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療養期間を彩ってくれた映画9選

コロナにぶちかまされて10日間みっちり家にいたのでこれまで溜め込んでた未聴作品を貪るように観てた。"いつ観ても面白いだろう"と信じ備蓄してた作品なので全部凄く良かった。SF/サスペンス多め。全てU-NEXTで観れます


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パソコン画面上で全部完結するミステリーっていう触れ込みだけでもう勝っちゃってる感じはあるけど、中身も大満足。このフォーマットでやれることは余すことなく全部やりきってるでしょ。無慈悲なまでのたいらげっぷり。だからミステリ部門での後続ではなく心霊の方向性で「呪詛」という悪魔進化作が出たのも納得。娘の失踪事件を追う父親と刑事というありふれた筋書きだけど、演出だけじゃなくシナリオもエグめの展開が多くてとても良い。ただ徐々に崩壊していく親父っていう風にしたかったんだろうけど割と序盤からずっとこいつはあかん、が全開ではある。描かれてない支配性がある。



華氏451

「ブラックパンサー」のキルモンガーことマイケル・B・ジョーダン主演。1953年刊行の小説が原作で1966年の映画版のリメイク。本を読むことが禁じられた世界で本を燃やす仕事についている男が次第に本に惹かれていく、という削ぎ落されてるけど魅力的な筋書き。知らないものを知った時の脳がカーッと熱くなる感じを追体験して味わえる。情報を統制しているわけじゃないのに、なぜかみんなアーニャが可愛いみたいな自明なことしか言わないカルチャーシーンの未来のようなものも描かれていて示唆的。てめーの言葉で、てめーの感想を言って欲しいんだ、自由に作品を観れる時代なんだし!



アメリカン・アニマルズ

大学の図書館から希少な本を盗み出そうとした大学生4人組の物語。実話をもとにした映画を僕は勝手に「奇跡体験アンビリバボー」みたいな映画ということでアンビリ系映画と呼んでるのだけど、これは実際に犯人たちのインタビュー映像をまじえており、もはや最初にたけしが出てこないアンビリ。内容は面白く、映画パートの役者がイイ。バリー・コーガンは鬱屈した普通の青年も抜群の精度で演じ、エヴァン・ピーターズの軽薄さも良い。そうはうまくいかないな~、と、こんなにもうまくいかんのかいの連続は間抜けで笑えるが、YouTuber時代に"一線踏み越え”を嫌な角度から警鐘を鳴らしてる。



エクス・マキナ

女性型のAIロボットをめぐるSF。天才的な才能でAIを進化させ続ける会社社長、美しいロボット、その思考テストを任された若い社員、そして社長の給仕というたった4人の登場人物が閉鎖空間で繰り広げていくシンプルな物語。そのひとけのなさが妙な緊張感をそそって良かった。半裸で筋トレをし続けるスティーブ・ジョブズのような男を演じているのがオスカー・アイザックだと気づくのにとても時間がかかった。髪と髭、体型も全然違うし、不気味すぎた。そりゃ「ムーンナイト」に抜擢されるわけだよ。SFとしては非常にストレートだが、女性解放のイメージが通奏しているのが興味深かった。



愛しのアイリーン

「神は見返りを求める」を観てもっと吉田恵輔監督のエグみが欲しくなり、まだ未聴だったこちらを。田舎町の42歳独身男性が性欲と抑圧の末にフィリピンから嫁をもらってくるという話。まぁもう最悪の気分になれる映画だ。容赦ない差別の応酬、搾取と諦念、猟銃をかまえ叫ぶ母親(木野花)、そして最もどうしようもない主人公(安田顕)のじっとりとした目。ここにはポリコレも価値観のアップデートもきっと届きはしないのだという現実がある。こういう映画に横たわってる感情に蓋をしないことこそ、先進的なのではないか、とさえ。役者全員、メーター振り切れまくってる。愛すべき日本映画だ。



ゼロの未来

モンティパイソンのメンバー、テリー・ギリアムの監督作品。マッドでポップな未来世界のガジェットたちは今作も最高。かわいらしくてジョークが効いてる。あくせく働く主人公が仕事として扱うのはゲーム機そのもので、ひたすらリモートワークを訴え続ける様など、現代人の御心に訴えかけるシークエンスが多い。効率化を求めすぎて人生の意味を失うってなんか本当に今の病巣だと思うんだよな、、何もかもに余裕がなさすぎる。そう、とっくにこれは未来の話ではなかった。人生の意味を教えてくれる電話は来ない。心の虚無に引きずられる前に足掻いてはいるけど、もう手遅れなのかもな、、



ノクターナル・アニマルズ

我が愛しのジェイク・ギレンホール出演作。エイミー・アダムス演じるアートディーラーの主人公の元にジェイク演じる別れた元夫から小説が届く。その小説の内容(胸糞悪い)を劇中劇として織り交ぜながら、主人公とジェイクにまつわる過去が紐解かれていく、というサスペンス。もっと分かりやすいミステリものと思ったらかなり観念的かつ難解。僕は最後まで、ひどい女とねちっこい男の話だと思いこんでしまっていたので、なぜ最後にそうなったのかいまいち掴めず。しかし掘り下げれいくと、愛憎の複雑さを思い知り唸った。人を想うこと、のややこしさについて。ジェイクの抑えた演技は絶品。



ミスター・ノーバディ

不老不死が実現した未来で最後に死ぬ男になった老人が過去の出来事を回想していくのだがどうもおかしい。歩んできた人生が一本道ではなく分岐して枝分かれした道もあわせて”経験してきたこと"のように語るのだ。どういうわけか彼は、"ありえたかもしれない可能性の人生"もすべて経験しているようで、、と全く観た事の無いタイプの映画すぎて大混乱。そんな、ひとりマルチバース男のライフストーリー、1度に全てを理解はできなかったけれどもそれはそれとしてこのまとめあげ方は唸ってしまった。そうか、それもアリか、となって天を仰いだ。正解なき人生へ贈る人間賛歌のようでもあった。



シャッターアイランド

マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演。有名などんでん返し映画なので身構えて観た。精神科病棟の話で専門範囲だったので、ある程度までこんなんかなと~思ってたらしっかりどんでん返されてしまった。しかし本当に精神疾患はミステリ/サスペンスに便利に使われますね。今作はだいぶホラー要員として(精神病院に着いただけであの仰々しい音は何だ!笑)、あとどんでん返しへの良いリードとして。とはいえ、精神医療の黎明期における論争などもまじえてあり意外と誠実なところも。あとマーク・ラファロが昔の名優みたいだった。貫禄がいかつくて知的な色気がある。




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