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眠れぬ夜にはもってこい!時事ネタや社会問題を扱ったディストピア系SFカオスなZ級サメ映画「ウイルスシャーク」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(766日目)
「ウイルスシャーク」(2021)
マーク•ポロニア監督
◆あらすじ
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”サメの噛み付き”から広がったウイルス「SHVID-1」により世界は荒廃した。選抜された科学者たちは老朽化した海底研究施設で、治療法を見つけ出すために日夜奮闘していた。遂に感染したサメから血清を作りだすことに成功し、万事解決に向かうと思われていたが、血清をめぐって科学者同士による権力争いが勃発。そんな中、研究施設の崩落が始まり、封じ込められていたサメも逃げ出してしまい…(https://landshark.crayonsite.com/p/73/より引用)
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『サメの噛みつきから広まったウイルスによって世界は崩壊。海底の研究施設では血清が完成するも、権力争い、ウイルス感染、サメの急襲、施設崩壊など様々な事態に見舞われる。人類を救う血清は無事に地上に届けられるのか!?』という毎度お馴染みのZ級サメ映画です。
今作はコロナ禍に製作された作品で、未知のウイルスの脅威、急を要するワクチン開発、人間同士の醜い争いなどの時事ネタや社会問題をしっかりと織り込み、荒廃した世界を舞台にしたSFパニックサメホラーに仕上がっております。
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中盤までのシリアス路線から終盤の全てをひっくり返すかのような意味不明でおバカなラストはあまりの高低差に情緒がバグり倒します。目を疑うような展開にいきなり突入するため、「チャプターを一つ二つ飛ばしたのでは?」と不安になるかもですが、ただ脚本が無茶苦茶なだけなのでご安心ください。
言うまでもなくサメは低クオリティなCGと資料映像、一昔前のYouTubeでよく使用されていたフリーの効果音、低予算が滲み出るセットや演出、素人同然の俳優陣、特殊メイクは怪物のマスクを被るだけ
等など、もはやこれを求めて見ているまであるZ級サメ映画あるあるのオンパレードで我々の期待を裏切りません。ホッとするとともに私の帰るべき場所はここなのだと再認識させてくれます。
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ちなみに監督はこの企画ではもはや親の顔より見た“ペンシルベニアのスピルバーグ”ことZ級サメ映画職人のマーク•ポロニア監督です。
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(https://landshark.crayonsite.com/p/2/より引用)
改めて同監督のプロフィールをおさらいしますと、1980年代あたりから双子の兄•ジョン氏と共にインディペンデント系映画プロダクション”ポロニア•ブラザースエンタテインメント”を立ち上げ、当時はサメ映画ではなく、いわゆるB級ホラーやSF映画を手掛けていました。
お二人の監督デビュー作がこちら↓
しかし、2008年にジョン氏が亡くなって以降はその悲しみを乗り越えるかのように以前よりもハイペースで作品を量産。多い年では1年で5作も発表するなど映画マニアからもより注目されていきます。2016年に発表した同氏初のサメ映画「シャーケンシュタイン」は色んな意味で爪痕を残し、ここから個性豊かなZ級サメ映画を多く生み出していきます。
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今も第一線で活躍するとともに後進の育成にも余念がなく、後輩たちの作品にも積極的に参加し、また地元ペンシルベニアのマンスフィールド大学では映像論を教えるなど、その活動は多岐に渡ります。
作品のルーツとしては幼い頃に見た日本の特撮怪獣映画からインスパイアを受けたとのことで、CG全盛の時代だからこそあえての手作り感を前面に押し出しています。オリジナリティ溢れるその低クオリティな映像はなぜか中毒性があり、日本でも多くのファンの心を掴んで離しません。
現在Amazonプライム、U-NEXTにて配信中です。75分程の作品ですが、体感時間はその倍です。眠気を誘発してくるため、眠れぬ夜にはもってこいの作品です。不眠症にお悩みの方も是非!
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◇オーストラリアで起きたサメの噛みつき事件から確認された新種のウイルス“SHVID-1”は瞬く間に世界中に広がり、そして猛威を振るった。感染者は死に至り、治療法は未だに見つからず、サメは次々に凶暴化。地球は崩壊の一途をたどっていた。そんな中、海底800mの研究施設では世界トップクラスの科学者たちがワクチンを開発すべく奮闘していた。そんな折、運び込まれた検体に潜んでいた謎のアメーバ状の生物がウイルスを拡散し、外からは凶暴なサメが施設を攻撃。ついには浸水が始まり、いますぐ脱出せねば全員が海の藻屑となってしまう状況に陥る。さらにこのタイミングで奇跡的に血清が発見されるも、責任者のグレゴリーは手柄を独り占めしようと仲間同士の醜い争いに発展。さらにはアメーバ状の生物によってゾンビ化した科学者のアンが施設を彷徨い、次々と仲間に襲いかかる。彼らは無事に血清を地上に送り届けることが出来るのか!?
というのが今作の冒頭から中盤までの細かめの流れです。この中盤まではポロニア監督にしては珍しくストーリーがしっかりしています。面白いかどうかはさておきしっかりはしています。
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『サメの噛みつきから未知のウイルスが広まり、世界中でパンデミックが起こる。科学者たちも頭を悩まし、今もワクチン開発のために寝る間も惜しんで研究に勤しんでいる』
という、冒頭の世界観の説明をナレーションベースで手短に伝えてくれるのは非常にありがたいんですけども、この間の映像が全てフリー素材です。“海ではしゃいでいる人々”も“それっぽい格好をした科学者”も“未知のウイルス”も全て明らかなフリー素材です。
おそらくはコロナ禍で撮影が困難だったからこその苦肉の策かもしれませんが、Z級サメ映画好きとしてはこの『フリー素材を垂れ流す』というのはこれ以上ない大好物です。是非今後もやって欲しいです。予算も限られているでしょうし、削れるところは削りましょう。
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地上はウイルスでエライことになってもはや壊滅状態なので、トップクラスの科学者たちは海底の研究施設に集結し、ワクチンを開発するべく日夜奮闘しておりますが、驚くべきはその人数です。
サメ専門家•クリスティ(主人公)、疫学専門家•グレゴリー(たぶんリーダー)、海洋学と植物学のトップ•アン、施設の管理担当•リクター、警備員•デューク
5人です。
巨大な施設にわずか5人。しかもワクチンに関わっているのは3人です。ここでも“密”を避けているわけです。その意識の高さに感服しますね。
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基本的にクリスティは感染したサメを捕獲し、そこから抗体などを検出してワクチンを作ろうとしており、アンは運び込まれた感染者の遺体から血液などを取って血清などが作れないかと頑張っています。グレゴリーは地上にいる上司のマルドゥーンに進捗状況を逐一報告、毎回ネチネチ責められるのでクリスティたちに早くワクチンを作れとせっつきます。ちなみにグレゴリー自身が何か研究や開発をしている描写はありません。
ということで実質ワクチン開発に関わっているのは2人です。しかもやっていることもバラバラです。同時進行で二つの研究が出来るのでこれは効率的と言えるでしょう。
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そんな中、運び込まれた遺体に潜んでいた謎の赤いアメーバ状の生物が突如アンに襲いかかり、彼女はウイルスに感染してゾンビ化。施設を彷徨い始めます。感染するとゾンビ化するという初出し情報には多少疑問が残りますし、アメーバが何なのかの説明は当然ありません。たぶん100均でも買える玩具のスライムを使用しているのは分かりました。
また、感染したサメの捕獲をするクリスティの補助をした警備員のデュークはサメに噛まれてしまい、体調不良。また偶然にもクリスティが血清を発見するもグレゴリーが手柄を横取りしようと強行策に打って出ますが運悪くアンに噛まれてしまいます。
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さらには施設の老朽化&サメの攻撃により酸素供給ポンプが故障し、あと10時間以内に脱出しなければならないことにリクターが気づきますが、施設内では血清を持ち逃げしたグレゴリーを追うクリスティたち、さらにはゾンビ化したアンやアメーバ生物が彷徨うなど中々にカオスな様相を呈します。
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血清の色や入れ物は毎回変わるし、サメを殺害するシーンは何もいないプールを撃つだけ、明るい通路を歩くシーンではなぜかリクターが懐中電灯をつけながら歩いていたり(39分あたり)、負傷やウイルスによる感染はもちろん血糊をちょっとつけるだけ、都合良くクリスティを襲わないアメーバ等など
意味不明な演出や低予算故のシーンはどれも素晴らしく、中でも遠近法と合成を使ってあたかも巨大なアームでサメを捕獲しているかのように見せるシーンは必見です。
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クリスティたちから逃げ果せ、血清を持って地上に繋がるエレベーターに乗り込んだグレゴリーでしたが、サメの急襲を受け死亡。クリスティたちはリクターが発見した脱出ポッドに乗り込みますが、デュークは乗り遅れて死亡。
残り僅かな血清サンプルを持ったクリスティとリクターは地上へと向かいますが途中でサメが襲いかかり、ポッドを破壊。リクターは食べられてしまいますが、クリスティは奇跡的に浜辺に打ち上げられます。
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なぜかまったく濡れていないクリスティは森の中で発見した小屋で感染者たちに捕まり、血清を奪われてしまいます。ここで突如、それまで一切会話に上がることもなかった謎の存在ミュータントの襲撃があり、その隙にクリスティは逃げ出し、海からボートで沖に出て感染サメに一矢報いようと試みます。
どう見てもだだの湖海にたどり着いたクリスティでしたが、感染者の残党に捕まり万事休す。しかしここでようやく政府から派遣された兵士(マーク•ポロニア監督)が駆けつけ、クリスティは助け出されます。
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今や地上では僅かな生存者がカナダ海外域の深海施設にいるだけで、クリスティもそこで血清の培養を命じられる。しかし潜水艦(沈む前)での移動中に自身の感染に気づき、未来を悲観した彼女は血清を海に投げ捨て、そのまま身投げしてしまう。そして海を漂う血清は感染サメに丸飲みされてしまった…
というところで物語は幕を閉じます。
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謎のミュータントたちの登場や雑な締めくくり方など後半はいつにもましてのボロニア節でファンにとっては堪らない仕上がりになっています。
あと、先述しましたが人によっては猛烈な眠気を誘発する恐れがあるので不眠に悩まされている方はダメ元で今作を視聴してみるのもありかもしれません。個人的には爆裂オススメです!
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