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マークの大冒険 フランス革命編 | 最後に選んだもの

前回までのあらすじ
マークは、黄金の果実を手にしたロベスピエールに再度決戦を挑んだ。6本のアムラシュリングが揃った時、果実は弱体化するという。ウェスタからもう一対のアムラシュリングを借りたマークは、ホルスと共にロベスピエールに挑む。だが、果実の力は圧倒的だった。追い込まれたマークとホルスは絶望的な状況に陥ったが、そんな中、マークは無敵と思われた果実の抜け道に気づいた。一か八か命懸けの作戦に出たマークは読みが見事に的中し、ロベスピエールから果実を奪還する。


分岐ルートΨ→ Keys to Peace
Route when returning Amlashlings and the golden fruit to the gods


ロベスピエールと対峙した時、ボクは何が正義なのか分からなくなった。彼にとっては、自分の行いは疑いなく「正義」だった。そこに一点の曇りも揺らぎもなかった。

純粋にこの世界を良くしたい。自由、平等、友愛、そして貧困の根絶こそ、彼の夢だった。身分に関係なく、誰もが平等に幸福を享受できる世界。それが彼が求める理想の世界だった。目指すゴールは、ボクも彼も全く一緒だったのだ。

結果として多くの人間がロベスピエールによって断頭台に送られたが、それは決して悪意から来るものではなく、彼にとっては社会的弱者のことを想った善意だった。

ロベスピエールは最期まで清廉潔白、腐敗することのない男だった。私腹を肥やさず、国家のために人生を捧げていた。ただ、やり方があまりにも間違え過ぎていた。だが、そんな彼を見て、ボクは自分の行いの善悪が分からなくなった。

自分は本当に正しいのか?本当は間違っているのではないか?そんなふうに深く考えるようになって、急に怖くなった。

ボクの思いや行動は、欺瞞なのか?

驕りなのか?

そして、害悪なのか?

ロベスピエールと対峙して、ボクは物事の根本を、そして価値観を一から問い正されたのだった。






🦋🦋🦋



ウェスタの間_____。


白い部屋の天井から降りる螺旋階段を登ると、その先は屋上に繋がっていた。そして、辺りには星が輝く夜空が一面に広がっていた。夜空に包まれた不思議な空間にポツンと一人の人影が見えた。


夜空の間で佇むウェスタ


「果実と指輪を返しにきた」

マークがそう言うと、ウェスタが振り向いた。

「ロベスピエールを止めたのね」

「キミがまた助けてくれた」

「どうかしらね」

「果実と指輪をキミに還す」

「アムラシュリングは、オリエンタルの方もいいの?」

「ああ、ボクにはもう必要ない。この指輪は争いの原因になる。安全な場所で、キミに管理されるべきだと思う。トレジャーハンターごっこは、もうお終いさ。誰かのものを盗んで一攫千金だなんて、間違ってたよ。これからは自分の力で成功を掴み取らなきゃいけない。そう気づいたんだ」

「分かった」

「それじゃ」

マークはそう言うと踵を返し、出口へと向かった。

「マーク」

ウェスタがマークの名を呼ぶと、彼は振り返った。

「ありがとう」

ウェスタは微笑んでいた。

「うん」

「これで今度こそ、本当にお別れだね」

「......」

「寂しい?」

「本当に欲しいものは、手に入らない。でも、だからこそ、ずっとワクワクしていられるんだ。手に入ったら、それでお終いだからね。手に入らないからこそ、人生は美しい」

「ふふ、何それ?」

「本当はもっと前にお別れのはずだったけど、こうしてまた会えたから。ボクはラッキーだ」

「最後に、これを渡しておくわ」

青い蝶の標本



「青い蝶?」

四角い白箱の中に蝶の標本が収められていた。

「青い蝶は、変化と幸福の象徴。あなたの幸運を祈っているわ」

「ありがとう」

「こんなこと言うのは本当に無責任かもしれないけれど、たまにはあの古書店で過ごした日のこと、思い出して欲しいな」

「何度だって想い出すさ。毎日、いつ何時も。そして、これまでの全ての思い出を書き留める。ボクは自分の冒険譚を書くんだ。マークの大冒険、というね_____」



End...





マークの大冒険 フランス革命編 終



🦋🦋🦋



夜空には黄金色を放つ太陽の舟が浮かんでいた。舟の後方には玉座があり、そこには太陽神ラーが腰掛けていた。すると、ラーの前にウェスタが現れた。

「ルイ=シャルル・ド・フランスのことは、特別に不問とします。病死したとして広く知られる彼が、あの世界でもたらす影響は微弱なものでした。そのため、危険性は低いものとして今回の判断を下しました。今は、彼らを信じてみたいと思います」

「それがお前が出した答えというなら任せよう」

「それと、これはあなたに返しておきます」

「重力の指輪か。ローマであやつが使っていたな」

「はい。彼がピラミッドから持ち出したものです。果実と他の指輪は、あの座標に封印しました。それでは、私はこれで。しばらく眠りにつきます_____」




🦋🦋🦋



月曜日、その日は朝から雨が降っていた。通勤ラッシュの満員電車の窓からは、揺れるサラリーマンたちの姿が見える。車内には心地悪いまとわりつくような湿気が漂い、人の熱気と混じって発せられた雨の日特有の不快な匂いが充満していた。疲れ切った表情を浮かべて佇むサラリーマンの群れに、マークの姿もあった。

「はあ、バースデーだってのに仕事かいな。すっかり社畜に染まっちまったな。だが、ポンコツサラリーマンはルイ坊ちゃんのために弱音を吐いてはいられない。世のパパは、みんな偉いぜ。この電車の中の疲れた連中は、みんなボクの同志だ。それじゃあ、地獄の一週間の始まりを祝って、今日も元気にいらっしゃいませ〜!!」






True End 〜最後に選んだもうひとつの真実〜




「だが、マーク。まだ本当は何も終わっちゃいないぜ。ロベスピエールに果実を与えた奴は、今もこの世界の住民に紛れて身を潜めている。まあ、せいぜい束の間の平穏を噛み締めておくんだな。世界には、必ずまた混乱が訪れる。本当の悪は、いつも善を装った顔で近づいて来る_____」




Shelk 🦋

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