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砂漠に巣食う巨大なワーム!だけど本家ではないトレマーズ!中国発のドラマチックなモンスターパニックムービー「トレマーズ 砂の王国」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(740日目)

「トレマーズ 砂の王国」(2021)
シア•バンチャン監督

◆あらすじ
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謎の巨大生物によって文明が破壊されて100年。命の選別により、選ばれた人間だけが「オアシス」と呼ばれる地で安全に暮らしていた。外の地は砂漠化し、巨大生物が地球を支配していた。ある日、トレジャー・ハンターのマー・ボーは、ギャングに捕らわれた生物科学研究所のリウ・ドンと出会う。「オアシス」を目指す彼らは、恐ろしい生物から逃れるために協力をすることに。特別な装甲車両で「オアシス」を探すための冒険に出るが、地中から血に飢えたモンスターたちが襲ってくる。生き残りを賭けた熾烈なモンスターハントが始まる!(Filmarksより引用)
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『巨大ワームが支配する近未来。選ばれた人間のみが入ることを許される絶対安全圏“オアシス”の通行証となる薬品と座標を偶然手に入れた泥棒は要人たちの装甲車に乗せられ、オアシスを目指し危険地帯をひた走る』というディストピアな世界観の定番モンスターパニック映画です。

『トレマーズ』と堂々と題しているため、砂漠地帯に出現する巨大モンスターとの死闘を描いた名作痛快モンスターパニック映画「トレマーズ」シリーズが配信されてる!と思って嬉々として視聴させてもらったんですけども、これはまったくの別物ですね。

本家の一作目やそれ以降の作品はこちらから↓

今作の原題は「沙丘虫暴」であり、私は中国語は分かりませんが“砂漠の虫が暴れる映画なんだな”ということはなんとなく伝わってきます。なもんでこれは完全に日本の配給会社がやってますね。

さすがに“トレマーズ”とそのまま名付けてしまうのはどうなんだろうと思いましたが、今作以外にも「トレマーズ•ライジング」(’06)、「新トレマーズモンゴリアン•デス•ワームの巣窟」(’10)、「シー•トレマーズ」(’10)、「アイス•トレマーズ」(’11)など原題ではトレマーズと題していないにも関わらず、邦題で“トレマーズ”と付いている作品がゴロゴロ出てきました。

これはあまりよろしくないですね。私のようなトレマーズファンが気づかずに手に取ってしまいます。

ビジュアルはかなり好きです(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

原題を確認すれば本家か邦題詐欺かすぐに分かりますが、オススメの見分け方としては「トレマーズ」シリーズの名物キャラにして全作に登場しているガンマニアのちょび髭オヤジ•バート役のマイケル•グロス氏がクレジットされていれば本家です。

マイケル•グロス氏演じるバート•ガンマー。3作目以降は主人公を担います。(video.unext.jpより引用)

“邦題のせいで損をしている”と言いたいところなんですが、正直なところ今作は本家の「トレマーズ」を多少意識しているようにも感じました。一応、オリジナル要素をかなり詰め込み、荒廃した世界を舞台にして差別化を図ってはいるものの、なんかこう上辺だけに感じてしまいました。

低予算の割にはまとまっていますし、巨大ワームのCGもかなり迫力がありますので本家を知らずに今作を見たらそれなりに楽しめるとは思います。しかし展開自体は良く言えば王道、悪く言えばありがちです。クライマックスのどんでん返しもあまり効果的とは言えず、また中盤やラストの展開は“感動させよう”みたいな作為的なものが見えてしまい、個人的にはあまりハマりませんでした。

命懸けの旅に巻き込まれる少女•ビンビン(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

余談ですが今作で監督•脚本を務めたシア•バンチャン氏に関してはこれ以外の情報が何一つ出てきませんでした。おそらくは他の作品が日本に入ってきていないだけのパターンだと思われますが、他にはどんな作品を撮っているのかなども見てみたいですね。

現在アマゾンプライム、U-NEXT、FOD、Lemino、huluにて配信中です。絵的には相当面白いですし、巨大な虫が暴れる映像が好きな方はハマると思います。ですが重厚なストーリーがお好きな方からすると少々物足りなく感じるかもしれません。

Amazon.co.jpより引用

◇20XX年、荒廃して砂漠化した地球は巨大なワームによって支配されていた。人々の心は荒み、犯罪が横行し、貧富の格差はより如実なものになっていた。そんな折、選ばれた人間のみが入ることを許される絶対安全圏“オアシス”の通行証となる防砂薬“NC-5”と座標を偶然にも手に入れた泥棒のマー•ボーはその通行証の持ち主であった製薬会社のスン社長の一行に捕らえられるも、唯一座標を覚えているのは自分だけだということで生かされ、旅に同行することになる。そしてそれは砂漠に巣食う巨大ワームたちとの壮絶な戦いの始まりだった…

というのが今作の細かめのあらすじです。

冒頭に載せてあるFilmarks等のあらすじは魅力的な脚色が施されており、泥棒のマー•ボーがトレジャーハンターになっていたり、スン社長の一行はギャングというよりかは政府のお偉いさんと傭兵たちです。また生物科学研究所のリウ・ドンも捕らわれたという感じではないと思います。

このFilmarksのあらすじの方が近未来のディストピア感が出ており非常に面白そうですが、実際はもうちょっとショボくなります。

なんかちょっと「進撃の巨人」っぽさもありますね。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)
画角が超大型巨人のそれです。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

今作のテーマはおそらくは環境破壊や格差社会になってくるんだと思いますが、凄いそのままというかかなりストレートです。なもんで作品のテーマや設定等はあまり深く考えずに目の前で起きている巨大ワームとの攻防を楽しむのが正解かもしれません。

エレンの「その日、人類は思い出した」みたいですね。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

尺は80分程なので、展開自体はかなりスピーディーかつ展開も多くて楽しめると思います。戦闘シーンも砂漠だけではなく、流砂に飲み込まれた先の廃デパートなど飽きさせない工夫が成されていてとても好印象でした。銃撃戦なども低予算の割には結構派手で爽快感がありました。

火炎放射も大迫力です。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

個人的には登場人物が次から次へと出てくる割にはいまいち関係性や存在する目的が分からず、わりと行き当たりばったりな感じがしました。キャラクターに関しては作り込みの甘さを感じましたが、逆に今作の設定や肝となるクリーチャーに関してはかなりの作り込みが感じられました。

クリーチャーである巨大ワームはラスボスみたいな立ち位置なので基本的には終盤にしか登場せず、それまではワームの幼虫(30cmくらいの蛆虫みたいなやつ)の大群との戦闘がメインになります。

この小さいやつです。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

幼虫だし弱いかと思いきやこれがまたかなり厄介で、数も多いうえに余裕で飛びかかって来ます。一度噛まれた人間は他のワームを呼び寄せてしまうため、その場に置き去りにするか、殺す他ありません。また、ガソリンの匂いが苦手で一時は離れますが、逆に耐性が付いて強くなってしまうので得策とは言えません。

巨大ワームは終盤にしか登場しないため、なんだったらこの巨大蛆虫(1〜2mのも登場します)のほうが印象に残りました。

これが現実にいたら相当キモいですね。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

一般的な虫同様に卵で繁殖しますが、砂嵐が起こると卵の含まれた下層の土が舞い上がり、それが身体に付着すると孵化したワームが皮膚を食い破って体内に侵入してしまうため、卵すらも非常に脅威です。また、プラスチックなど自然に分解されないゴミをエサとするため、そのゴミをなんとかしないと繁殖は防げないようです。

個人的には『なぜそんな怪物のような虫が出現したのか』の説明や設定が欲しかったんですけども、そこは各々のご想像にお任せしますのスタイルっぽいです。

おそらくは環境破壊による突然変異とか荒廃した大地に適合し続けた結果なんだと思います。「ゴミがエサならなぜ人を食べるの?」等と野暮なことを言うのは辞めましょう。

主人公のマー•ボー(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

また主人公であるマー•ボーは特にバックボーンが語られることはありませんが、おそらくはスラム街の泥棒たちの兄貴分的な存在で、いわゆる悪いやつだけど良い奴みたいな感じだと思います。

マー•ボーはオアシスへの通行証を手に入れたことでスン社長の一行に追われた際に自分のせいで罪のない少女が命を落としており、旅の道中もずっとそのことを悔いていました。そのため、旅の途中で出会う一家の一人娘ビンビンをその子と重ね合わせ、不器用ながらも優しく接し、最後はビンビンのために命を落とすというのもありがちかもしれませんが個人的には結構好きでした。

また今作の黒幕でもあるリウ•ドンは、実はリウ•ドンになりすました助手で、防砂試験に必要な薬剤“NC-5”がオアシスの通行証となる事を知って、スン社長に同行していました。つまりは最後の最後で裏切るつもりでしたし、作中でもヒロインのヤンを犠牲にしたり、運転手のリーを殺害したりとかなりのクズキャラとして描かれています。

クライマックスで彼の正体や魂胆が明らかになるんですけども、そのまでに散々っぱらクズな行為を見せつけているためそこまで驚きはありませんでした。

口が妙にリアルで嫌ですね。(https://youtu.be/S64fpVN4i9s?si=WQNqCLdcJ4qUVTZLより引用)

全体通して設定というか用語みたいなのが分かりづらくて不親切に感じました。結局のところ、防砂試験に必要な薬剤“NC-5”が何だったのかも謎でした。防砂試験の説明もありませんし、だいたいはリウ•ドンのあからさまな説明セリフでさらっと概要を言うだけです。もう少しナレーションベースでもいいのでちゃんとした説明が欲しかったです。

低予算の割には良く出来ていると思いますが、また見たいかと言われると微妙なところです。「新トレマーズモンゴリアン•デス•ワームの巣窟」(’10)もレンタルショップで発見したので近い内に視聴したいと思います。

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