【中国映画】活きる(1993)
監督:張芸謀
出演:葛優、鞏俐など
上映時間:122分
人生初の中国映画「活きる」鑑賞しました。以前から非常に気になっていた映画で、帰国を機にプライムビデオで観ることができました。1940~60年代の毛沢東主席時代の中国を描いているので、政治的な理由で中国本国では放映が禁止されている作品。主演の葛優はカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞している。
1940年代の中国。福貴(葛優)は妻の家珍(鞏俐)の制止も聞かず、毎日賭博に明け暮れている。ついには負けが越して賭博相手の龍二に家屋敷を借金のかたとして奪われ、父親は怒りのあまり悶死し、母親はショックで病身になり、妻は娘の鳳霞を連れて家を出て行く。
福貴は改心し賭博をやめると、それを知った家珍は娘と家出中に生まれた息子の有慶と共に家に帰る。福貴は家を取られた龍二に金を借りに行くが、龍二はそれを出し渋り、福貴の趣味であった歌を生かせばいいと影絵芝居の道具を貸し与える。彼はそれを引っ提げて影絵芝居を始めるが、巡業先にやってきた国民党軍に徴兵される。無理やり共産党軍との戦争を強いられ命からがら生きて帰ってくる。家族とも再開するが娘の鳳霞は九死に一生を得た高熱のために言葉を失っていた。
この映画は先述のように毛沢東指導のもと激動の時代を描いています。国民党と共産党の内戦。製鉄所を作らずに国民全員に手作りで製鉄させ大失敗した大躍進政策。その失政により失脚した毛沢東が学生を煽って自らの地位を向上させようとし、自らを批判しかねない文化人を大量虐殺した文化大革命。これまで文字でしか見たことがありませんでしたが、映像で見るとその惨状がより鮮明に浮かび上がります。
かなりしんどい映画です。本当に起きてほしくないことの連続です。ただこれに耐えることが「活きる」ということでもある。人生とは苦しいものだという仏教の教えが共通しているからこそ、より日本人の自分にも共感できる内容になっているのかも。
しかも共産党政権下では共産党の批判はできません。裏でしてもどこかに共産党員が潜んでいて密告されてしまいます。教育ももちろん共産党に都合のいいように行います。なので国民は生活が苦しくなっても毛沢東を崇める、その姿がなんとも空しい。悲しい希望というか・・・
登場人物の設定は秀逸です。素直な性格のダメ夫に愛情に満ちた妻、子供たち二人もすごくかわいい。特に娘の幼少期時代の笑顔はかわいい。ただあの状況においてはかわいいほど切ない。間違いなくこの映画のキーパーソンです。
「活きる」はまさにタイトル通り、生きるとはどういうことかを示す映画。内容はかなりしんどいが心に残る作品。毛沢東指導の共産党時代を映像で観れるのも貴重だが、そこに終始していないのも好印象。ほかの中国映画にも俄然興味が湧きます。