女性管理職比率向上の障害は目標管理制度
こんちは!副業社労士まさゆきです
「令和3年度雇用均等基本調査」によると、管理職に占める女性の割合は、部長相当職では 7.8%(令和2年度8.4%)、課長相当職では 10.7%(同10.8%)、係長相当職では18.8%(同18.7%)となっています。世界第167位、政府の目標は2030年度に30%ですが達成は厳しい状況です。
何故日本は女性管理職比率が低いのか?私は目標管理制度に問題があると考えています。2013年労務行政研究所調査では、目標管理制度を導入している日本企業は88.5%です。目標管理制度が女性管理職比率向上の障害になっている理由を記します。
《目標管理制度の問題点》
人事院発表の「国家公務員の人事評価ガイド」を例に考えてみます。
r0406_seido_zenpan.pdf (jinji.go.jp)
目標管理制度では、経営指標を元に各自が期初に目標を設定し、達成出来たか否かで評価、評価結果を元に昇任(係長⇒課長へ役職アップ)と昇格(職級アップにより給与アップ)を決定します。人事院では「能力評価」と「業績評価」の2面から評価結果を各々6段階で評価しています。
給与を本評価で決定するのは合理的だと思いますが、昇任を目標管理重視で決定すべきか?人事院では、昇任基準を下記のように定めています。
過去2回(2年間)の能力評価、過去4回(4年間)の業績評価を元に昇任が決まります。女性管理職候補が産前産後休業・育児休業に入ると、その間評価されず、キャリアが中断します。
《産前産後休業・育児休業間の評価》
では、産前産後休業・育児休業間の評価を高く設定すればいい?民間企業は
① 評価結果を5段階で評価(ここでは、評価上位からS,A,B,C,Dとします)。
② 過去数年間でS、A評価が一定割合あれば昇任要件が整う
③ C,D(C=不良、D=欠勤等で評価不能)が期間内にあれば昇格対象外
という基準が多いようです。産前産後休業・育児休業期間は出勤扱いとしない会社が多く、勤務実績が無く評価をC,Dとする会社が多い印象です。
民間企業では昇任を業績評価に加え上司の推薦等が加わりますが、業績評価結果を前提としている場合が多いようです。優秀でも業績評価が低い期間が直近にあれば昇任対象から外れます。「目標管理制度が昇格すべき優秀な女性社員登用の障害となる」と私が考える理由です。
休業期間の業績評価をC,Dとする事は育児介護休業法上問題となる可能性があります。厚生労働省の指針では、「昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと」が禁止事項となっています。
「ではA,B評価」とすると、他の社員とのバランスが難しい。A,B評価だと昇任ポイント(給与アップのポイント)が付与され、“何もしていないのに復職したら給与が上がるのか”となります。
《目標管理制度を昇任(給与アップ)のみに限定使用する提案》
先に紹介した労務行政研究所調査で、31.3%の会社が「目標管理制度を見直す予定がある」としています。
私は、同制度を昇任(給与アップ)に限定して使用すべきだと思います。昇格の“前提条件”ではなく“一要素”にすべきではないでしょうか。
目標管理制度は「過去前職務(例えば係長)で優秀だった」ことを証明しているに過ぎません。有能な係長が課長として有能であるかは別問題です(係長と課長に求められる能力は違います。長い会社員生活で痛切に感じます)。昇格には各企業がその職に相応しい基準を定めるべきと私は考えます。
《人事評価を止める米企業》
目標管理制度の先進国アメリカでは、目標管理評価を止める企業が増えています。GE、グーグルなど、日本でもマイクロソフト、カルビー、アクセンチュアなどです。人材評価を止めるのではなく、人材のランク付けを止める「ノーレーティング」と呼ばれる考え方を導入している由。現在研究中なので別途触れたいと思います。
ではまた次回