見出し画像

[テレビシリーズ感想]'高慢と偏見 Pride and Prejudice' (1995) dir. Simon Langton Part 6 これで最後です。


'高慢と偏見 Pride and Prejudice' (1995)
原作: ジェーン・オースティン '高慢と偏見 Pride and Prejudice'
脚本: アンドルー・デイヴィス
監督: サイモン・ラングトン
出演: コリン・ファース(ミスター・ダーシー)
ジェニファー・イーリー(エリザベス・ベネット)
ベンジャミン・ホウィットロー(ミスター・ベネット)
アリソン・ステッドマン(ミセス・ベネット)
スザンナ・ハーカー(ジェーン・ベネット)
ルーシー・ブライアーズ(メアリー・ベネット)
ポリー・メイバリー(キティ・ベネット)
ジュリア・サワラ(リディア・ベネット)
デイヴィッド・バンバー(ミスター・コリンズ)
ルーシー・スコット(シャーロット・ルーカス(後のミセス・コリンズ))
クリスピン・ボナム=カーター(ミスター・ビングリー)
エイドリアン・ルーキス(ジョージ・ウィッカム)
バーバラ・リー=ハント(レディ・キャサリン・デ・バーグ)
エミリア・フォックス(ジョージアーナ・ダーシー)

エピソード6

ウィッカムが結婚の条件として要求したであろう大金は、ガーディナー夫妻が肩代わりしたと思われる。リディアは結婚したのだから。ガーディナー夫妻への借金返済にどれだけ時間がかかるかベネット氏は頭を抱えたが、ベネット夫人はリディアが結婚できたと大はしゃぎ。
ウィッカムは北部連隊に入隊することになった。挙式後は連隊に合流するが、その前にベネット家に立ち寄るという。全てガーディナー氏の計らいだ。ベネット夫人はウィッカム夫妻を近所に住まわせたいとゴネるが、彼らは既に"招かれざる客"になっている。

"ウィッカム夫人"となったリディアが勝ち誇った顔で帰ってきた。ベネット夫人は大喜び。リディアは、ウィッカムの付き添いでダーシー氏が挙式に参列したことをうっかり洩らしてしまう。その事実は伏せられていたというのに。エリザベスは、ことの顛末をガーディナー夫人に再度尋ねた。ダーシー氏はある日ガーディナー夫妻を訪ねると、責任は全て自分にあると言い、有無を言わさぬ勢いで全ての費用を肩代わりすると宣言したのだそうだ。リディアの件はダーシー氏のおかげで解決した。
ウィッカムは相変わらずエリザベスにカマをかけ、彼女とダーシー氏との交流がどうなっているかを探り出そうとしていた。エリザベスはウィッカムの行状はすべて把握していると返答した。その上で全てを水に流すのだ。今日から姉弟となるのだから。

台風のようなリディアたちが去り、ベネット家は平和を取り戻した。ベネット氏は読書に没頭し、ベネット夫人はヒステリーを起こし、キティは帽子の改造、姉たちは散策しながら自分たちの未来を考えている。

ビングリー氏とダーシー氏がロンボーンに戻ってきた。

次の台風は、ビングリー氏がロンボーンに戻ってくるという噂と共にやってきた。ビングリー姉妹は今回ついてこない。台風の"目"となるのはもちろんジェーンである。エリザベスは純粋に嬉しかった。口には出さないがジェーンも同じであろう。ビングリー氏とダーシー氏が突然ベネット家を訪れた。エリザベスはダーシー氏を見つめ、ジェーンがビングリー氏を見つめる中、ベネット夫人は1人でとりとめもないことをしゃべり倒している。兎に角、ベネット家とビングリー家のご近所付き合いは復活する。

一方ダーシー氏は、ジェーンとビングリー氏の仲を邪魔だてしたことを謝罪する。紳士が自らの非を認めることは、この時代では大切なことであった。ビングリー氏はその足でベネット家を訪問、ジェーンに求婚し、ベネット氏に報告する運びとなった。いつものジェーンらしからず、興奮した表情で今の幸せをエリザベスに告げるジェーン。長い間耐えたことへの神の計らいかも。

数日後。キャサリン・デ・バーグ夫人が娘を引き連れてベネット家を急襲した。居間の中に勝手に入ってきて勝手に椅子に座ったデ・バーグ夫人は、エリザベスを強引に散歩に連れ出した。彼女の甥ダーシー氏とエリザベスが婚約したという"驚くべき"噂の真偽を確かめるためである。デ・バーグ夫人は、語気荒くダーシー氏がエリザベスに求婚したかどうかを問い詰め、格式が下のエリザベスやベネット家の人々をあらゆる言葉で侮辱し、自らの家柄を盾に絶対にダーシー氏を渡さないと息巻く。エリザベスとダーシー氏の結婚など絶対に認めない、と。エリザベスは、自分のことや彼女の親戚のことをデ・バーグ夫人が知る権利はないし、彼らを侮辱する権利もないと答えた。ダーシー氏とエリザベスの身分が違うとは思わないし、ダーシー氏は紳士、自分は紳士の娘で同等だ、と。ダーシー氏と婚約しないという約束もしないと言い切った。

エリザベスは自分の信念に従って生きるし、デ・バーグ夫人や他人の意見など一切気にしない。"格下の"階級から出てきた自由意志を持つ女性、それがエリザベスだ。この時代、どんな女性でも自由意志を持つことができたわけではない。エリザベスのような聡明で意志の強い女性たちが、苦労して"階級の差"を乗り越えて行動した結果、後年に女性の権利と平等を主張する機運が生まれたわけで。エリザベスが戦うのは、"女性はこうあるべき"という世間や親からの圧力だけではなく、同じ女性からの"女性はこうあるべき"という圧力でもあったのだ。

ベネット氏は、エリザベスとダーシー氏の噂を面白がり、エリザベスの感じている苦痛を軽減しようとする。噂を楽しむ隣人を笑ってやろう、と。こういう気の持ちようは大事だ。この今も大して変わらぬ"噂社会"では。

ビングリー氏とダーシー氏がベネット家を訪れ、娘たちをメリトンへの散歩に連れ出す。ダーシー氏と2人きりになったエリザベスはまず、リディアの件をうまく解決してくれたお礼を心から述べた。ダーシー氏はエリザベスのために尽力してくれたのだ。彼は改めて、エリザベスへの変わらぬ愛情を訴えた。エリザベスも同じようにダーシー氏への愛情を答えとした。ダーシー氏は、紳士に非ざるかつての高慢さを今は恥じていた。エリザベスが彼を変えたのだ。だがエリザベスの方も、凝り固まった偏見を捨て寛容なる心を持つように変わっていったと言える。

ジェーンに続き、エリザベスもダーシー氏と婚約した。ベネット氏にとっては寝耳に水だ。2人の結婚に水を差すわけではないが、エリザベスが無理をしているのではないかと心配していたのだ。お互いの気持ちに偽りはないと知ると、愛娘を一気に2人も失う寂しさをベネット氏は噛み締めたことだろう。

ビングリー氏とジェーン、ダーシー氏とエリザベスは同時に挙式した。参列者の抱える思いはそれぞれ違うだろう。二組のカップルはそれぞれの未来に向かって第一歩を踏み出していった。

新しい門出。2人の道は未来に続く。

この物語は、18世紀末から19世紀初頭のイギリスの風光明媚な田舎における、ジェントリ階級に属する女性の窮屈な暮らし振りや不平等な結婚事情を、誤解や偏見によって揺れ動く男女の恋愛を通じて描いたものだ。原作の精緻極まる人間描写は、何百年経とうが輝きを失わず、それどころか人間の本質なんざ、昔に比べて今も大して進化していないことを分からせてくれる。

エリザベスとダーシー氏は、いくつもの試練を戦いながら乗り越えて、時にお互いに大喧嘩も辞さず、時間をかけてやっとお互いを理解するに至った。彼らの愛情は、いくつもの戦いを勝ち抜いた上で育っていったものだ。恋愛はまさしく戦争である。エリザベスとダーシー氏は、2人で同じ未来を見つめる戦友となった。彼らの絆は堅かろう。


長らく続いた'高慢と偏見'の旅は、これをもちまして終了です。お付き合いいただきまして、ありがとうございました。


映画感想文はこちらのマガジンにまとめてあります。他の記事に興味を持たれましたら、ぜひご覧下さい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集