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知らない町を3kmだけ散歩してみた

 9月から、1日1万歩を目指して歩いていた。達成できてもできなくても、家ではステッパーを踏んでいたくらい、秋の空気にほだされたのか歩きたくてしかたなかった。

 せっかくなら、たまにはイベント等を活用して、ちょっと遠くの町でも歩いてみようかな。
 そう考えていたところに、良いものを見つけた。

 いずれ3コース全部やるとして、まずは益田コースからやってみることにした。なぜなら、ちょうど行ってみたいお店があったからだ。



まずは腹ごしらえ

 行ってみたかったお店とは、“ねむの木”というカフェだ。
 以前、出張で島根県益田市を訪れた際、飲み屋で偶然一緒になった地元の方にオススメされたお店で、ずっと気になっていた。

益田市内から車で40分くらい山に向かって走ったところにあった。

 オススメしてくださった地元の方曰く、
「タンシチューとカルボナーラがおすすめ。タンシチューは旨いのに安い。カルボナーラは、カルボナーラの概念が変わる
 ということだったので、今回はカルボナーラを頼んでみた。

パスタの1人前って、こんなに多かったっけ!?

 運ばれてきた瞬間から、にんにくの香ばしい匂いがする。え、にんにくの良い匂い!? カルボナーラなのに!?
 可愛らしい木製のスプーンとフォークを使って、さっそく食べてみる。濃厚な卵とチーズの味、そしてカリッカリのベーコンから染み出した味が、口いっぱいに広がる。
 でも、それだけではなく、どこかピリッとした辛さがあり、カルボナーラの下手をするともったりしそうな濃厚さを良い感じに引き締めてくれていた。たしかに、辛くて元気が出て、食べながら汗をかくカルボナーラを食べたのは初めてだ。
 これで700円台って、本当に? この物価高のご時世に? お得過ぎて、逆に大丈夫?


スタート

 腹ごしらえも済んだところで、さっそく益田市内にあるスタート地点に行き、ウォークラリー開始だ。サイトからコースを選択すると、チャット形式でルートとクイズ及び謎解きが表示され、それに答えながら歩いていくという手法らしい。

 こういうものをやってみたがるわりに謎解きは苦手なため、正直不安だったが、謎解きというよりは健康クイズのような内容だったため、サクサクと進めることができた。

長袖だと暑いくらいに天気が良かった。


医光寺

 15分程度歩くと、医光寺というお寺があった。本尊は薬師如来らしい。
 私は仏教に明るくもなければ、神社仏閣巡りが趣味というわけではない。ただ、雪舟庭園があり、500円で拝観できるということで、せっかくなので入ってみることにした。

くつろぎたくなるような和室

 鶴を形どった池の中に亀島を浮かべた庭になっているようで、鶴と亀という長生きの象徴をモチーフとした武家様式とのことだった。
 歩いて温まった体を、静かに風が撫でていくのが心地良くて、しばらくぼーっとして過ごした。


萬福寺

 途中、染羽天石勝神社を経由し、萬福寺に辿り着いた。
 この数km圏内の中に、かなり神社仏閣が固まっていることに驚かされる。どうやら、中世の益田を治めていた領主・益田氏が、この地の寺社を遺すことに尽力していたらしい。そうした文化遺産が残っている益田市には、文化庁から認定を受けた日本遺産が多くあるようだった。
 ちなみに、これはクイズからの受け売りだ。

 萬福寺にも、雪舟庭園があり、拝観料500円とのことだったので立ち寄ることにした。
 医光寺が長寿を意識した武家様式であるのに対し、萬福寺の庭は仏教の宇宙観を意識した寺院様式となっている。

 仏教にまったく明るくない私でも、庭を見た瞬間に、
「池を挟んでこちらが此岸、あちらが彼岸だ。奥の小高いところにある石が、崇めるべき山なんだろうな」
 と察した。

しばらく座って心を落ち着けたくなるような庭だった。

 館内を一周した後、ここからの眺めが一番落ち着く感じがした。座って、しばらく眺めようかと思ったところで、ボランティアガイドさんが話しかけてくださり、そのまま館内を案内していただくことになった。

 後で説明を受けたが、写真の真正面にある四角い石は“礼拝石”と言うらしい。まさに、この角度から眺めるのが正解だったようで、良い庭というのは無知な者にも自然と見るべき角度を示してくれるものなのだな、と思った。

 ガイドさんの話は面白く、国重要文化財である『二河白道図』や、萬福寺にいらっしゃった天皇家の血筋の方が使用していた朱色の籠の説明、良い仏像の見分け方等も教えていただき、気付けば1時間くらい喋っていた。


ちょっと寄り道をしてゴール

 萬福寺を出た辺りで、どこからかお囃子のようなものが聞こえたので、コースを逸れて音のする方へ行ってみた。
 少しだけ歩いた先に、小さな神社があり、そこのお祭りをしていたようだった。お囃子のようなものの正体は、そこで行われていた石見神楽のもので、音に釣られるようにして近所の人々や子供たちが次々と集まっていた。 
 こういう景色が、好きだなぁと思う。幼い頃の地元のお祭りを思い出す。

歩道にあった魚の頭。ちょっとかわいい。

 そうこうしながら、無事に約3km+寄り道数kmの散歩を終えた。歩数は約7,000歩だった。
 本来なら、1時間もかからずに終わるコースだが、いろいろ見て回ったこともあり、3時間近く散策していた。

 たった3kmだが、観光もしつつ歴史も少し知ることができて、とても有意義な1日になった。たまには、こういうプチ散策も良いかもしれない。

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