あの眩暈をもう一度~UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2019「MODE MOOD MODE ENCORE」@ 02.15 Zepp Fukuoka
同じアルバムで2度ツアーを回るっていうのは、そのアーティストがそのアルバム好きすぎるだろ!っていう気持ちになって個人的に何だかときめくのだけど、今回UNISON SQUARE GARDENがキャリア初のアンコールツアーを敢行してくれた。昨年5月のツアーも行ったので、その時のセトリの美味しさも知っており、では今回はどこをどう変えるのか、興味深かった。ナンバーガール再結成の告知がなされたこの日、正直誰もがその件で頭がいっぱいだっただろうから、そのことが若干ブレさせるんじゃないかとヘンな予見を立てていたのだけど、全くもって杞憂。1年前にリリースされた『MODE MOOD MODE』のアルバムツアーという大前提を踏まえながらも見事な組み換えで、ヤバイさらにヤバイ バリヤバな熱狂を喰らわせてくれた。
イズミカワソラ「絵の具」のSEがかかる。聴くたびに、アトラクションがはじまる前の独特の緊張感を煽ってくれる名曲だなぁと思う。定位置につき、1曲目はアルバム同様「Own Civilization(nano-mile met)」。ざらついたサウンドと不敵なテンションが始まりを告げる。そこからは早速のトップスピードへ。「場違いハミングバード」「Invisible Sensation」「桜のあと(all quartet lead to the?)、という新旧のピーク曲を畳み掛ける流れ。ていうかこのラインナップ、初回のアルバムツアーで本編終盤を飾っていた3曲なのだ。つまり、この曲たちを頭に持ってくることで、そのアンコール公演であることを示唆しているわけだ。まだあのツアーの熱を引きずっているこちらとしては、あのライブの続きが今ここに鳴り始める!という興奮が。
今ツアー、本編90分はMCナシという構成。蛍光色に光るエフェクター、薄っすらと音出しが聞こえる静寂、この“嵐の前の静けさ”はユニゾンならではの空間演出だろう。「最後まで自由に!」という斎藤宏介の一言と、鈴木貴雄の四つ打ちが重なって、ベース→ギターと加わりながら軽やかな「等身大の地球」へ。1stアルバムの曲と最新作からの曲を並べて演っても違和感がない初志貫徹っぷり。そして『Dr.Izzy』の曲順を再現して「シュガーソングとビターステップ」へと繋いだ流れったら!この辺りから田淵智也も常識的な動線を越えて大いに動き始める。個人的にシュガビタの<蓋然性合理主義の正論に揉まれて>の裏のデデデデってギターのとこで、胸の前で両手の人差し指を立てて前方に出すっていう謎の振り付けをしてるのが好きです。
同じ作品のツアーとはいえ、アルバムの楽曲群にはイントロに加わったりしてより強固にリアレンジされている。キレキレのセッションからやや拍子抜けでニューウェイヴな出だしに着地する「フィクションフリークライシス」、楽曲の情感をたっぷりと増幅させた「静謐甘美秋暮抒情」など、新しい響きで楽しめる。そして、空気を一変させたのは2ndアルバム『JET CO.』からの「夜が揺れている」。内側で暴れる熱情を表現するようなパワフルな演奏と歌唱。3人が定位置から一切動かずにプレイする姿が印象的だった。ぐーっと集中力を高めたあとに、神々しい前奏。秋の夕暮れをそっと星空に変える「クローバー」である。個人的に、去年のツアーで最も歓喜した曲。また聴けて嬉しい!思わず手を祈るような形にしてしまったよ。
君がここに居ないことであなたがここに居ないことで
回ってしまう地球なら別にいらないんだけどな
そっと抜け出したパーティーも大好きだったあの映画も
未来のパズルに続いてる
「また、会おう」って言ったフローリア
「好きだよ」って言ったフローリア
ライブという場においても言葉がきらきらと輝く。純真でささやかだが確かな強さで想う心が地球の自転へも接続してしまうというセカイ系な発想を、無垢で素直な筆致に託した素晴らしい歌詞。ユーミンが歌っていた<小さい頃は 神様がいて 不思議に夢を かなえてくれた>を詠み変えたような尊さがある。しばらくの放心ののち、30℃を超えた日曜を2月の雨降り金曜日に立ち上げてしまった「オーケストラを観にいこう」が降り注いでくる。同期音と分かっていても、ここで流れるストリングスの音は不思議なほど美しく聴こえる。シーケンスすら肉体に溶かして、バンドグルーヴの1ピースにしてしまうユニゾンの特異性。この数曲の流れが持つ、柔らかで多彩なポップスへの憧憬もまた、ユニゾンのロックバンドとしての矜持だろう。
ハードにドライブする前奏を経て「fake town baby」から終盤へと雪崩れ込む。果てまで駆け上がっていくようなメロディ、キメまみれの演奏に否応なしに昂っていく。その歌い切りとともに「Catch up,latency」の清廉なアルペジオが。シリアスな前曲から打って変わって、開放的なギターロックナンバー。曲順の妙味がそれぞれを際立たせる。このツアーで加わった新曲だが、その直球な魅力で会場を染め上げ、至極の高揚感を与えてくれた。鈴木の目隠しドラム、コンガ、ヴィブラスラップの三連打ちという曲芸さながらのアクロバティックなサンバパフォーマンスを経て、狂騒のロカビリー「MIDNIGHT JUNGLE」へ。前ツアーでは中盤に披露されていたが、どうやらこの曲はわけわかんなくなってる状態の中でこそ映えまくる。
「君の瞳に恋してない」がこの眩しい時間が終わっていくことを告げていく。「ラスト!」の合図で本編最後の「ガリレオのショーケース」へ。何せこの曲がヤバかった。イントロでは田淵がベースをバスドラの前に放置し暴れ、鈴木がスティックでベンベンと弦に触れる珍奇な幕開け。そしてラスサビ前の間奏で田淵がステージ袖に去っていく意味不明の展開。それを追うように斉藤も行ってしまい、音は流れ続けるがステージ上には鈴木しか居ないという状況。どんどんライブを研ぎ澄ませ、"音楽でしかない"というゾーンに入っているユニゾンだが、遂に"舞台上に本人が居ない"時間が生まれてしまった。なんだこれは。野性爆弾のコントか、人が先か音が先かみたいな哲学的な議題なのか。訳が分からないが、とりあえず爆笑してしまった。
呆気に取られながらもアンコールへ。「春が来てぼくら」が先ほどのカオスを綺麗に洗い流してくれた後、この日唯一のMCコーナーへ。新生・Zepp福岡でライブをするのは今回が初ということで、新築ならではのハイスペックトイレの話や、2018年12月のZepp福岡こけら落とし公演(その感想がここに)のドラマーを鈴木が務めた話などをしながら(ここで鈴木がCHEMISTRY「PIECES OF A DREAM」とクリスタルキング「大都会」をドラムボーカルで口ずさんでたの、あの現場を観てた者からするとなかなか楽しかった、ノリノリだったんだな、と)、今年が結成15周年という話題に。目下楽しみなのはオリオンを全然なぞらないB面曲ツアーだろう。こちらも絶対にチケットをもぎ取りたい。聴きたい曲が多すぎる。隠してる名曲が多すぎるのだ。
2014年のクリスマスに旧Zepp福岡で開催されたイベント「RockDaze!Xmas」のトリでユニゾンを観たのだが、その時の1曲目だった「crazy birthday」をここで聴けて何だか嬉しかった。投げやりで無鉄砲、大団円に相応しいショートなキラーチューン。「おしまい、はこの曲!」というインパクト大な曲フリから、ラストナンバーは「Dizzy Trickstar」。アルバムの2曲目で締めくくる意外な選曲だが、現実世界をサバイブして辿り着くライブ会場から再び日常へと戻る狭間で、<あなたの世界で息をさせて>と叫ぶこの曲を受け取れたかけがえなさを考えれば納得である。華麗なる疾走感に心が踊る。客電もつき、何もかもが晒し出された会場で鳴らされたこの曲は、ここに集う2000人をいつもの毎日へと強めに背中を押して送り出してくれていた。
前回とても心に残った季節を逆行しながら進んでいくセットリストであったり、前回終盤においた曲を前半にやったり、ステージ上に人がいないのに音が出てたり、とにかく色々と「逆」を行くライブ。主流も本流も関係ない我流のみを愛し、シーンを引っ搔き回すこれこそユニゾンのトリックスター的本質。それがこの「逆」ってる構成に繋がったんじゃないかなんてまぁこれは妄想なのだけど。演出なんてほとんどない、あるのは3人の男が繰り出す音と音と音。その粒立ったフレーズが1曲となり、その1曲を積み重ね続け、シンプルなのに最高に華麗なるロックショーへと変わっていく。ひとたび呑まれればクラクラしてしまうこの2時間の音の洪水。あぁもう求めてるじゃないか。15周年、色々と楽しみに待つ。この眩暈を何度でも。
まだ火照ってる 僕はおいかけずにいられない だけどきっと
一人ぼっちで走らなくちゃ ぐちゃぐちゃのまんまの希望でも
この高揚感は誰にも奪えない
UNISON SQUARE GARDEN「Dizzy Trickstar」
setlist
1.Own Civilization(nano-mile met)
2.場違いハミングバード
3.Invisible Sensation
4.桜のあと(all quartets lead to the?)
5.等身大の地球
6.Silent Libre Mirage
7.アトラクションがはじまる(they call it"No.6")
8.シュガーソングとビターステップ
9.フィクションフリーククライシス
10.静謐甘美秋暮抒情
11.夜が揺れている
12.クローバー
13.オーケストラを観にいこう
14.fake town baby
15.Catch up,latency
16.MIDNIGHT JUNGLE
17.君の瞳に恋してない
18.ガリレオのショーケース
-encore-
19.春が来てぼくら
20.crazy birthday
21.Dizzy Trickster
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