河本蓮大朗 「記憶の重層」
Rentaro Kawamoto 河本蓮大朗
Layers Memory「記憶の重層」
2023年6月10日(土) ー 18日(日)
https://shell102.com/rentaro_layersmemory/
自分の糧になっていったものが積み重なる「記憶の重層」は過去から現在未来へ続く眼差しです。
「過去の海」と名付けたインスタレーションは今まで織ってきた布を部屋一面に敷き詰めます。
私は古布を新たな布へ再生させる作品を作っていますが、その作品もまた時間が経てば古布になっていきます。
止まらない時の中で、私はモノの在り方が不変でないことを思い知るのです。
私はなにやら時間に興味があって、それは布を織ることとも深く関係していると思います。
今年から始めた「Strata」という地層をモチーフとしたシリーズは、古布を織ることで含まれていく時間の蓄積と、地層に見られる時間の蓄積を重ね見ています。
過去作の写真から発想した「反転反復」という新シリーズは、写真という一瞬の時間を留める表現と、織物に見られる反復表現を下敷きに、元となった作品の記憶を新たなイメージへ変化させます。
河本蓮大朗(アーティスト/染色家)
https://www.rentarokawamoto.com/
−河本蓮大朗「記憶の重層」展覧会を終えて(gallery shell102)−
インスタレーション作品「過去の海」は井の頭通りの大きな窓を背に、河本蓮大朗がこれまで製作してきた大きな裂織りの数々を天井から床へ、そして手前へと迫る展示となりました。
「過去の海」を取り囲む壁面には、2023年から始めた「Strata」という地層をモチーフとしたシリーズが飾られ、末広通り側の入口からの通路の壁には過去作の写真から発想した「反転反復」が展示されました。
設営日から約10日間を作品達と同じ空間で過ごしていると、作品の製作時間までも共有している気持ちになってきます。そしてもっと先の、裂かれた古着やタオルがその形だった頃の時間を思ういまの私の時間になります。
「過去の海」は2016年からの大きな織物作品が重なり合い、天井から壁を流れ手前に押し寄せます。まるで波打ちぎわのようです。
海の前に立つと遠くをじっと見つめ、波打ちぎわでは痺れをきらすほどしゃがんで寄せては引く波をずっと見ているあの感覚。
流れる時間に作家自身も紡がれ重なり、よせては返す波に身を乗せて、生物もゴミも全てを受け入れる海。
その清々しさに惑わされ、一見赴くまま自由に織っているようにいるように思えるけれど、緻密な計画とスケッチをもとに制作している作品だからこそずっと見つめてしまう海=時間。
「strata」は地層をモチーフにした作品で、見るからにそれは確かなのだけれど、
大きな織物の作品が時間の創造だとしたら、strata は時間の採取、と言えるような気がします。
フレームに入っていると標本箱で、作品そのものが露わに置かれているとカタマリで。
作家のこれまでの作品で大きな石のようなものがあります。床に置かれたオブジェ作品。それと同じように、フレームに入っていないstrataシリーズは壁面にかけられているオブジェです。
写真を加工した作品「反転反復」は、作家が持つ一番感覚的な作品。
織物は縦と横の繰り返しで、デジタルでは反転と反復。
染色と織物の両感覚を同時に身体化したら光ができた。というのは私の勝手な推理です。
「記憶の重層」展 online shop(期間限定)
https://shell102.stores.jp/?category_id=648c26d396e1cb00302ed019
[展示風景]