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2010年代ベストアルバム 30

半年がかりで続けてきた、僕の独断でしかない2010年代ベスト。ソング映画ドラマに続くベストアルバム編。完結作、50音順30本。2020年が初っ端からこういう状況で、じゃあどういう作品がこれから生まれていくのか。この世界線を生きる以上、そこを楽しみに過ごしていくことができるのです。

The Mirraz『言いたいことはなくなった』

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ミイラズのどの時期を最高だったと考えるか、において普通にこのアルバムからメジャーデビューにかけての時期と言えてしまう僕だよ。ポップで、エモーショナルで、メロディアスで、かっちりとした良いサビがある、これなんです。そっけないようでいて、確かに目を見つめて放出される膨大なリリックは、情けなくも僕らのものだと思わせてくれる。リフがどれも痛快。


きのこ帝国『渦になる』

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このバンドは歴史を追って聴けば分かる通り、ソングライター佐藤千亜妃の魂の解放がそのままディスコグラフィーに映し出されている。その起点である本作は、未整理で混沌とした生活感情がぶつけられている。暗闇の底からじっと光を見つめているような、絶望の淵でそっと希望を摘み取ろうとしているような。轟音の中で儚げに移ろう清澄な歌声に吸い込まれそうになる。


LILI LIMIT『a.k.a』

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彼らにとって唯一のフルアルバムとなってしまった。解体・構築を自在に繰り広げるスマートなトラックに、クールさと愛嬌を織り交ぜた詞世界、一貫して涙腺を揺らしてくるメロディの三位一体が心地良い。洗練されきったアートワークからも分かる通り、どの界隈にも属さない(せない?)異端さが強みであり、この業界を乗りこなすには歪すぎたのかなぁ、と思っている。


星野源『エピソード』

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2011年の3月に「くだらないの中に」がリリースされたこと、偶然なんだろうけど、やはり大きな意味を感じる。<僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたい>というフレーズは今では別の大義を持つけど、当時はこの作品を貫くテーマとして温かく鳴り響く。フォーキーな質感を大事にしつつ、今に通ずるグルーヴも徐々に獲得しつつある。過渡期ならではの旨味。


パスピエ『演出家出演』

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匿名的な存在からメジャーへと向かっていく時期、徐々に表舞台へと開け放たれていく様子が刻まれたメルクマールな一作。ハイパーな音楽偏差値を持ち寄って緻密に構築された特有のレトロフューチャーサウンド、コケティッシュなボーカルで繰り出されるしなやかなポップソングたち、今でもライブの場で重要であり続けている曲が多いのも、良い1stアルバムの証拠だろう。


Gotch『Can't Be Forever Young』

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ロックバンド然としたダイナミズムから距離を取り、打ち込みのビートやループ中心のギターフレーズ、アコースティックギターの音色で装飾されることで、アジカンとは全く違う種類の音楽となって放たれている。また、平熱な目線で自らの生活者としての言葉を綴った歌詞も目を引く。後藤正文の表現の引き出しの奥深さを適切な温度感で届けたソフトでコンパクトな佳作。


私立恵比寿中学『金八』

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戯れ合って笑い合う日、悲しくて悔しくて泣いちゃう日、どんな日々も眩しい音楽へと変えて僕らの元へと降り注いでくる。アイドルを辞めた女の子の心情を描いた「蛍の光」を最後に置くことで、アルバム全体を泡沫の如く消えた日常のように聴かせてしまう構成もあまりにも切なくて尊い。エビ中を謳歌する日々、その永遠と刹那を表裏一体で描いた鮮烈な成長記録。


くるり『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』

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タイトルをどこで区切ればいいんだろう、とずっと考えてる。「言葉にならない笑顔」を「みせてくれよ」と言っているようにも聴こえるし、「言葉にならない、、」と感情を止めた後、「笑顔をみせてくれよ」と語りかけているのか。実際はどちらでもいいのだけど、そういう、会話を交わし合う中で芽生えた、"違うんだけど、まぁいい"みたいな間隔が詰まっていると思う。


UNISON SQUARE GARDEN『CIDER ROAD』

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ポップであることを突き詰めると狂気すら孕んだ過激さを帯びることがビシビシ伝わる1枚。聴いてると血圧が上がりまくり。キラキラしながらもバチバチに鬩ぎ合うグルーヴ、ストリングスもホーンもピアノも丸呑みした全部盛りなアレンジ、栄養過多だよ、、と苦笑する程にはエクストリームな62分。セカイ系を通過しながら「僕」と「君」の物語に仕上げた歌詞も素敵。


サカナクション「sakanaction」

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自分たちがどういう存在であるべきか、何を残していくべきか、考えに考えすぎるあまりここから6年間アルバムが出なかったわけで。そんなこと微塵も予想もしてない折に、まさにシーンのトップランカーへと踊り出た季節をパッケージしたバッキバキな作品。「ミュージック」という1つの到達点のような曲もあり、セルフタイトルを冠するに相応しい正確さがある。


クリープハイプ「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」

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2012年以降のギターロックブーム、その口火を切ったメジャーデビュー作。鬱屈した毎日を金切り声で叫び続けたインディーズ時代の名曲たちが、容赦なく押し寄せる。緩急ありながらも、どれも今しかないという鬼気迫った12曲。フェス的な快楽からは遠いはずなのに四つ打ちバンドの筆頭になったり、この後待ち受ける怒涛の活動を目前にした、ギラついた視線を感じる。


相対性理論「シンクロニシティーン」

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真部・西浦がメインコンポーザーを務めていた初期3部作の完結。よりクリアになった音像で繰り出される奔放なアレンジメント。言葉遊びとディストピア感に終始する歌詞。3作通して見えてきた、このバンドの“見えなさ”にも拍車がかかりきる。タイトル通り、何かと調和するイメージも湧く作品だ。それがあの娘か、終わりゆく世界か、それとも銀河か。未知なる聴覚体験。


東京事変『スポーツ』

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センスとクセのスペシャリスト集団が贈る、ポップスアルバムの最高峰。これまでの作品群に比べ、ハイファイさと健やかさが段違い。とはいえ、緻密な技巧や突飛なアレンジは当然のようにあり、5人の逃れられない業のようにびっしりと全編に渡ってまぶされている。この作品から10年、復活の2020年、東京五輪もある、なんて未来は潰えたけど、盤は不朽に在り続ける。


さよならポニーテール「青春ファンタジア」

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形無きガールズグループの2nd。癒しのエッセンスは残しつつも、メンバーが増えたことでボーカルの折り重なりも豊潤になり、音楽性はより華やかに。つまりは実態のないアイドルとしての姿を手に入れた意欲作。首謀者・クロネコのJ-POPに対するサブカルチャー越しの憧憬が、特有のフェティシズムと共に刻印されてある。ほっこりのフリした濃い目のこじらせポップ。


大森靖子「絶対少女」

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アンダーグラウンドは東京にしかないんだよ、と歌った彼女の音楽が僕の元まで届いてくれた。アコギを温かく聴かせることせず、意志を無加工に吐き出した歌声とともに、鋭くグサグサと突き刺してくる。神経を尖らせて拾い上げた生活の描写は無数のカルチャーの先で轟いたオリジナリティの塊。<君も可愛く生きててね>という言葉が僕の中の"女の子"を拡張させ続ける。


ねごと『SOAK』
前作『ETERNALBEAT』で開花したエレクトロニカ/ダンスミュージック方面へのアレンジにより深く向き合い、更に自在に操るようになっている。静かに滾る熱を内に秘め、バンドサウンドとも滑らかに融け合いながら、驚異の浸透圧で心の奥底へ流れ込む。ずっと没入しまいたくなる、そんな心地良さに到達したねごと。美しさを突き詰めた結果、本作は潔い完結作となった。


ザ・なつやすみバンド『TNB!』

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大学1年の夏に聴いて、あまりのノスタルジーに発狂しそうになった思い出。彼女たちが初めて作ったという「自転車」が特に危険で。この曲のシメの歌詞がこの世のものとは思えない尊さ。<世界が忘れそうなちっぽけなことも/ここではかがやく/振り向かないよいま/あと少しくらい君と笑いたいなぁ>ですよ!読むだけで号泣。この一節がアルバム評としても機能してる。


スピッツ『とげまる』

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スピッツが2010年代に発表した4作の中で最古の1枚。来るべき新時代に向けて、なんて意気込みをするまでもなく、当たり前のようにスピッツをスピッツらしく磨いてある。「とげ」で「まる」、この4文字だけでバンド像を確実に言い当てている凄み。春めいた2曲に挟まれたシューゲイザー「新月」など、その曲順の妙味も美しい。「君は太陽」で締めくくられると、泣く。


スカート『トワイライト』

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黄昏という感傷にはうってつけの時間帯、春と冬という寂しげな季節をモチーフにした楽曲たちは、それぞれが違う風景を描きながらもどこか共振し合い、近いニュアンスのセンチメントを積み重ねていく。君がここにいることも、ここにいないことも、等しく切ないことである、と。あのささやかな思い出たちのようにこの作品も知らずに記憶に紛れ込んでいく(のだと思う。



Base Ball Bear『二十九歳』

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日々を生きる中で生まれる"最高潮"と"最底辺"の感情のその"間"。誰も歌おうとしなかった、当たり前すぎて歌いようがなかった"フラットさ"を冷静な視点で解剖したアルバム。ソングライター小出祐介の思考回路を彷徨いながら、辿り着くのがボーイミーツガールの最果てと、ミュージシャンとしての居場所への解答。二重救済、という響きが導くその脅威の構成に震える。


For Tracy Hyde『New Young City』

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久しぶりに音楽にひれ伏す感覚を味わった稀有な衝撃作。ぶ厚いギターサウンド、ドリーミーでファンタジックな音像、発色豊かなボーカルに、ダダ漏れの詩情。お前はコレが好きなんだろ!と肩を揺さぶられているような聴き心地に酔いしれる逸品。イマジネーションを掻き回してきた。透明度の高い音像で鮮やかに色付けされた世界で繰り広げられる幾つかの恋の光景。春の陽気に包まれながら聴くのを待っていたけどまさかこんな4月になるとは。


ももいクローバーZ『バトル アンド ロマンス』

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自分がアイドルを聴くきっかけとなった重要作。今に至るまで、スターダストプロモーションのグループを偏愛し続けてるのも、このアルバムにみちみちに詰め込まれたオルタナティブなポップネスと、それでいて純真なるエンターテイメント精神の両立が、スタダにはしっかりと受け継がれ続けているから。生まれ変わったら自分もスタダに入りたいって、思いませんか、ね!


andymori『ファンファーレと熱狂』

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2000年代の終わりから、なんだこれ!みたいなロックバンドが沢山出てきて、その中でも、知ってるようで全然知らない、みたいな刺激を与え続けてくれたのがandymori。次作以降はハートフルな路線へと進むが、その間際、自分たちのあるがまま、見た景色、知った感情を歌うことが、そのままヒリヒリとした僕らの唄になっていたあの頃。永遠の中に刻まれた狂騒。


Enjoy Music Club『FOREVER』

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あの娘がカラオケで歌った曲が頭から離れなくなったり、予定もなく家にいる夏休みのことだったり、目的なく夜通しお喋りしたことだったり、あぁこれ知ってる場面だなぁと、にこにことしみじみしながら聴いてしまう。ラップというものに苦手意識があったけど、そういうマインドだからこそ綴れるリリックがあり、そしてそれは狂おしい程に生活にタッチしてくる。


フレンズ『ベビー誕生!』

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根っこがオシャレな人間ではないので、2010年代後半のシティポップな潮流には芯からは着いていけなかったのだけど、フレンズだけはフェイバリットになった。てかこれはタウンポップなんですよね、日常を生きる僕たちが口ずさんで輝く、そういうポケットサイズなグッドミュージック。心地よくステップを踏みながら、何となく君を思い浮かべて、少し切なくなれる音楽。


ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』

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来たるディケイドへ贈られた「新世紀のラブソング」を筆頭に、傷だらけのゼロ年代を経て、変化や革新を受け入れながらも何とか未来へと繋ごうとする祈りのような作品。2010年代が更に混迷を極めることになるとはこの時予想もできなかった。しかし音楽が持つ魔力に不屈さをこれでもかと実感する時代となった。今、この場所、この時間にずっと響き続けるべきロックだ。


赤い公園『猛烈リトミック』

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ジャンルも何もかもが無法地帯とも言えるほどにとっ散らかっているが、アルバムを一つに束ねているのは音楽に抱いている深い愛だ。津野米咲という非凡なソングライターは、体調を崩し休養していた頃ですら音楽だけは作り続けていたという。その音楽への執着心が、バンド全体、そしてタッグを組んだプロデューサーへまでも伝播していき、産み落とされた強靭な12曲。


米津玄師『YANKEE』

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架空世界の群像劇だった前作『diroama』から現実世界へと飛び込み、バンドグルーヴに接近した1作。心の内の「孤独」や「空虚さ」を引き連れて生きていくという極めて現代的な思いが作品全体を貫いている。ボーカロイド文脈とギターロック系譜を、甚大な情報量と共に交差させる手腕はこの後ポップスシーンを塗り替えた。よそ者=ヤンキーだった彼の快進撃の始まり。


NICO Touches the Walls『勇気も愛もないなんて』

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キャッチーさと、自分たちの見せたい核の乖離をシングル/ベスト盤を通じて格闘し、ドキュメント化してきた2013~2015年。最古のシングル「ニワカ雨〜」にある《愛を歌わなくちゃ 想いが歪んでしまう前に》のフレーズへと収束して行く構成が見事。最後に苦み走った切ないタイトル曲がずしりと余韻を残しているのも胸を打つ。ニコが自然体になりつつある季節の作品。


フジファブリック『LIFE』

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ソングライターとしての山内総一郎のありのままが刻まれた1作。歌詞には彼が見た景色、覚えた感情、そしてフジファブリックへの思いが滲み、聴いていると彼らのこれまでを共に振り返っているような気持ちになる。メロディはふくよかで柔らかく、心にすっと染み込んでいくような普遍性がある。そして歌の説得力も格段に増し、現体制の礎となるアルバムになった。


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