー氏

クリストファー・リーWikipediaより引用

「世界で最も多くの作品に出演した俳優」、「2007年に存命するクレジットタイトル最多登場俳優記録」、「死亡したシーンを最も多く持つ俳優」としてギネス世界記録に登録されるほどの大スターです。「吸血鬼ドラキュラ」(’58)のドラキュラ伯爵役で一世を風靡し、2000年代に入ってからも「スター・ウォーズ」シリーズのドゥークー伯爵役や「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのサルマン役など、93歳でお亡くなりになるまで生涯現役を貫いたレジェンド中のレジェンドです。

ピーター・カッシング氏

ピーター・カッシングWikipediaより引用

「フランケンシュタイン」シリーズの主人公ヴィクター•フランケンシュタイン男爵、「吸血鬼ドラキュラ」シリーズではヴァンパイアハンターのヴァン・ヘルシング博士を演じるなど、マッドサイエンティストやヴァンパイアハンターなどクールで知的な役柄を得意としており、1950〜80年代のこの手の役の第一人者とも呼ばれています。

業界随一の愛妻家としても知られており、71年に奥様を亡くされてからは体調を崩し、以降は準主役や脇役に回ることが増え、81歳で惜しまれつつこの世を去りました。

亡くなられる3ヶ月前、ハマー・フィルム(「フランケンシュタイン」シリーズや「吸血鬼ドラキュラ」シリーズを手掛けた製作会社)をテーマとしたドキュメンタリー番組のナレーターとして久々に収録に参加。ここで戦友クリストファー・リーと最後の共演を果たすことになります。

そして、この収録では

リーは「世界中どこに行っても必ずカッシングがどうしているか訊ねられる。時にはカッシングと間違われる。これにはほとほとうんざりしている」という旨の発言をしている。この発言は、当時10年近く映画出演がなかったカッシングに対しての「世界中にカッシングのファンがいて、皆消息を気にしている」という意のメッセージである。これに応えてカッシングも「僕らは有名なのだね。また一緒に映画を作らないとね」と微笑んだという。

ピーター・カッシングWikipediaより抜粋

という素晴らしいやりとりがあったそうで、これをリアルタイムで聴いていたらおそらく私は号泣していたと思います。

リー氏演じるサクストン卿(左)とカッシング氏演じるドクターウェルズ(右) この二人のコンビネーションが堪りません。
(ゾンビ特急地獄行きWikipediaより引用)

通算22本の映画で共演したリー氏とカッシング氏は“ホラーの黄金コンビ”と語られる程で、この2人を筆頭にとにかく俳優陣の極上の演技を堪能できるため、俳優や俳優を目指している方々はとても参考になるのではないでしょうか。

現在アマゾンプライムにて配信中です。“私好みのカオスな内容なうえに映画として成立している”という非常に稀有な作品なので個人的には相当オススメです!

イギリスとスペインの合作です。(Amazon.co.jpより引用)

◇1906年、中国四川省。英国地質学会中国探検隊の隊長であるアレキサンダー•サクストン卿は満州で氷漬けにされた200万年前の猿人を発見。さっそく調査をするべく厳重に保管してシベリア横断鉄道に運び込む。しかし、氷は徐々に溶けており猿人は意識を取り戻しかけていた。そんな折、どうしても箱の中身が気になったサクストンの知人で医師のウェルズは荷物係を買収して中を調べさせる。蘇っていた猿人は荷物係を殺害、さらには鍵を奪い脱走してしまう。サクストンとウェルズはミロフ警部たちと協力し、乗客には内密に捜索を開始するも被害はどんどん広まっていく。ようやくミロフ警部が猿人を射殺し、事件は一件落着。かと思いきや今度はミロフ警部が次々と凶行に及び始める。

といった感じで展開していきます。

パニックスリラーとしても十分に楽しめますが、ミステリー要素もあるので探偵モノとしても見るのもありだと思います。あと、登場人物がいちいち濃いのでやりとりが面白いです。

Amazon.co.jpより引用
終盤のワンポイント起用ながら存在感が半端じゃないカザン隊長(Amazon.co.jpより引用)

兎にも角にもまずご紹介したいのが、今作のカオス展開の元凶とも呼べる存在である“氷漬けで発見された猿人”です。あらすじなどにも「猿人の死体が蘇生し、大惨事を引き起こす」等と記されておりますが、実のところ犯人は猿人ではありません。

この状態で200万年は気の毒ですね。
(Amazon.co.jpより引用)

物語の後半で徐々に明らかになってくるんですけども、その一連の騒動を巻き起こした犯人の正体は“別の銀河からやって来た光と熱の塊”であり、当初は仲間がたくさんいたものの、自分だけ地球に取り残されてしまった知的生命体でした。その後は、太古より魚やら動物に乗り移って生きてきたものの、猿人に入ったタイミングでなんらかの原因で凍ってしまい、200万年が経過したところでサクストン卿に発見され、シベリア横断鉄道に運び込まれたということでした。

つまりは

『地球に取り残され、一人寂しく行き続けてきたものの、たまたま氷漬けにされて誰かに発見されるのをずっと待っていた不運続きの地球外知的生命体』

だったというわけです。

対象の生物(人間や動物)の目からその生物の知識や記憶を奪うことができ、奪われた相手は目を潰され血の涙を流し死亡します。ドクター•ウェルズの司法解剖における開頭手術では脳のシワが全て無くなっており(助手のジョーンズ曰く赤ちゃんのお尻みたい)、その脳を見たウェルズが「記憶を奪わたのでは」と仮説を立てました。

この死に顔も相当なインパクトがありました。
(Amazon.co.jpより引用)

また、記憶を奪うのではなく乗り移ることも可能で、猿人の姿の時にミロフ警部によって射殺された際はミロフ警部に乗り移ったり、その後はプジヤルドフ神父に乗り移ったりと目を合わせさえすれば自由に移動が可能です。しかし、カザン隊長を倒すのに手こずったことから、おそらくは対象の精神力などに関係しているのか、相手が屈強な場合は死に至らしめるまでに時間がかかったりと個人差があるようです。

あと、なぜかミロフ警部に乗り移った時だけ片腕が猿人のままという謎仕様がありましたが面白かったで良いと思います。

目を合わせたらもうアウトです。(Amazon.co.jpより引用)

ラストは

『死者を操ってサクストンやウェルズを追い詰めている間にプジヤルドフ神父に乗り移った知的生命体は汽車をジャックして暴走を続ける。しかし、機転を利かせたサクストンたちが先頭車両の連結だけを切り離し、崖底に落として見事打ち倒す』

という、これぞ映画!と言うべき爽快な終わり方でこれまた非常に好みでした。ちなみに邦題だと「ゾンビ特急地獄行」という副題のようなものがついてますがあれはゾンビではないんじゃないでしょうか。雰囲気で付けただけかもしれません。

トンチキな物語ながら一切破綻しておらず、なぜか分からないけど面白く、当時のスターたちの素晴らしい演技も堪能できる良作でした!出演者のバックボーンなんかを踏まえて見るとより楽しめるかもしれません。オススメです!

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渋谷裕輝 公式HP↓


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