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アニメ『チ。-地球の運動について-』とEDアポリアから得る、学習と創作のモチベーション

2024年10月5日(土)からNHKで放送が始まったアニメ、『チ。-地球の運動について-』。

天動説が広く信じられ、神への信仰に背く思想は異端として処刑される社会の中で、地動説を証明しようとする人々を描いています。

まだ第2話までしか見ていません(原作は単行本2巻まで読みました)が、もう既に心を動かされています。

今回の第1,2話の中でも、もう好きなセリフがあります。主人公ラファウの、
あんな巨大な天が、一つの発想で、こんなに合理的に、動いてしまったら、この説を、美しいと、思ってしまうッ!!」
というセリフです。

現実世界では「コペルニクス的転回」という言葉ができるほど、歴史上決定的に世界の見方を変えてしまった、天動説から地動説への方向転換。
その裏で地動説を支えるモチベーションは何だったのか。

ラファウのそのセリフや、同じく地動説を志すフベルトからは、その時代支配的だった考え方(パラダイム、エピステーメー)である天動説と、地動説とを最終的には「美」によって判断し、より合理的で美しい方へと言わば突き動かされている状態がよく伝わってきます。

少し話はそれますが、僕は松尾芭蕉の「古人の跡をもとめず、古人の求めたる所をもとめよ。」という言葉が好きです。先人の残したもの自体を追い求めるのではなく、先人の追求した理想やモチベーション、志の部分を追い求めなさいという意味です。
チ。という作品は、まさしくその部分を描いていると思います。自分の直観や美、理性を頼りに地動説を証明しようとする様に、僕は学習や創作への勇気をもらえる気がしました。これからの展開が楽しみです。

また、エンディングテーマのヨルシカ「アポリア」もとても好きな楽曲です。元々ヨルシカファンだったこともあり、リリースから一日でとてもハマってしまいました。

ピアノの旋律からは、工房でペンやコンパスを使いながら作図する姿が何となく連想されました。

好きな歌詞もいくつか引用します。

描き始めた あなたは小さく

長い夢を見た 僕らは気球にいた
遠い国の誰かが月と見間違ったらいい
あの海を見たら魂が酷く跳ねた
白い魚の群れにあなたは見惚れている

広い地平を見た 僕らの気球は行く
この夢があの日に読んだ本の続きだったらいい
あの海を見たら魂が酷く跳ねた
水平線の先を僕らは知ろうとする
白い魚の群れをあなたは探している

ほぼ全部ですね(笑)
「遠い国の誰かが月と見間違ったらいい」とか「この夢があの日に読んだ本の続きだったらいい」とか「あの海を見たら魂が酷く跳ねた」とかが特に好きです。こちらも、聞いていて自分を突き動かす何かに心の底で触れるような心地がします。
気球は、「希求」にも通ずるよう。

また、「白い魚の群れ」からはヨルシカ「月光浴」のジャケット等も想起され、イメージが膨らみます。過ぎる月日の中で、日々こつこつと気球が飛んでいくような、線を描いていくような。

作詞作曲をしたn-bunaさんがコメントを残しているので、それも引用します。

アポリアは哲学の言葉で、答えのない問いや、困惑を意味します。知りようのないものを知りたいという心を、アポリアになぞらえながら書きました。

歌詞に出てくる気球は、際限のない知の欲求の喩えです。気球は地表を離れて、段々と高く登っていく。気球の中から下を覗くと、地表にいた時とは違う景色、海が見えて、そこには魚の群れが白く光っている。そういう曲です。

僕の中でのチ。の解釈は「知」です。


世の中に、もっと知へのモチベーション、「古人の求めたる所」を伝えてくれるような方法、作品やコンテンツが増えることを願っています。
その意味で、チ。は本当に楽しみな作品です。

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