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“不謹慎”とはこの映画のためにある言葉なのか…人肉饅頭の最凶タッグ再び!「エボラ•シンドローム/悪魔の殺人ウィルス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(637日目)

「エボラ•シンドローム/悪魔の殺人ウィルス」(1996)
ハーマン・ヤウ監督

◆あらすじ
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冴えないチンピラのカイはボスの妻を寝取ったことがバレて殺されそうになるが、逆にボス夫妻を殺害してアフリカへ逃亡する。十数年後、アフリカの中華料理店で働いていたカイは、豚肉を仕入れにサバンナ奥地の村を訪れる。そこではエボラ出血熱が蔓延していたが、カイは気づかないまま村の住民をレイプ・殺害し、ウィルスに感染してしまう。しかし、カイは1000万人にひとりのエボラウィルス耐性の持ち主だった。復活を遂げたカイは香港へと舞い戻り、歩く病原体となって街中をパニックに陥れる。(映画.comより引用)
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☆不謹慎とは

[名・形動]つつしみのないこと。また、そのさま。ふまじめ。「授業中に—な態度をとる」「—な発言」

dictionary.goo.ne.jpより引用

だそうです。

この映画にはまさにこの“不謹慎”という言葉がふさわしいです。

かつて高校野球の某試合にて「甲子園は清原のためにあるのか」という名実況が飛び出しました。この表現を模倣して今作を一言で語るのであれば「不謹慎はこの作品のためにあるのか」ではないでしょうか。

見た者全てを不快にさせる不謹慎さ、不潔さ、そしてバイオレンス描写の数々…きたねぇ映画です。ひたすらに汚いです。これこそがカルト映画なのでしょう。

しかし!

詳しくは後述しますが、見方を変えると不謹慎や不潔という言葉だけでは括れないほどに恐ろしい側面を持ち合わせているのかもしれません。

監督はハーマン・ヤウ氏、そして主演はアンソニー•ウォン氏というあの悪名高き「八仙飯店之人肉饅頭」(’93)の最凶タッグが再び実現してしまいました。

実際にあった事件を題材にした「八仙飯店之人肉饅頭」は非常にショッキングで凄惨なシーンが多く、主演を務めたアンソニー・ウォン氏はこの作品のことを「大嫌い」と発言しておりました。

そんな大嫌いな作品で自身を主演に抜擢したヤウ監督のこれまた同じような血なまぐさい不謹慎映画で「また主役をやってくれ」とオファーされたら普通は断りそうなものですが、しっかり引き受けてしまうところにアンソニー・ウォン氏のプロ根性が見受けられますね。

ハーマン・ヤウ監督(natalie.muより引用)
アンソニー・ウォン氏
本人は黒澤明監督の「夢」(’90)のような静かな作品が好きなようです。(アンソニー・ウォンWikipediaより引用)

ちなみにヤウ監督とウォン氏のタッグは「インファナル•デイズ 逆転人生」(’91)、「タクシーハンター」(’93)、「愛は波の彼方に」(’99)等でも実現しておりますが内容を見る限りまともな映画っぽいです。

シンプルに人肉饅頭と今作が異常なだけだと思います。

現在アマゾンプライム、U-NEXTにて配信中です。

「モラル無視の歩く病原体」すごい文言ですね。
(Amazon.co.jpより引用)

◇香港の冴えないチンピラ•カイはボスの妻を寝取った事がバレて殺されそうになるも、逆にボス夫妻やその子分を殺害。犯行を目撃していたボスの幼い娘は殺し損ねるがなんとかアフリカへ逃亡。その後は現地の小さな中華料理店の従業員として働いていた。ある日、サバンナの奥地にある村に肉を買い付けに行くと、その村はエボラ出血熱が蔓延しており、至る所で村人が死んでいた。しかしカイはそんなことなど気に留めず、倒れている現地の女性を強姦、勢い余って殺害してしまう。この時にカイはエボラウイルスに感染して死にかけるも、彼は1000万人に1人の抗体の持ち主であり、保菌者となって見事生還。自身が保菌者であると知らないカイはウィルスを撒き散らしながら殺人に手を染め、再び香港に戻り、さらにウィルスを蔓延させていく。

あらためてあらすじを書いてみましたが、ヤバいですね。

おそらくは『ウィルスを蔓延させる最低男』というところから話を膨らませていったのではないでしょうか。その撒き散らすウィルスがエボラウィルスに決まったところで、「じゃあカイをアフリカに逃亡させて、サバンナの奥地の村で感染するという流れにするのはどうでしょう?」みたいな打ち合わせがあったのではと想像してしまいます。

オナホ代わりに使用した豚肉を平気で提供するクソ主人公のカイ。頻繁に鼻をすするため、おそらくは日常的に薬物を使用しています。(natalie.muより引用)

主人公のカイはもうどうしようもないクズのスケベでヤク中の殺人鬼なので当然感情移入など出来るはずはなく、当たり前ですが好感も持てません。しかし一片の同情をする価値もない清々しいまでのクズとして描かれ、最期は無惨な死をもって因果応報を体現してくれます。

なもんで映画の主人公としてはこれ以上ないくらいに機能しているのではないでしょうか。

薄っぺらい表面上のクズではなく、視聴者をここまで不快にさせるある意味素晴らしい脚本と構成、そして1994年には“香港電影金像奨”という香港のアカデミー賞で主演男優賞を受賞する程の実力者アンソニー・ウォン氏の演技力が成せる技だと思います。

血なまぐささがダイレクトに伝わってきます。
(映画.comより引用)

『アフリカのみならず香港でもウィルスを蔓延させるカイ』という大筋に、「殺害した人間をミンチにしてハンバーガーのパティにする」というカルト要素や「カイがアフリカに逃亡するきっかけになった殺人事件の唯一の生き残りであるボスの娘•ライがアフリカで10年ぶりにカイと出会う」「エボラウィルスパニックの感染源を突き止めるべく奮闘する医師や警察たち」というサスペンス要素がバランス良く絡まっていくため、めちゃくちゃB級ではありますが映画としては相当面白いと思います。

現地の村人たちがエボラ出血熱による死者を祀る儀式のシーンでは、鶏を生きたまま締めたり、その血を撒き散らしたりとかなり壮絶です。(natalie.muより引用)

ちなみにサバンナでヒョウに追いかけられるシーンは無くても成立しますが個人的には面白くて好きでした。

感染の流れとしては

『サバンナの奥地の村で感染したカイが奇跡的に抗体を持っていたため保菌者となる。そして感染させた後に殺害した店長夫妻をミンチにしてアフリカンバーガーとして常連客に提供。バーガーを食べた者、カイと性行為をした売春婦、カイの飛沫を浴びた者などが次から次へと感染する』

という流れになっています。

『殺害した人間を料理にして食べさせる』というのは思いっきり人肉饅頭なのでおそらくヤウ監督も気に入っている展開なのでしょう。

natalie.muより引用

アフリカで勤めていた中華料理店の店長夫妻を殺害して金銭を奪って香港に戻るという流れも非常に自然ですし、香港に戻ってからは10年前に恋仲だったハーの家で生活を送りながら、行く先々で飛沫や血液によって感染者を増やしていくというのも分かりやすくて良かったです。

ハーの娘を人質にして逃走するカイ(natalie.muより引用)

カイの元々の狂気性や、保菌者であることを知った後の暴走(自らの唾液や血液を撒き散らしながらハーの娘を人質にして逃走)はもちろん怖いんですけど、あくまでそれは映画のフィクションとしての怖さです。

今作の一番の恐怖は“自覚のなさ”ではないでしょうか。

カイが自身がエボラウィルスの保菌者であると知るのは物語の終盤で、それまで一切自覚がありません。なので死体(感染者)処理のために人肉ハンバーガーを提供しますし、当たり前のように売春婦やハーとも性行為をしますし、くしゃみや咳をすることで大勢の人々を感染させてしまいます。

人肉ハンバーガーは大げさにしろ、その他の感染経路はこれまでの歴史上で実際に何度も起こっているわけです。それを映画という形で改めて見せられるとやはり恐ろしいです。この観点から今作を見てみると、ただのカルト映画や不謹慎映画として雑に受け流すことはできないと思います。

U-NEXTより引用

汚いし不謹慎な作品ですが、少し見方を変えるととんでもなく考えさせられる恐ろしい映画なのかもしれません。内容が内容なだけに気軽にオススメはできませんが他の方の感想も聞いてみたいです。

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