全然飛ばないけどタイトルはフライングジョーズ!B級映画大好き俳優が手掛ける初々しい真面目サメ映画【ホラー映画を毎日観るナレーター】(713日目)「フライング•ジョーズ」
「フライング•ジョーズ」(2011)
グリフ・ファースト監督
◆あらすじ
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アメリカの田舎町。川沿いにある家族経営のレストラン“ワニ小屋”は、地元住民や観光客で大繁盛。そんなある朝、迷惑常連客の変死体がレストランの川縁から発見された。保安官は、レストランが管理していたワニが逃げ出し男は襲われたと見て、ボウチャード一家の兄ジェイソンを殺人容疑にかけることに。しかし店を切り盛りする妹のレイチェルは、前夜に目撃した巨大なサメの背びれを思い出し、男はサメに喰い殺されたと確信。兄の疑惑を晴らすべくサメの行方を追うレイチェルだったが、男子大学生の誘いに乗った妹のクリスタルが、ワニ祭りの近くの川へ行ったことを知り、危機感を覚える。(Filmarksより引用)
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『突然変異により淡水でも生息可能となった巨大鮫が田舎町の沼地に突如出現!サメによる変死事件の容疑をかけられた兄を救うため、主人公は家族総出でサメ退治へと繰り出すのだった!』
という、おふざけは一切無しの良く言えば真面目な、悪く言えば地味なB級サメ映画なんですけども、個人的には構成がしっかりしているためかなり楽しめました。
内容の前に今作のタイトルについてなんですけども、今作の原題は「SWAMP SHARK」なので、本来であれば「沼地のサメ」みたいなタイトルになるのが筋だと思います。実際、CSで放送された際は「キラー•シャーク 沼に潜む恐怖」というタイトルでした。本作を視聴した方ならお分かりかと存じますが、作中に登場するサメがフライングつまりは空を飛ぶシーンなどは一度たりとも無く、下記のように跳ね上がって人を襲うシーンを“飛んでる”と表現出来なくもないんですけど流石に無理があると思います。
あらゆるZ級サメ映画を見させてもらっている私としてはフライングというからには自由自在に空を飛ぶくらいのことはして欲しいなという所ではありますが、先述した通り、原題は「沼地のサメ」なのでこれは完全に日本の配給会社がやってますね。もしかしたらなんですけど、ちゃんと見てない可能性もあると思います。予告とかの短い映像を見て「あぁ、じゃあ、フライングジョーズで」みたいなノリで付けたのではと疑ってしまいます。
ちなみにAmazonのあらすじも微妙に間違っており、無実の罪で捕まるのが兄ではなく父親になっていたり、たぶんなんですけどワニ料理店ではなく、ワニ園兼レストランだと思います。
ここまでくるともしかして誰も見ていないんじゃないかとすら思えてきますし、自分が見たものや感想にも自信が持てなくなる今作ですが、低予算作品としてはかなり完成度が高く、優等生な部類に入ると思います。
詳しくは後述しますが、なぜサメが沼地に出現したのかという導入も丁寧に描いていますし、家族皆の力でサメと戦うという展開もベタなんですけどやっぱり好きです。また、レジェンド•オブ•サメ映画である「JAWS」(’75)へのリスペクトを感じるとともに、サメ映画にありがちな『爆発で倒す』というやり尽くされたクライマックスに持っていかずに、しっかりとオリジナリティ溢れる倒し方で終わるのも非常に好感が持てました。
今作の監督を務めたグリフ・ファースト氏は2000年代から俳優として「エイリアン シンドローム」(’05)や「プリズナー」(’07)など数々のB級映画に出演していた役者畑の御方で、現在も俳優として活躍しつつ、自身が監督や脚本を担当してサメ映画やホラー映画を発表し続けています。
おそらくなんですけど、自身が監督や脚本を担当する時は「自分が好きなものを撮る、好きなことを描く」というのがあるんだと思います。なもんでB級のサメ映画やホラー映画ばかりになるのではないでしょうか。もしそうならすごく気が合いそうですし、仲良くなれそうな気がします。B級映画好きは要チェックのクリエイターだと思います。
そんな今作はB級映画好きのグリフ・ファースト氏が手掛けた記念すべき初サメ映画となっています。そのためまだ手探りな感じや固さが残っている印象にはなってますが、今作でコツを掴んだのか、以降のサメ映画では大分はっちゃけております。
今作から2年後の2013年に発表した「ゴースト•シャーク」はその名の通り、サメの霊体が縦横無尽に暴れ回る内容となっており相当面白かったです。
以降はまだ未視聴なんですけども
「シャーク•ショック」(’18)
「ジョーズ キング•オブ•モンスターズ/ナイトメア•シャーク」(’18)
と、B級どころか良い感じにZ級の匂いが漂っているため、これはなるべく早めに視聴したいと思います。
そして、今作は現在アマゾンプライム、U-NEXT、DMMTV、WOWOWにて配信中です。
今作は非常に王道かつ丁寧な構成なので、これと言ってツッコミどころがあるわけでもなく、かと言って“めちゃくちゃここが良かった!”というところもないため、非常にレビュアー泣かせの作品かもしれません。なんですけども、一般的なサメ映画において一番の悪者というか脅威はサメであることがほとんどですが、今作の諸悪の根源はどう考えても町を牛耳っている悪徳保安官ワトソンである、というのが明確なのが個人的には好きでした。
何かしらの目的で密輸業者から巨大サメを手に入れようとしたワトソンでしたが、あまりに巨大&凶暴なサメは輸送中のタンクローリーで暴れ、タンクごと沼地に落ちてしまいます。このサメが本作の舞台となる田舎町で大暴れするんですけども、今まで見てきたアレなサメ映画って大体の場合、“なんでそこに現れたのか”を割と適当に描いていることが多いため、その点に関してもしっかり冒頭で描いているこの作品には好感が持てました。
なんですけども、肝心のなぜワトソンがサメを密輸しようとしたのかの説明がほとんど無いうえにそれも分かりづらく、その後の悪役的な立ち居振る舞い(レイチェルの父親を犯人に仕立て上げる等)や一家のサメ退治を邪魔しようとする目的がはっきりしません。ここは少し勿体ないように思いました。この感じなら仮にワトソンがいなくても話が成立してしまうので、もしワトソンを悪役にするのであればもう少し掘り下げがあったほうが良いと思います。
逆に主人公のレイチェルは家族思いで勇敢な町の人気者というのがとても分かりやすくて好感が持てました。兄のジェイソンが疑われた時も、妹のクリスタルがサメの生息する沼地に行ってしまった時も自らの命を投げ打ってでも家族を助けるんだという強い意志がありとてもかっこよかったです。その他のキャラも味付けは薄めなんですけど役割がはっきりしており見やすかったです。
そしてクライマックスでは『一度は燃料のタンクを噛ませて動きを封じたところを狙撃して爆発させようとするもあえなく失敗。ワイヤー付きの銛をサメに撃ち込んで、モーターボートで引っ張り上げて巨大扇風機に巻き込んでミンチにする』という豪快な終わり方が非常に面白かったです。
ちなみになんですけど、カップルがサメに襲われるシーンや、また別のカップルのイチャイチャに気を取られる警察官がサメに食われるシーン等は尺稼ぎなのかもしれませんが、不自然に長く、テンポが悪くなったように思います。
ところどころ粗もあるんですけど、全体的にまとまりがあって結構楽しめると思います。変なサメ映画ばかり見すぎて脳がバグっている私にはちょうど良い箸休めだったかもしれません。
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓