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2024回顧録〜教育研究領域の模索〜
新年あけましておめでとうございます。
1月というのは新しい1年の始まりであり、年末年始で余白となる時間が多いこともあってか、どうやら自分にとっては文章を書きたくなる季節のようです。
2024年の記憶がなくなる前に昨年を振り返り、文章に残しておこうと思います。2024年は自分の中で教育に学問というアプローチから向き合い始めた最初の年でもありますので、そのあたりに絞って、思考の流れを書き記せたらと思います。
1月:教育学入門
「教育とはそもそも何か」「よい教育とは何か」「何を目的に教育に向き合えばいいのか」という根本の問いに向き合う期間となった1月。
過去のnoteでも書いた通り年始には、教育という学問に向き合っていくうえでとても大きな存在となった、苫野一徳著「学問としての教育学」との出会いがありました。それまで教育をどちらかというとビジネスの面から関わってきましたが、この本と出会い、学問として向き合いたいという気持ちがより強くなりました。
2-3月:教育哲学
1月に引き続き教育学の根本に向き合った期間、特に「哲学」に対しての興味が強くなった時期です。”存在””認識”といった、教育という分野を超えて、科学の根本となっている哲学の考え方を、苫野一徳さんのvoicyを聴き漁ったり、NHKオンデマンドに登録し「100分de名著」を見ながら学びました。哲学の世界の面白さと底知れぬ奥深さを知り「もっと追求したい」という気持ちと、一方で自分の時間の割くべきところはもう少し具体度を上げた部分なのではないかと考え、目途をつける必要があるという思いが交差した期間でした。今現在は少し距離をとりつつありますが、またいつか時間をかけて立ち返りたい場所となりました。
4月:教育史
教育、哲学についての知見を広める中で、「なぜ今の教育に行き着いたのか」ということが気になるようになり、教育史に関心を持ちます。教職で扱われている教育史について目を通したり、「問いから始める教育史」を拝読し、今では当たり前となっている教育の枠組みいかにして出来上がったのかを学びました。
5-7月:大学院探索
これまでも漠然と「大学院に行きたい」という思いを持っていましたが、より現実目標としての大学院を具体的に探すようになりました。研究テーマ(仮)は「P-PBL(パーソナライズドプロジェクトベースドラーニング)の効果を明らかにすること」。そこで行き着いたのが「教育方法論」「教育評価論」というワードでした。「教育方法論」はPBLという1つの教育方法への向き合い方がわかるのではないか、「教育評価論」はその効果を明らかにする知見があるのではないかという仮説の元、気になった大学の先生の論文や著書を読んでみたり、大学について調べてみました。
その中でも特に気になったのが、アメリカのHigh-Tech-Highという学校。世界でもPBLを先駆的に取り組んでいる学校の1つです。そこに大学院もあると知り、俄然興味がわきました。このhigh tech high graduate school of educationという海外の大学が視野に入ってきたこともあり、英語の勉強に力を入れた時期でもありました。
8-9月:停滞
7月までに教育という学問への探求や、英語の学習を順調に進めていたのですが、8-9月はそれらに対してのモチベーションと行動量が低下していた時期でした。自分のメモを振り返ってもこの期間はぽっかり。仕事の夏イベント等によるシンプルな体力切れが大きかったと思います。これまで本などに向き合ってきた休日の時間をことごとくベットの上で過ごしていました。
当時はなかなかに自己肯定感を下げていたのですが、冷静に振り返ると、これは2024年に限ったことではなく、近年この時期はモチベーションや行動量が低下する傾向が…。今年同様なことになってもあまり自分を責めすぎず、「1年の中でそんな時期はあるもんだ」と楽観的に捉えたいと思います。
10月:迷走
8-9月の停滞期を乗り越え、再び机や本に向き合う時間が少しずつ増えてきました。ただ、教育方法論や教育評価論についての文献を読み漁る中で少しずつ自分の中でのモヤモヤした気持ちが芽生え始めます。それは、「これは科学であるといえるのだろうか」ということ。
元々教育に学問から向き合いたいと思うようになったのは、今仕事として取り組んでいるPBLが本当に意味がある教育であるといえるのか(もちろんそう信じて現業に取り組んでいる)、より効果を高めるにはどうすればいいのかを客観的に明らかにしたいと思ったから。
一方で「教育方法論」や「教育評価論」は、とても多いとは言えない自分が文献を読んだ限りの意見ですが、研究者の主観による理論が多く、科学的根拠にかける印象を持ちました。理論は確かに構造的なのですが、裏付けとなる根拠や、理論を実践したことによる結果が定性的で、信憑性に欠ける印象。教育という学問に対しての向き合い方がわからなくなった時期でした。
11-12月:教育経済学
一度0から立ち戻り、教育という学問の全体像を見渡しました。もっと科学的に、信憑性の高い効果検証にフォーカスした研究ができないか。その中で、より科学的に、もっと言うと定量的に研究されている領域が3つあることがわかりました。それは「教育社会学」「教育経済学」「教育心理学」。
そこで教育社会学に関する本を読んだのち、教育経済学へと足を踏み入れます。結論から言うと、現段階で最も自分のやりたい研究に近い(客観的にPBLの効果を明らかにすることができる)分野なのではないかと、ビビッと来るものがありました。
教育経済学において日本で一番有名といっても過言ではない、慶應義塾大学の中室牧子氏が書かれた「学力の経済学」「原因と結果の経済学」そして最新の著書「科学的根拠で子育て」を拝読。著書のタイトルにもある通り、科学的根拠もとにした教育の研究をされていて、いずれもエビデンスに基づいた考察と提言が行われていました。また、この教育経済学について興味を持つ中で「因果推論」という分野を知り、今尚強い関心を持っています。このあたりについては、また別の機会に改めてnoteに書き記したいと思います。
まとめと2025の展望
このように振り返ると、とても計画的とは言えず、相変わらず興味関心が激しく移り変わり、時には足を止めながら、でも確かに教育に学問的視点から向き合い始めた1年間でした。
年末から年始にかけては「教育心理学」にも足を踏み入れました。教育経済学との共通点や違いを感じながら、こちらも中々面白い世界が広がっています。
このように、教育という学問に対し、量的、科学的なアプローチへの興味が次第強まる一方で、一度逆の角度から、つまり教育という学問に対し、科学的なアプローチに対する批判的な見方についても理解を深めたいと思っております。2025年の冒頭はこの辺りに時間をかけることになりそうです。
また、年内には教育研究を本格化するべく大学院への受験を考えております。ただ、上記の通りまだどこで、どの領域でどう研究するか定まりきっていないことに加え、自分のライフプランをどうするかについても迷いがある現状。ずるずる時間だけが過ぎていくことにらならないよう、今年は「変わる覚悟」「変える覚悟」が求められる1年になりそうです。
ただ、どんな時間の使い方を選ぶにしろ、今は教育について考え、深めることの面白さを強く感じています。
本年も”非”定期的に教育についてnoteに書き記していきたいと思いますので、興味がありましたらまたご一読ください。