'ナポレオン ディレクターズ・カット Napoleon' dir. Ridley Scott
今回は、'ナポレオン Napoleon'を劇場で観ていた羊くんの感想文をお届けする番外編です。
ただでさえ長い上映時間がさらに48分長引いたとしても、私はやっぱりディレクターズ・カットの方を推す。ナポレオンの人生は、目まぐるしく激変したヨーロッパの歴史の上に成り立っている。彼の人生を語ることは、ヨーロッパの歴史をマクロ的に語ることに他ならないので、上映時間はいくらあっても構わないからだ(むしろ足りない)。
監督: リドリー・スコット
出演: ホアキン・フェニックス(ナポレオン・ボナパルト)
ヴァネッサ・カービー(ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ)
フランス王政が倒され、一介の将校であったナポレオンが将軍になり、ジョゼフィーヌと出会って自らを皇帝とした瞬間を頂点に、武運に見放され追放されたセントヘレナ島での最期までを、ジョゼフィーヌとのジェットコースターのような夫婦関係を軸に、描き切った。映画は、出来る限りナポレオン自身の内面に寄り添い、彼の視点から彼自身の人生に起こった出来事を語らせている。個人的にはこういう語り口も好きなので、映画のラストまで興味を保ち続けることができた。
尤も、ナポレオンの人生にはジョゼフィーヌ以外にも大きな役割を果たした人物は大勢いて、各人キャラの立った面白いエピソードをたくさん持っていたので、そうした人物たちとのやりとりが些か端折られた感は否めない。そんな多彩な人間模様の中で、ナポレオンという傑出した軍人がいかに孤独であったかは、この映画から充分に伺える。時代に名を残す名誉と引き換えに、ナポレオンが失ったものの大きさは、私たち凡人の人生では支えきれないはずだ。
ナポレオンを演じるのはアメリカの名優ホアキン・フェニックスで、ジョゼフィーヌを演じるのはイギリスの名花ヴァネッサ・カービー。フランスのお話であるにも関わらず、英語での演技ということにちょっと引っかかるとはいえ、お二方共に素晴らしい演技でした。
Apple Studios, Scott Free Productionsによる製作
Apple TV+、Sony Picturesによる配給
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