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“間違ったターン”でお馴染み!焦らしに焦らす憎らしい演出が堪らない!!あの名作の極上リブート版「クライモリ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(712日目)

「クライモリ」(2021)
マイク•P•ネルソン監督

◆あらすじ
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キャンプをするため友人5人とともにバージニア州の小さな町レンウッドを訪れたジェンは、アパラチア山脈の自然歩道を満喫していた。しかし、好奇心からコースを外れて森の奥に入っていった一行は道を見失い、やがて突然転がり落ちてきた倒木に1人が頭を潰されて死んでしまう。気がつけば周囲には数々の罠が張り巡らされており、彼らは森の中に捕らわれてしまう。6週間後、消息を絶った娘のジェンを捜しに父親のスコットがレンウッドにやってくるが……。(映画.comより引用)
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『森の奥深くへと迷い込んでしまったジェンたちは突如として怪しい格好をした入植者たちに捕らわれてしまう。ジェンの父親は必死の捜索を続け、ついに彼女のもとに辿り着くが…』

という、いわゆる“若者たちがヤバい事件に巻き込まれちゃう系”の王道スプラッターホラーなんですけども、これは非常に面白かったです!

大筋自体はベタっちゃベタなんですけども、その一連の出来事の背景やそれぞれの人物像の作り込みが素晴らしく、またジェンたちが捕らわれてからの父親パートに移るタイミングなど「ちょっと待ってよ!ジェンたちは?どうなったの!?」と見ている我々が気になって仕方がないところであえて違う人物視点の話にするという“焦らしの構成”がなんとも憎らしいです。こんなの途中で辞めるわけにはいかないじゃないですか。見事の一言です。

主人公のジェン(映画.comより引用)

本作「クライモリ」(原題:Wrong Turn)は元々2003年に1作目が公開され、世界中で話題沸騰。“ホラーの帝王”スティーヴン・キング氏も某雑誌のインタビューにて今作を年間ベストワン映画に挙げるほどでした。余談ですが、この1作目は2021年にアマゾンプライムで配信された際の吹替版の邦題がなぜか「間違ったターン-Wrong Turn」というあまりにも直訳過ぎるタイトルに改題されていたことでも有名です。

1作目の大ヒットを受け、以降もシリーズ化して最終的には6作目まで制作され、さらにはシリーズとは一切関係が無いにも関わらず邦題に“クライモリ”と入っている作品が3作ほど確認されています。

•「クライモリ 禁猟区 」(原題:Splintered)

•「バタフライエフェクト•イン•クライモリ 」
(原題:Acolytes)

•「新クライモリ デッド•フィーバー 」(原題:In Fear)

これに関しては原題を見ていただければお分かりの通り、日本の配給会社の悪いところが出ていますね。私のような人間は簡単に騙されてしまうのでなんとかお控えいただきたいものですが、いずれは全て視聴することになると思います。ちなみに「クライモリ 禁猟区 」(’09)は正式なクライモリシリーズの6作目「クライモリ デッド•ホテル」(’14)よりもFilmarksにおいてほんの僅かな差ですが評価が高いです。

そして!

そんな人気シリーズを終わらせる形となった6作目にして最終作の「クライモリ デッド•ホテル」(’14)から7年後の2021年に発表されたのが今作「クライモリ」です。

ジェンを捜索し続ける父•スコット(映画.comより引用)

元祖の方の「クライモリ」(’03)のリブート版とは言われているものの、オリジナル版に登場した食人の一族が登場しないなど、それまでのシリーズとは大幅に内容が異なるようです。当初は「Wrong Turn: The Foundation」というタイトルにする予定だったそうですが、最終的にはリブート版として1作目と同じ「クライモリ」(Wrong Turn)に決定しました。

そんな今作の監督を務めたマイク•P•ネルソン氏は発表作自体は少なめですが、長編映画監督&脚本デビュー作の「ザ•ドメスティック」(’18)は荒廃した世界でギャングたちと闘いながら安全な地を求めて逃げまわる夫婦を描いたサスペンスアクション映画らしく、非常に面白そうなので機会があれば見てみたいと思います。

そして脚本を担当したアラン•B•マッケルロイ氏はオリジナル版の「クライモリ」(’03)の脚本も担当していた御方で、なんと映画脚本デビュー作はあのハロウィンシリーズの4作目「ハロウィン4 ブギーマン復活」(’98)です。

スプラッターホラーとの相性が良いのかもしれません。
(映画.comより引用)

正直なことを言うと、私はオリジナル版未視聴なので「どのくらい内容が違うのか」や「どちらが良かったか」など比較が出来ないため、純粋にこの作品がどうだったかしか書けません。なんですけども、このリブート版でこれだけ面白いわけですからオリジナル版はそれよりも高評価ということを考えるとスルーするわけにはいかないですね。近いうちに必ず視聴したいと思います!

ちなみに以前今作をオススメしてくださった方が以降シリーズは回を追うごとに微妙になっていったと仰っておりましたが、そのあたりも含め楽しみにしております。

現在、今作はアマゾンプライム、U-NEXT、hulu、DMMTVにて配信中です。

制作会社は「バイオハザード」シリーズでお馴染みのコンスタンティン•フィルムです。(映画.comより引用)

◇ジェンを含む男女6人は休暇を利用して、アパラチア山脈の森の中でキャンプをしようと計画を立てていた。その前日に訪れた麓の田舎町レンウッドの人々は皆どこかよそよそしく、執拗に“自然歩道のコースから外れてはいけない”と釘を刺してくる。翌日、広大な自然を満喫していた6人は好奇心からコースを大きく外れて獣道へと入っていき、案の定道に迷ってしまう。すると突然大木が自分たち目掛けて転がってきて、運悪くゲイリーが頭部を挟まれ死亡してしまう。日が暮れて森の中で一夜を明かした一行は翌日、森の至る所に仕掛けられた罠に戦々恐々としながら、ついには異様な格好をした入植者たちに捕らわれてしまう。その一方、連絡が取れなくなったジェンを心配した父•スコットは警察がまともに取り合ってくれない状況に憤り、たった一人で捜索に乗り出した。彼女たちの足跡をたどり、ようやくレンウッドに到着した彼はガイド2人と共に森の中へと足を踏み入れるが、仕掛けられていた罠によってガイド2人は直ぐ様死亡。スコットも捕らわれてしまう…

というのが今作の中盤までの流れです。

映画.comより引用

ジェンたちを襲った入植者たちはアメリカの崩壊を信じ、1859年あたりから森の奥深くに入植をした一団の子孫たちで、独自に形成した集落とコミュニティの中で発展を遂げてきました。おそらくは森中に仕掛けた罠で人間を捕らえ、女性に関しては子孫を残すための奴隷として生かしていたのかもしれません。

そうとは知らずに森に立ち入って、入植者たちに捕らえられてしまったジェンたち。レンウッドの人達もなんで近づいちゃいけないのかをもっと詳しく教えてあげりゃあいいのにと思うのは野暮かもしれません。

木の陰からこちらを伺う入植者(映画.comより引用)

さらにはジェン一行の一人であるアダムは散々な目に遭ったことに腹を立て、怒りに任せて入植者の1人を殺害してしまい、捕らえられたジェンたちは殺人の罪まで着させられてしまいます。罠によって既に死亡しているゲイリーとミラ。そしてアダムは撲殺、ルイスは熱々に熱した鉄の棒で両目をえぐられ生死不明。いよいよジェンと恋人のダリウスも死を持って償わされそうになります。

ここでジェンが意を決して、「彼(ダリウス)は技術者だから村の発展に役立つし、私は若いから子供が産める」と自分たちの存在価値をアピールし、どうにかこうにか最悪の状況は免れるも、ダリウスは若い衆の下っ端として働かされ、ジェンは集落の長の妻となってしまいます。

罠に掛かりまくるアダム(映画.comより引用)
森のあちこちに罠が仕掛けられています。
(映画.comより引用) 

それから数週間後、ようやっとジェンの父•スコットが助けに来て、一度は捕らえられるもジェンの機転や唯一彼女に友好的だった集落の少女•ルシーの手助けによって2人はやっとこさ生還を果たします。ちなみにダリウスは集落に残る道を選びます。

その後、両目を潰された人達が野垂れ死ぬのをただ待つだけの狭い洞窟を脱出経路として通過するシーンのおぞましさたるや無かったです。両目を潰され痩せ細った人間が音にだけ反応して彷徨い続ける様は“これが地獄なのでは”と思わせる破壊力がありましたし、そこで再会したルイスをジェンが何も言わずに射殺するのは心の底からの慈悲だと思いました。

集落の長(映画.comより引用)

しかも、「無事に帰ってこれました」で終わらないのがまた憎らしいんです。そこから良い意味で“そんな嫌なもう一捻り入れないでよ!”と言いたくなるほどに私好みのラストへと展開するのがまた見事でした。エンディングに入ってからもずっと見ていられますし、主人公としてのジェンが一連の騒動を経て、一人の女性としてめちゃくちゃ成長しているのがとても良かったです。

久々の再会を果たしたジェンとスコット(映画.comより引用)

あと、ジェンの父親•スコットを演じているのがマシュー・モディーン氏というのが個人的には相当激アツでした。スタンリー・キューブリック監督の名作「フルメタル・ジャケット」(’87)では主人公のジョーカーを演じ、以降も数々の作品に出演している名バイプレーヤーのモディーン氏がいてくれるお陰で作品が非常に引き締まっていました。

渋くて本当にかっこいいです。(映画.comより引用)

基本的にそれ以外のキャストは主人公ジェン役のシャルロッテ•ベガ氏を含め、若手の方々ばかりでそこまでキャリアがあるわけではないんですけども演技のレベルが非常に高く、セリフが無い時の立ち居振る舞いや驚きのリアクション、痛みに耐える芝居まで一切の抜かりがありません。

また、若い男女がメインのホラーにありがちなお色気担当やプレイボーイがいないという点や、グループ内に同性愛者がごく当たり前にいたり、入植者(襲ってくる側)に同調する者がいたりと、今までの定説を良い意味で変えてくれるニュータイプのスラッシャーホラーだなと感じました。

ミラ(右)役のエマ・デュモン氏の悲鳴や驚いた時の芝居は特に印象的で、なぜこれ以降他作品への出演があまり無いのかが謎過ぎます。(映画.comより引用)

この手のジャンルの作品だと必ずと言っていいほど濡れ場がありますし、特に昭和•平成くらいの作品だと性的マイノリティの方々をギャグ要員として登場させる節があり、内容にもよりますが正直ちょっと嫌だなと思うこともしばしばありました。

なもんで今作も昔のコンプラガン無視の作品も良い意味でも悪い意味でも時代を映す鏡としての役割を担っているのかもしれません。そういった観点から見ても今作は非常に優秀な作品だと思いますし、グロ描写も秀逸なのでオススメです!

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