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[映画感想]'インサイド・ヘッド 2 / Inside Out 2' (2024) dir. Kelsey Mann

少女ライリーを子どもの頃から見守ってきたヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの感情たちは、転校先の学校に慣れ新しい友人もできたライリーが幸せに暮らせるよう奮闘する日々を過ごしていた。そんなある日、高校入学を控え人生の転機に直面した13歳のライリーの頭の中で、謎の警報が鳴り響く。戸惑うヨロコビたちの前に現れたのは、最悪の未来を想像してしまう「シンパイ」、誰かを羨んでばかりいる「イイナー」、常に退屈&無気力な「ダリィ」、いつもモジモジして恥ずかしがっている「ハズカシ」という、大人になるための新しい感情たちだった。

映画.comより

どんな感情も、あなたの宝物。

監督: ケルシー・マン
出演: エイミー・ポーラー (ヨロコビ)
フィリス・スミス (カナシミ)
マヤ・ホーク (シンパイ)
ケンジントン・トールマン (ライリー)
ライザ・ラピラ (ムカムカ)
トニー・ヘイル (ビビリ)
ルイス・ブラック (イカリ)
アヨ・エデビリ (イイナー)
アデル・エグザルコプロス (ダリィ)
ポール・ウォルター・ハウザー (ハズカシ)
リリマー (ヴァル・オルティス)
グレース・ルー (グレイス)
スマイヤ・ヌリッディン・グリーン (ブリー)
ダイアン・レイン (ジル)
カイル・マクラクラン (ビル)
イヴェット・ニコール・ブラウン (ロバーツコーチ)

前作'インサイド・ヘッド / Inside Out'で11歳の子供だったライリーがいよいよ思春期を迎える。新しい複雑な感情が登場し、シンプルだった子供の感情は、大人のそれへ成長していくのだ。この思春期というやつ、自分自身のものや自分の子供たちのものも含め、本当に"感情の嵐に巻き込まれる"と呼ぶにふさわしい時期だった。自分が思春期の頃どうだったかというと、ウルトラスーパー超絶根暗だった。"根暗"っていう感情は無いんか。シンパイanxietyが絶望した感じか?かと思えば、思春期及び反抗期の子供の扱いに困り、自分自身がご病気になるほど悩んでおられた親御さんもいたり。

まあ、爆発的であり、かつデリケートな時期なのだ。正しい対処方法はない。難しいよね。

でも、皆が必ず通る道だから。面倒でも、思春期の感情の嵐をちゃんと通り抜けないと、後々大人になってから大変なことになる。

軽んじてもダメだし、深刻になりすぎるのも問題。親としては、ただただ見守るしかない。何か困ったことが起きたら、必ず子供の味方になるよっていう意思表示を常にしておく、ぐらいのことしかできないかも。

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved


さて。

ヨロコビは、ライリーのためを思い、ネガティブな記憶を記憶の彼方へ文字通り放り捨て、ポジティブな思い出ばかりを選択し、ライリーという人間の信念を形作っていた。最初見た時、これはなんちゅう便利なシステムかと思った(笑)。嫌なことぜーんぶ忘れる、底抜けのポジティブ・オンリーの人間てどうなんだろ。ポジティブお化け(笑)。子どもなら許されるかな。案の定、こんなヨロコビに都合の良いシステムは、後から来たシンパイによってネガティブに歪められてしまう。

感情を擬人化するのは面白い試みだし、ひょっとしたら自分自身の内面を整理し、理解するのに役立つかもしれない。ちょっと気になったのは、思春期の感情たち、シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシが全員ネガティブに描かれている点。この4つの感情は、元からあった5つの感情を補佐、時にはコントロールする役割を担っているのではないかと思うのだが。新しい感情と古い感情が対立するという単純な構造に終始していたのは、小さな子供も見るアニメ作品だからだろう。

シンパイは、最悪の結果を予測して、そうならないように予め準備する感情。これは大事なことだ。未来を見据えることを意味するのだから。アリとキリギリスのキリギリスのようにその場限り、楽観的に生きるのもいいが、未来に幸せになるために今行動するアリ的生き方もある程度は必要なのだ。ただ勿論、シンパイの度が過ぎると、劇中のライリーのように、恐ろしい未来しか予測できなくなり、パニックに陥ってしまうだろう。

対立の末、シンパイはヨロコビたち古い感情を、古い自分らしさの花(ライリーの人間性)もろとも司令室から追放する。ヨロコビはライリーのために、純粋にポジティブに育て上げた自分らしさの花をネガティブな記憶の墓場から探し出す。過去にヨロコビがポイポイ捨て去った、数えきれないネガティブな記憶がひき起こす雪崩に乗って、ヨロコビたちは司令室に帰還する。大量のネガティブな記憶たちは、自分らしさの花を咲かせる養分の中に雪崩れ込み、ポジティブだけではない、ネガティブな自分らしさの花が咲き乱れることになる。記憶の選別というのは、人間が意識しなくとも脳が行なっているのだろうが、記憶そのものを抹消してしまうことはできないのだろう。
私たちが得る全ての経験、全ての記憶が混じり合って私たちの人間性を形作る。ライリーもそう。ネガティブな記憶が形作る"ネガティブ・ライリー"もライリーという人間を語る上で必要不可欠なのだ。それらを乗り越えてさらに成熟してゆくのが人間だ。

オーバーヒートしたシンパイは、感情の嵐をライリーの中に引き起こす。司令室には実に様々な自分らしさの花が咲き乱れる。どんな感情もどんな記憶も全ての道がライリーに通ず。古い感情と新しい感情たちが、ネガティブ・ライリーを含めて全ての自分らしさの花を抱きしめるのは感動的だった。私たち親も、混乱した思春期の子供たちを黙って抱きしめてあげたいものだ。それが愛情というものだし、愛情のもたらす効果は大きいと思う。

シンパイが敷いたレールのおかげで、中学を卒業して高校生になったライリーはホッケー部の先輩たちと新たな友情を築き、チーム"ファイアーホークス"のメンバーにも選ばれる。ライリーは"自分らしさ“を失うことなく、新しい環境にも無事馴染んだ。ライリーの頭の中にある感情たちの司令室にも、古い感情たちと新しい感情たちの、新しい調和が生まれていた。どんな感情もお互いに"適度に"作用することで、ライリーに平穏をもたらしている。


Disney + で鑑賞。

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