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[映画感想]'シーモアさんと、大人のための人生入門 Seymour: An Introduction' (2015) dir. Ethan Hawke
迷子になった大人のための人生指南。
2015年公開作品。公開からすでに10年近く経つ音楽ドキュメンタリー映画だ。この作品の主人公は、高名なピアニスト、ピアノ指導者であるシーモア・バーンスタイン Seymour Bernstein氏。1927年4月24日にお生まれで、かなりのご高齢だがまだ健在であられる。よかった(涙)。
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監督を務めた俳優イーサン・ホーク氏は、俳優業が行き詰まっていた時期にバーンスタイン先生に出会ったそうだ。本当にやりたいことと、経済的な理由からやる仕事との板挟みにあって苦しんでいたとき、バーンスタイン先生との対話を通じて自身のスタンスを見出したという。
バーンスタイン先生は才能あるピアニストであったが、まだ若い年齢で惜しまれつつコンサートピアニストを引退した。そして、年齢、国籍、性別を問わず、世界中から彼の教えを乞いにやってくる後進たちを育てる道を選択したのだ。彼が若いピアニストにレッスンをつけているシーンは出色だ。テクニックに走ろうとするピアニストには、曲と正しく向き合うように指導し、曲に飲み込まれそうになっている迷えるピアニストには、無心でピアノの音色と対峙できるよう導く。
私はピアノを弾くわけではないが、バーンスタイン先生が過去に朝鮮戦争を経験し、戦場での痛ましい経験から音楽そのものへの深い理解と、人生の本質への理解を獲得したのだろうなと思い当たる。彼が生徒たちに行なっているのは、単なるピアノを上手く弾く指導ではない。音楽を通じ、人生を理解する手助けだと思う。
だから、バーンスタイン先生の言葉は普遍性を持つのだろう。
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バーンスタイン先生のもとには、元教え子たちも大勢やってくる。彼らは様々なディスカッションを先生と行う。そして、たとえ先生の意見と自分のそれが違っていたとしても、先生の揺るぎない哲学に触れて安心するのだ。バーンスタイン先生にとって、人生は様々な方法で探求されるべきものであり、先生の場合はたまたま若きピアニストを指導する方法であったのだ。教え子たちの奏でる音と、先生の心が見事に調和すれば、人生の理解に到達する。
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悲しみの音色はいずれ、
美しいハーモニーになる。
じぶんの心と向き合うこと、シンプルに生きること、成功したい気持ちを手放すこと。
積み重ねることで、人生は充実する。
シーモア・バーンスタイン